なると

バンドマンは失踪が多い。

バンドマンは失踪が多い。
毎年誰かしら近しいひとが失踪している。

「知り合いの知り合い」まで入れれば、ものすごい数の失踪者リストができあがるだろう。

あのキングオブタフガイ、GACKTですら一度やっているのだ。あのひとを引き合いに出すと「失踪しないハードル」がいかに高いかが分かる。

『のび太』などもよく家出を企てるが、アレも一種の失踪だろう。

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全てを投げ出しても構わないほど嫌なんす」という本能むき出しの行動だ。

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現実世界でこれを成人がやるとどうなるだろうか。

「無責任だ」や「社会人失格」、「ひとの迷惑を考えろ」という言葉はお決まりのように飛び交う。

だけど男なら「失踪するひとの気持ちが一ミリも分からない」ってことはないだろう、とも思うのだ。

男とか女を持ち出して悪いけど、現代の切腹である『失踪』と言えばやはり男ならではの行動ではないだろうか。

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ちなみに僕は失踪を計画したことはない。したこともない。記憶を失くして、知らない街に自転車があったことはあるがアレは失踪ではない。ただのひととしてのエラーでありバグだ。

『失踪』とはなんていうか、もっと人間的なものなのだ。耐えきれない痛みを打ち明けられなかったり、自分の弱さが許せなかったりするようなじつに文化的、インテリジェンスなフィーリングから成る行動だ。

だからこそ「消えちまいたい」という気持ちは分かる。「嫌で嫌で仕方ないとき」に陥る視野の狭さは幾度も経験している。

しかし衝動的に失踪をかますと、わりとすぐに発見される。知り合い連中は2,3日で発見されることが多い。見つかったときの失踪者の気持ちを考えると、中々いたたまれない。恥ずかしい。「失踪は計画的に」だ。

かと言って書き置き残して住民票も移さずに消える最上級レベルの失踪はヘヴィすぎる。

「完全失踪マニュアル」で読んだが、借金まで捨てて夜逃げするときには、それぐらいの覚悟がいるらしい。ここまでやればなかなか見つからないと思う。

バンドマンの失踪はそこまでひどくない話が多いほで、長くても一週間ほどで見つかる。カジサックほど長引かない。

それでも見つかった後に復帰できるかというとそうでもない。大体のケースが「失踪→保護→脱退or解散」に着地する。

そもそも嫌だから消え失せたのだ。そりゃあ復活が難しいのは当然だ。決まっていたライブとかもドタキャンだろう。グズグズになって潰れていってしまう。

いや、何が書きたいかと言うとだ。

なんていうか「ちゃんと解散したり、ちゃんと脱退していったひとたち」っていうのは凄いなぁと思うのだ。ケジメがあるし、じつにしびれるし、人間としての品格のようなものが見える。

「そんぐらい当たり前だ」とどこかから聞こえてきそうだが、当たり前だとは僕は思わない。「自分の意思をキチンと伝えられるひと」はそれだけでリスペクトしている。連絡すらできない人間はやはり弱い

辞める、別れる、捨てる、離れる、壊す、失くす。

並べるとネガティブな動詞ばかりに見える。

でもこれら正念場は、そのひとの強さが試されるターニングポイントにもなる。「ちゃんと言う」という少しの勇気で、またひとつ自分を好きになれるかもしれない。

もちろん弱いから悪いという話ではない。ただ強いひとは凛としていて好きだ。自分もそうなりたいものだ。


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