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【統計でウソをつく法】ここがヘンだよ、この数字

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆

〜数字はウソをつく〜

世の中にはやたらと人の話よりも数字を信用する「数字信奉者」「データ信奉者」がいる。
自分の職場にもやたらと「まずは数字を出せ!」と言って人の話を聞かない人(というか、僕の以前の上司)がいるが、そう言う人に限って「どういう数字が必要なのか」をわかっていないし、数字があればそれをそのまま何も考えずに受け入れてしまう。

数字は「数学の世界」ではキチッとした定理や命題のもとで正確かつ確実なものなのだが、それが言葉と混ざることでいくらでもウソになるのだ。
本書は、そんな数字のトリックをユーモラスに紹介する一冊である。終始ニヤニヤしながら読んでしまった。


〜数字は慎重に扱うべき〜

僕はもともと数学の庭にいた人間なので、数字で何かを示すことには慎重になる。この数字を出して何か意味があるのか?この数字で自分の言いたいことが伝わるのか?そんなことをじっくりと考えて結論をだす。

しかし、数学によわい人ほど、何でもかんでも数字にしたがる。それを見栄えの良いグラフや図を駆使するが、あまりにも脆弱すぎて根拠にもなっていない。自分よりベテランの社会人でもすぐそんなものを作るし、驚くのはその数字に対して受け手が何の疑問も持たず脆弱な数字をもとに話を進めようとするのだ。これまで何度、僕の「数字、合ってます?」発言が、「空気の読めない発言」にされてきたことか!!

数字は結局のところただの道具である。それをうまく伝えるのはかなり至難の業である。
有名な話で例えるなら、コップに半分の水が入っている絵を見せて、「半分しか入っていない」と言うのと「半分も入っている」と言うのとでは印象は真逆になる。伝える側と受け手の数字に対する印象にミスマッチがあれば、その後の話がスムーズに進むわけもない。

以前のエッセイでも確率について書いたが、その数字が何を表しているのか?について、数字に併記されてる言葉や文章をそのまま鵜呑みにしてしまうのは危険なのだ。その言葉や文章は書いた人間の考えや思い込みが多分に含まれている(場合によっては悪意のこもった都合の良い解釈が含まれていることだってある)。グラフや図についても同様である。そのグラフや図の作成者の意図が含まれている。

では、言葉やグラフを鵜呑みにするのではなく、数字をキチンと読み取れればよいのか?と考えたくなるが、残念ながらそうはいかない。
数字そのものが正確ではないこともある。
わかりやすいのはアンケート調査だ。質問をされれば人は正直に答えるよりも、質問者にどう見られたいかで答える可能性の方が高い。極端な例で言えば、「あなたは犯罪を犯したことがありますか?」と日本全国の人々にアンケートをとれば、その結果は実際の犯罪件数よりも少なくなるのは想像に難くないだろう。


〜数字に信奉しないこと〜

本書の著者は統計学者なので、信頼できる統計データを見分ける方法について最後に述べているが、身も蓋もないことを言うと、僕はそもそも数字やデータを信奉しすぎないことが重要だと思う。
特に、自分の身近なことについて判断する場合には、数字やデータよりも、経験や感覚に頼った方が、少なくとも後悔のない選択はできることが多いと思う(これについては何のデータもないが)。

「データ信奉者」になる必要はない。
そもそも、何でも数字で表せるという考え自体が幻想なのだから。

ちなみに、本書は50年以上前に書かれた本なのだが、当時よりも「データ信奉者」が増えている(と思われる。これも何のデータもないが)現代でも十分に得るものが多い一冊である。

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