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ちょっとそこまで旅してみる Part2

こちらの続きです。

館内着に着替えて、まずは風呂を目指す。
いつも行く町場の銭湯よりも値が張る分、設備は豪華だった。

世界の流れに反しているような歯ブラシとカミソリ取り放題になんだか安心感を覚えてしまう。
自分もそんな歯ブラシと同じように「社会」の一員になれた気がしてきた。

時間的に人が多いのと、初めての場所である緊張感からリラックスしきることはできなかった。
それでも時間が経つにつれて、だんだんと、風呂とサウナと自分が馴染んでくる。

「宿泊だから何回もお風呂入れるんだよなぁ…」
ぼーっとしながら考えていた。
なんて贅沢なのだろうか。

外気浴をしながら、雲が流れるのを観察してみる。
小学生ぐらいの時に雲を眺めていたことを思い出す。
雲が、昼間の太陽を隠して、周りの明るさがふわっと一段落ち着く瞬間がとても好きだった。
いつから雲を見なくなってしまったのだろうか。
いつでもそこにあるから、そういうものこそ自分の世界の外側に行ってしまう。

やっぱり、周りの人間の話し声や音が気になってしまって落ち着かなくなってきた。
なんとなく没頭できない状態が続くのは苦しい。
何回でも入れるのだからと思い、一度出ることにする。

お風呂とサウナを1時間くらい楽しんだ後に、休憩室にいって読書をする。
リクライニングシートに寝転んで、「ご自由にどうぞ」的に用意されていたかけ布団をかぶっていると猛烈な眠気に襲われる。
でも1日しかないのにここで寝てしまうのはもったいない気がして、寝付くことはできなかった。
そういうことを考えてしまうのが、よくないと思うんだけど。

休み始めて1時間ぐらいすると、なんだか体が重くなってくる。
やっぱり疲れていたのだろうか。なんともいえない疲労感と鬱感が襲ってくる。
つらい。
とりあえず、食堂に行ってカレーを食べてみる。カレーの香りは全てを許してくれる気がする。
お店オススメのジャガイモとニンジンごろっと入っていた。それがなんだか寂しい気持ちにさせた。

しょうがないから、もう一度お風呂に入ってみる。
だけどこの時点で気分の沈みは最高潮。
サウナも水風呂もあんまり集中できなくて、すぐに出てきてしまう。これはもう寝るしかない。
基地に戻って体を休めよう。
たぶん今までの疲れが、それなりにリラックスしたことによって溢れ出てしまっている。

カプセルに入って、3時間くらいうとうと寝る。それだけでも重い気分はかなりスッキリした。
目も冴えてきている。本を読む気分にはなれないけれど、横になって動画を見れるくらいには回復してきた。

この時点で22時近くだった。中途半端に寝てしまったせいでなかなか寝付けない。
布団でじっとしていてもなんとなく落ち着かないので、温かいそばを食べにいく。

山菜そばを注文してみる。昔、日光に行ったときに食べた山菜そばがとても美味しかった。自然界には、食べれる植物がたくさんあることに感動した記憶がある。
今日の山菜そばにも名前のわからない植物がてんこ盛りだった。
そういうワクワク感が山菜そばのいいところだと思う。普段なら全部調べて名前を確認したりするんだけど、山菜そばの山菜だけは一生名前を知らないままでいいと思っている。

お風呂に入ろうかと迷ったけど、結局疲れを癒すには寝ることが一番だと思って基地に戻る。
朝早起きしてお風呂に入った方が人も少ないだろうし、ゆったりできそうだ。
朝風呂が開始する5時におきれればいいやと思って目覚ましはつけなかった。旅先のなんとも言えない興奮感があると、だいたい朝起きるのに困ることはない。そして、起きれなくても困ることはない。

低反発のマットレスが使われていることに気がついたのはこの時だった。明日はマットレスを買いに行こう。なんとなくそう感じた。

誰かを楽にして、自分も楽になれる文章。いつか誰かが呼んでくれるその日のために、書き続けています。 サポートするのは簡単なことではありませんが、共感していただけましたら幸いです。