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世界で活躍する同世代の起業家の人生をたどる - Jen Rubio/AWAY編 (後半)

後半始まりました。いよいよスーツケース事業を同僚のStephanieを始めたJenの奮闘について、ご紹介していきます!

前半はこちらから→


Stephanieとブレストを続け、ブランドをAWAYに決めて商標を取得。Jenはブランディング、Stephanieがサプライチェーンをすることは決まっていたが、足りないピースが多すぎた。まず肝心の商品が全く存在しない。Jenは商品が無くても会社をブランディングすればいい!と考えていたが、StephanieはWarby Parker時代のコネをつたって中国にある製造委託先を探し始めた。業種は違っても、品質やコストの検証は前職の経験からでき、幾つか委託先の候補を絞った。
次にユーザー調査をした。どんな商品がベストなのか、とにかく顧客の声を聞きまくった。デパートの売り場を巡り、店頭にあるスーツケースの品質、値段、色や素材を全てノートにまとめたり、800人ものユーザーに対してインタビューを行ったりして、スーツケースの不満を聞き続けた

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量販店の店頭にならぶスーツケースのイメージ

検討を始めたのは2015年の2月だったが、商品のリリースを同年の12月にしようと何となく決め、そこから1日20時間働いた。自分達はニューヨークにいて、業務委託したデザイナーは西海岸、製造委託先の工場は中国と、地球一周分の時差を相手にして働いていた。
3月、友人を通じて、ベンチャーキャピタルのForerunnerのメンバーに会わないかと誘われた。同社はWarby Parkerをはじめ数社のD2Cブランドに既に投資しており、相性が良さそうだと思った。勿論、見せられるものなど何も無かったが、現状のアイデアやスーツケース市場の現状についてプレゼンし、引き続きやり取りしよう、との声がけをもらった
それ以外にも、D2Cに関連が無さそうなVCであってもピッチができるよう、事業計画書やピッチの内容は2人で研究をして、完璧に準備を頑張った。特に理由なく12月に商品を出そうと決めたことが、いい意味で尻を叩いてくれて、その夏にはなんと、Forerunnerなど複数のVCから250万USドル(約2.8億円)を調達することができた
あとは12月のリリースに向けてひた走るだけ。Jenはプレスへの発信内容を磨き上げ、クリスマス商戦で売上を叩き出せるよう、プロモーション内容の精査を続けた。
ところが8月にスーツケースの生産をオーダーした際、デザイン仕様の問題で、必要なコンポーネントを製造することができず、12月までの納品は不可能だということがわかってしまった。タイムラインの見積が甘かったのだ。

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(写真引用:materialise.com

既にPRエージェンシーやメディアには話を持ち掛けており、商品のCGなどは見せた上で良いフィードバックをもらっていた。まさかこんなことになるとは...と落ち込んだところで2案浮かんだ。① 商品は販売しない。一切の発信を止め、次の商戦を目指す②商品発表をしてプレオーダーを取る。商品が納品され次第、順次顧客に届ける。考えた末に、どちらでもない作戦にでた。
それは、まずクリスマス前にブランドの発表をすること。そして、バッグを出すはずだったタイミングで、ブランドのストーリーを語る「本」を出版すること。それは商品のコンセプトを訴求する本...というわけでは無く、自分たちが思う最高の旅について紹介する本だった。みんなに気に入ってもらうために、商品が無くてもAWAYは最高の旅体験を提供するブランドだと強烈に認知してもらう必要があった。本は悪くないアイデアだと思った。
40人くらいの素敵な旅をしている友人や知り合いをインタビューして、その体験を紹介した。取材はVOGUEの編集をやっていた友人にやってもらった。写真も揃えて装丁し、そして1冊の、コーヒーテーブルに置けるような、しゃれた本を作った。そして本に引換券がついていて、これをいつか届くスーツケースと交換してもらう。この本を売ろう、と考えた。

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創刊号となったHere issue 01 (写真引用:heremagazine.com

スーツケースを作るために投資してくれたベンチャーキャピタルに何て説明しようか?とも考えたが、そもそも何故彼らが投資してくれた理由を考えてみた。私たちがピッチをした時に、「見た目他のカバンと同じだけど、何が違うの?」と彼らから聞かれた。「ユーザーはサムソナイトやTUMIのカバンに感情移入することはありません。ブランドとはもっと手触り感のあるもので、このスーツケースを通してユーザーが体験を積み重ね、ユーザーと共に成長していくブランドにAWAYをしていくことが最大の違いです」と語ったことを思い出し、出版もその一環と思えば、間違っていないと思った。
勿論、冷静に考えたら馬鹿げているし、効率性とは程遠いアイデアだと思ったが、Stephanieと2人で何とかなると言って、2000冊、印刷のオーダーを出した。2015年11月9日、VOGUEがWebでAWAYの特集記事を出したタイミングで、サイトをローンチし、ひたすら本を売り続けた。Google Analyticsを見つめ続けるうちに状況がどんどん変わり、1冊225ドルの交換権付きマガジンが、初日だけで100冊売れた
VOGUEを見た他のメディアも紹介してくれたおかげで露出は増え、次の日にはもう100冊売れた。結局数週間以内に全ての本を売り切ることができた。喜びと共にクリスマスが明けた直後、中国の工場に飛び、生産ラインに入ってカバンの品質チェックをStephanieと行った。スーツケースは想像していた通りの品質でしっかりできており、心から感動した。涙が止まらず、スーツケースにハグした。翌年1月には中国からアメリカに商品が輸入され、2月から顧客のもとに配送を始めた。

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(AWAYの商品第一弾である”Carry On"。機内持ち込み可能サイズで、10,000mAh の取り外し可能なバッテリーを搭載。カラバリ9色で225ドル
写真引用:awaytravel.com

AWAYは発売初年度だけで5,500個のスーツケースを販売した。これはすごい数だと思った。タイミングがとにかくよかった。ソーシャルメディアを皆が使うようになったタイミングで、AWAYのバッグを購入したユーザーは、旅行中の景色やホテルの写真をアップするだけでなく、スーツケースをもって空港にいる様子や、パッキング途中の様子まで写真に撮ってソーシャルメディアに載せていた。この時、彼らの旅行体験の一部に、自分たちのスーツケースが加えられたことを感じ、すごく嬉しかった。AWAYを使ってくれたセレブもいて、その様子も更なる呼び水になって、話題を生んでいった。

(いまも多くのAWAYファンがインスタグラムでスーツケースと共に旅行の様子をアップしている)

いま(2019年3月時点)250人の従業員が働いていて、年間100万台のスーツケースを製造・販売している。Jenはまだ31歳。AWAYの今後について、Nikeがスポーツにまつわるあらゆるユーザーとのタッチポイントにいるように、彼らもまた旅行にまつわるあらゆる体験を提供できるブランドになりたいと語る。また成功に秘訣について、努力や才能はもちろん必要だが、それ以上に、好奇心に従うことが何より大切だと語る。目の前にやってみたいことがあった時に、そのためにこの経験がいるとか、この学位がいるとか、そんなことは考えずに、まずやってみる好奇心を持てば、自然とうまくいくと語る。それはインターン時代の彼女の体験がまさに物語っている。

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ということで、いかがでしたでしょうか。個人的な最大の盛り上がりは、大学を辞めたJenが、マーケティングの仕事がしたいからと、何も計画を持たずに会社を辞めたシーンです。そしてTwitterでマーケティングを始めた時には、自分は何も知らないアマチュアなのに、周りからは専門家に見られてもてはやされる…というところまで、面白くてしょうがなかったのです。

若い頃に、若いだけで、他の人ができないことができてしまうという経験は自分自身にもあって、その時は自分が特別な人間になったような気持ちになりがちです。でもJenは自分の知識を磨き続け、企業を移ってもその能力をどんどん伸ばし、自身のポジショニングを確立していきます。そしてAWAYを創業した時には「商品が無くても、私がやれば売れる!」というとんでもない自信を掲げるに至っています。自ら動いていく姿に、行動し続けることが能力を開花させていくのだなと感じました。

さて読めば読むほど面白い偉人伝は引き続き更新していきますので、また次回以降も読んでください。ではでは。

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1987年生まれ、奈良出身。関西愛がすごい。2017年、駐在員としてニューヨーク勤務→2019年に帰任。本職は広報・マーケです。帰国してから改めて日本で感じたことや、大阪の面白いニュース、娘との日常など当てもなく投稿しています。※発言は個人の見解です🙆‍♂️