事業撤退
その日はやってきた。。。
2022年4月20日。
私は出張先の名古屋のホテルにいた。
“ホテルJALシティ名古屋” の一室からZoomの画面を覗く。Zoomは2分遅れでスタート。日本法人の社長と人事部長が険しい顔をして、喪服のような格好をしている。社長の話を聞くまでもなく、これから何が発表されるかを察知した。
Ⅰ 日本市場撤退
突然ではなかった。
2021年12月にフードパンダが日本市場を撤退した。
DiDiについては、年明けに本国でレイオフが行われた。そのニュースを見たときに、もう長くは続かないと覚悟した。本国での揺るがない収益があるからこそ、日本で赤字覚悟のフードデリバリーサービスに参入できたわけで、本国でレイオフが始まっているのに日本の赤字事業が整理されない方がおかしい。撤退は当然の結果であった。
私が入社した2020年のDiDiは世界中のユニコーン企業の中で、ByteDanceの次に時価総額が高く、世界でも10本の指に入ってもおかしくないほど勢いのあるスタートアップ企業だった。
しかし撤退発表の2022年4月20日の段階では2020年の同時期に比べ、株価は約2割にまで落ち込んでいた。
当時はDiDiが2021年にニューヨークの証券取引所で上場することも、その後 中国政府からの規制を受けて、中国国内での業績が悪化し、上場が廃止されることも全く予想がつかなかった。
何はともあれ撤退理由について、真実は私のような末端社員は知る由もない。ただ撤退するという事実は変わらない。
Ⅱ DiDiドリームの終焉
私にとってDiDiはすごい良い会社でした。年齢、性別、国籍、過去の経歴に捉われることなく、結果を出した人が評価される。一見シビアには見えるものの、平等な競争環境だったと思います。
25歳の1年間に自分が経験できたことは、DiDiドリームの恩恵であった。私以外でも絶対日系企業では起こらないような抜擢人事のチャンスを掴んだ社員もいたし、過去の経歴がどうであろうが、成果次第では誰でもチャンスを掴めるような環境でした。
私の場合、25歳にして営業組織のマネジメントを任せてもらえたり、
とあるプロジェクトのPMのような立場を任せていただいて、先方の役員や部長クラスの方と一緒にプロジェクトを進める機会にも恵まれた。
このタイミングで年齢以上のレイヤーを経験させてもらえたことは、今後の自分の進路を考えるうえで非常に有意義な経験でした。
報酬面でも基本給は高くなかったが、成果が良かった月は安くないインセンティブが支給された。そのおかげで良いホテルに泊まってみたり、良いレストランに行ってみたり、色々な人生経験を積むことができた。
私は誰に対しても平等に挑戦と成長の機会を与えてくれたDiDi社には心より感謝しているし、同時にDiDiドリームの終焉を迎えるという現実に対して、悲しさを抱くのであった。
Ⅲ 印象深かった出来事 3選
DiDiに在職中は本当に色々な経験をさせてもらえた。今振り返っても、しんどかった時期もあったけど、それ以上に達成感を感じることや嬉しかったことの方が多かった気がしている。
思い出に浸るようにDiDiで経験できてよかったと思うこと3選を書き残そうと思います。
1 新規ローンチの達成感
DiDiで働いていた中で一番印象に残っているのは、新規ローンチである。入社当初は大阪でしかサービスが展開されてなかったが、入社後に西日本の主要都市全てで新規ローンチが行われていった。
私自身、兵庫と京都と奈良の3都市のローンチに携わらせていただき、京都と奈良に関しては、ローンチに向けたプロジェクトのリーダーとして関わらせてもらったので、それなりの責任を感じたし、これが成功するか失敗するかで社内での評価も大きく変わるような状況でもあった。
そのようなハイリスクハイリターンの状況こそ、人間のアドレナリンは湧き上がるし、こういう大きなプロジェクトをチームで成し遂げるというのは、仕事では初めての経験だったので素直に嬉しかった。
特にローンチ日に関しては、一斉にそのエリアでアプリが使えるようになり、街中にもDiDiのオレンジのリュックを持った配達員が大量に走り出す。そして記者会見が行われ、その様子が夜のニュースで流れたりしたので、世の中に対するインパクトも感じやすいような1日であった。
2 部下がトップセールスに
私自身、入社翌月には個人営業で30名中1位になることが出来た。
そのときに営業部長から言われた一言が
この言葉から1年後。
私は営業組織のマネジメントを任されていたので、個人営業としては動いていなかったが、自分のチームから 5ヶ月連続でトップセールスを輩出することが出来ていた。
この間、自分のチームから営業マン全体の中で月間トップセールスになったメンバーが2名いたが、2名とも営業未経験でした。
1人は前職 青年海外協力隊。もう1人はジムのインストラクター。2人とも学習意欲と行動力は優れていたため、私自身が個人でトップセールスになったときのノウハウを伝授しただけで、成果を出すことが出来た。
もちろん他の競争相手は営業を10年以上してるベテランもいる。その中で未経験者がトップセールスになったのだ。
この件から上記のように気付くことができた。
継続して成果を出したり、チーム全体の成果を向上させるためには "再現性" が最重要ということを学んだ。
自分がトップセールスになったことではなく、自分以外の他人をトップセールスに押し上げることが出来たことが自分の中では一番自信を持てる成果でした。「これは偶然ではない、必然なんだ」と。
3 チームメイトのような同僚
DiDiの撤退が決まったとき、会社がなくなることや無職になることの残念さだけでなく、もうこの人たちと働くことが出来ないんだな、、、という部活の引退のような寂しさもあった。
入社当初 親切に指導してくれた先輩やその後同じチームで一緒に頑張ってくれた同僚がいたから、頑張りきることが出来ました。
在職中は辛いことや理不尽なことも経験しましたが、それを乗り越えて楽しく働けたのは周りに良い人がいたからだと思っています。
今後も友人として付き合っていきたいと思えるような素晴らしい仲間と出会い、一緒に働けたことは何よりも良かったことです。
Ⅳ 感謝
最後になりましたが、2年前の自分に機会を与えてくれたDiDi社には感謝してます! 10年後、20年後振り返ったときに自分の仕事人生の原点になるのは、DiDiであることは間違いないです。
残念ながら、今回は "事業撤退"という結果になりましたが、これを糧に今後の飛躍を願っています。
そしていつかまた数年前のように世界市場から注目されるメガベンチャーの滴滴出行の姿に戻ってくれることを願っています。
これを読んでる読者の皆さん。
DiDiフードは撤退になったけど、DiDiタクシーはまだ日本市場で頑張るらしいので、是非アプリをダウンロードして使用してみてください!!数年後にはスーパーアプリになっているかもしれません!
それではDiDiさん、
いつか北京に行くことがあれば、本社巡礼行きます!!
謝謝!!
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