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【SDGs入門】ビジネスとSDGsを結びつける事例がたくさん

オススメ度(最大☆3つ)

☆☆☆

最近、ビジネス系の記事を読んでいたりするとよく目にするこの言葉。とうとう職場においても、この"SDGs"という言葉を目にするようになってしまった。

しかし、頻繁に聞く言葉でありながら、実際には何のことなのかわからない。
あまりにもいろんな場面でこの言葉が使われているからだ。

一度しっかりと学んでみたいと思い、この本を手に取った。SDGsというものが、どれだけ幅広いものなのか、という事が一応はわかったような気がする。
内容はややビジネス寄りなので、SDGsの本質を知るのであれば、他の本も手にとってみるのがいいかもしれない。

〜SDGsとは?〜

そもそもSDGsとは何か?

Sustainable Development Goals の略称であり、「持続可能な開発目標」と訳する。
国連に加盟している193カ国が2016年から2030年までの15年間で達成したい目標を掲げたものだ。具体的には、環境保全活動、女性活躍推進や飢餓や貧困を改善するための活動など、17の目標で構成されていて、その目標のもと169のターゲットが作られている。

なぜ、SDGsが必要とされているのか?

これまでの人間活動から生じた様々な課題(地球温暖化、格差・貧困、ジェンダー差別、先進国の債務増、景気後退、など)を放置したまま各国や企業が振る舞うと、世界の状況がますます悪くなり、ゆくゆくは人間活動そのものが脅かされてしまい、平和な世界とは程遠い状態になる事が懸念されているからである。

SDGsというものをかなりざっくりと言うと、

今のままじゃ世界が悪い方向に進んでいってしまうから、様々な問題点や課題をクリアしつつ、持続可能な世界の構築を目指すための世界共通の目標

ということになる。

特にこの持続可能(Sustainable)という言葉が、非常に重要である。

例えば、環境問題を例にあげると、
現在の人々がエネルギーを好きなだけ使い続けると、将来の人々にとってエネルギー源が不足してしまうし地球の環境も悪化してしまい、将来の人々にそのツケがまわってくることになる。
だからと言って、将来の人々のために現在の人々がエネルギーを使うことを我慢してしまうと、現代の人々の人間活動が維持出来なくなってしまう。
現在の人々の人間活動を維持しつつ、将来の人々にそのツケをまわさない、そんな環境保全活動やエネルギー対策を構築していく事が、持続可能な世界を作り出すことになるのだ。

SDGsの理念として「誰ひとり取り残さない」というものがあるのだが、それは発展途上国や貧困率の高い国の人々のことだけを指しているのではなく、現在から未来に渡るまでの全ての人たちもターゲットとしているのだ。

〜SDGsを達成するためには?〜

では、SDGsを達成するにはどうすれば良いのか?

本書ではビジネスと結びつけてSDGs達成に貢献するノウハウが書かれているので、事業的な例で書いてみると、

例えば、ある企業が環境保全を目的としてプラスチックゴミを無くす取り組みとして、環境によい素材での食器やストローなどの開発を始めたとする。
環境に良い取り組みであり、SDGsの目標14や15で取り上げられる「陸の豊かさ」や「海の豊かさを守る」という目標は達成出来そうだ。
しかし、この製品を製造するにあたり、多くの従業員を雇い長時間工場を稼働させる必要がある場合、労働者たちが過酷な環境の上に低賃金で働かされる状況となった場合、目標8の「働きがいのある人間らしい雇用を促進する」という目標が蔑ろにされてしまう。
また、この工場を設立するために森林の土地を開拓してしまう、なんて事があったならば、そもそも「陸の豊かさを守る」という目標すらも達成出来ない。

というような例のように、環境を守るための事業を進める事で、劣悪な雇用体制を作り出してしまうことはSDGsの理念とはかけ離れたものになる。SDGsの達成には、あちらが立てばこちらが立たず、というような状況を避けなければいけないのだ。

しかし、その一方で1つの事業からSDGsの目標を2つ以上同時に促進している事例が紹介されていた。

僕が特に凄いと思った事例が、セイコーエプソンが開発した「ペーパーラボ(PaperLab)」だ。

ペーパーラボは使用済みの紙を投入すると、その場で100%再生紙を製造する機械である。
巨大なコピー機ぐらいの大きさで、オフィスに設置するのを前提としたサイズになっているそうだ。
オフィス内で再生紙を作ることから、外部に委託する量を減らす事が出来るし、紙を成型する際に使用する水をほとんど使わない。
輸送を含めて紙を作るためにかかっていた環境負荷を低減する効果があるというのだ。
またペーパーラボはすでに企業や自治体の中で導入がされており、導入した企業の一部ではペーパーラボの稼働から紙の回収・仕分けなどの業務に障がい者や高齢者を雇用しており、地域の雇用拡大にも一役買っているのだ。

このペーパーラボ1台で、「水の利用効率の大幅な改善」「若者や障がい者を含む全ての男性や女性の雇用」「資源利用効率の改善」「森林現象の阻止」などの様々なターゲットに貢献しているのだ。

このように、SDGsの達成のためには、波及的に様々なターゲットを包括するような事業を提案する事が必要になってくる。

〜意外と身近な話だったSDGs〜

さて、ここまででSDGsがあまりにも広く世界レベルの膨大な目標である事がわかったと思う。

さらに、
「結局、SDGsって国とか自治体とか大企業じゃないと、達成出来ないでしょ?」
と、思う人も多いだろう。

しかし、SDGsはビジネス用語でよく使われるものではあるものの、全人類が達成すべき目標であること、という前提を忘れてはいけない。

本書では主にビジネスに取り込んでいくノウハウなどが書かれているが、本質的には全人類が意識を持っておかなければいけない目標なのだ。
SDGsは単なるビジネスチャンスではなく、持続可能な世界を作るための目標なのである。

環境を守る、差別をなくす、エネルギーの無駄を無くす、、、
企業レベルで無ければできない事もあれば、個人レベルで出来ることもあるだろう。
また、SDGsを意識していれば、企業活動の選択も変わるだろう。SDGsに貢献している企業やサービスを積極的に利用する、ということも出来るはずだ。

そして、もちろん企業に勤めている方々にはこの本をヒントに、SDGsに貢献するためのアイデアを発見していただきたい。
本書にはSDGsとビジネスを結びつけるためのロジックモデルも解説してくれているので、参考になると思う。

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