COVID-19時代、人類の進化は、感染症の罹患と血液型との関連性に影響する。

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2020年6月9日、米遺伝子検査大手の23andMe社は、COVID-19の患者と血液型の関係について調査結果を発表した。ミリアド社は、75万人の参加者のデータを血液型別に比較したところ、血液O型の人々でのCOVID-19罹患率が他の血液型と比べ9~18%低かった。

COVID-19の患者が、重症化し呼吸不全を罹患するリスクについて、The Severe Covid-19 GWAS Groupが、ゲノムワイド関連分析(GWAS)により解析した。その解析結果から、3p21.31遺伝子座と9q34.2遺伝子座の変異とCOVID-19の患者の重症化との関連性が明らかになった。9q34.2遺伝子座は、血液型の遺伝子座と一致しており、血液型A型の人は、他の血液型の人に比べ重症化リスクが1.45倍高い。一方で、血液型O型の人は重症化リスクが0.65倍低いことが示されたという。

血液O型は、あらゆる病気に抵抗力を持ち、なかでも梅毒と結核には感染しにくい。これまでの研究でも、全ての梅毒末期の感染者の集団において、O型の感染者の含有率は全体の23%に対し、血液A型の感染者の含有率は全体の42%である。結核の罹患率においても、血液B型の人々の罹患率と比較して、O型の人々の罹患率は低い。

赤血球の糖鎖の違いが、血液A,B,O型を作り出している。生物は異物が侵入すると、異物を攻撃して排除する自己防衛システムを有している。自己防衛システムの一つである抗体は、特定の異物を認識し狙い撃ちするミサイルのようなものである。赤血球の糖鎖を異物と考えると、血液A型の人々の血清中には自身のA型の糖鎖に対する抗体は存在しないが、B型の糖鎖に対する抗体が存在する。逆に、血液B型の人々は、A型の糖鎖に対する抗体を有している。さらに血液AB型の人々は、A型とB型の両方の糖鎖に対する抗体を有していない。一方、血液O型の人々は、A型とB型の両方の糖鎖に対する抗体を有している。

ヒトの赤血球以外でも、A型の糖蛋白質やB型の糖蛋白質を有している生物が存在している。さらに、自然界の動物、植物ばかりでなく、さまざまな細菌もA型の糖蛋白質やB型の糖蛋白質を有している。例えば、結核菌は、B型の糖蛋白質を有している。つまり、血液B型の人々は、B型の糖蛋白質に対する抗体を有していない。結果的に、血液B型の人々は、結核菌を攻撃しにくく、感染しやすい。このような理由から、血液B型の人々は、結核に対する予防ワクチンであるBCGで陽転しにくい。結果として、血液B型の人々は、血液O型の人々と比較して、結核に対して約10%罹患しやすい。また、血液AB型の人々は、A型の糖蛋白質とB型の糖蛋白質に対する抗体を持たないため、感染症になり易い。

人類の祖先は、すべて血液O型であったと考えられている。アフリカ大陸で誕生した人類が、世界中へ進出し生き残るためには、血液O型的な要素が求められたと考えられている。人類の血液型の状況は、世界の先住民に血液O型が、多いことによってサポートされている。その後、血液A型や血液B型を有している人類が、様々な大陸で誕生した。穀類を食べてきた農耕民族は血液A型の人類、肉や牛乳を食べてきた遊牧民族には血液B型の人類が多いという。食物の違いが、血液A型と血液B型の人類を生み出した可能性が考えられている。1000年以上前で、血液AB型の人類が存在していたことを示す医学的・生物学的証拠が得られていない。そのため、この血液A,B,O型の歴史は浅いと考えられている。血液A型と血液B型の混血により血液AB型が、様々な大陸で誕生したと考えられている。

がん治療専門ドクター/癌ゲノム医療/新興感染症                                              京都@Takuma H

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