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【未来IT図解 これからの5Gビジネス】5G入門に最適な一冊

オススメ度(最大☆5つ)

☆☆☆

今年2020年の春から本格的にスタートした5G。
各携帯キャリアはこぞって5GをテレビCMなどで大々的に宣伝している。

しかし、そもそも5Gとはどういう技術であるのか?僕は全くわかっていない。

4Gよりも繋がりやすく高速な通信が可能であるというイメージはあるものの、今の4Gでもスマホを活用して十分便利だと思っている。

5Gがスタートする事で、一体何が新しくなるのか?そういった最先端技術を知りたくて、本書を手に取ってみた。

〜5Gネットワークとは、どういう技術なのか?〜

5Gの基本的な特徴は「高速・大容量」「超低遅延」「多数端末接続」である。

5Gでは、通信電波の周波数帯域幅を広げる取り組みがされているが、この周波数だと、遠くまで飛ばせないというデメリットがあるらしい。

そんな5Gのネットワークを支える技術として、4つの技術が挙げられている。

・MEC(Multi Access Edge Computing)
超低遅延を実現する通信技術。データ処理をインターネットを経由させて行うのではなく、端末のそばにサーバーを置いて処理する技術。

・Massive MMO
通信を高速化し、品質を向上させる技術。送信側と受信側の双方で複数のアンテナ素子を使うことで、データを増やさずデータの品質を向上させる。

・ビームフォーミング
電波を特定方向に送信する事で、電波の強度を上げ、遠くまで高速で飛ばせるようにする技術。

・ネットワークスライシング
4Gネットワークではあらゆるデータがまとめて送受信されていたが、この技術で仮想的にスライス、つまりネットワークを分割して用途別に流れるデータに変える技術である。

〜5Gで何が出来る?〜

5Gを活用する事でさまざまなサービスが登場する。
メディアでもよく言われているのが、ライブを様々な角度から楽しめるマルチアングル視聴、メガネ型ウェアラブル端末・スマートグラスVR(仮想現実)無人店舗自動運転、ドローンなどによる高画質なリアルタイム動画配信、あらゆるものがネットワークにつながるIoT技術、などなど、近未来を感じさせるような技術が実現する未来がある。

それに加えて、5Gネットワークは社会構造をも変える可能性がある。

医療面ではリアルタイム動画配信を駆使し遠隔診断を実現し、農業面ではトラクターなどの自動運転化で労働力不足をカバー、電車や飛行機などのゲートはチケットレス・タッチレスとなり、工場はリモートでの管理SNSは動画が前提となる。

アメリカでは町中をIT化してしまう「スマートシティ」の動きが加速している。
街中に設置されたカメラで、人やクルマの動きがすべて把握でき、AIと組み合わせて人がいつどこを歩いているのかを把握できるようになる。交通事故の原因を解析するのも容易になり、犯罪も減少するかもしれない。
信号などもコントロール出来れば、渋滞緩和も可能だ。

街の全てをIT化してしまう事で、人手不足の解消、交通渋滞緩和、災害対策、経済の活性化など、社会そのものの構造が大きく変わるのだ。

そんな社会がそんなすぐに来るはずない、と考えてしまうかもしれないが、すでに通信業界では2030年に向けた6Gの検討が始まっているそうだ。
思えば、スマートフォンが世に出回ってから10数年ほどしか経っていない。

思っている以上に驚きの社会が早く来るのかもしれない。

〜5Gに勝機を見出す楽天モバイル〜

さて、本書で1番興味深かったのが、突如通信業界に新規参入した楽天モバイルの話だった。

いわゆる、格安スマホのキャリアは数多くあるが、NTT、KDDI、ソフトバンクの三大キャリアに正面から勝負しに参入してきた楽天モバイルには驚いた。

楽天モバイルの強みとはなんなのか?

それはCMでも頻繁に宣伝されている「完全仮想化ネットワーク」である。
携帯電話サービスに必要な設備・機器を全てソフトウェア化して、汎用のコンピュータ上で稼働させるというものだ。この5Gへの移行期に参入したのも、他社キャリアと比べ基地局の増設などがそれほど必要なく、ソフトウェアアップグレードで5Gへの移行が可能となるのだ。
設備としては導入コストが圧倒的に安いため、低価格でのサービス提供が可能となる。楽天モバイルは携帯電話料金に価格破壊を起こすつもりなのである。

しかし、実際のところ通信技術の完全仮想化はかなり難しくらしく、既存キャリアは楽天モバイルに対し、お手並み拝見、といったところのようだ。

5Gへの期待はやや高まりすぎている面もあるが、未来がそこまで来ているワクワク感は抑えられない。
5Gでどのように世の中が変わっていくのか?そんな期待を感じる事ができた一冊だった。
5G入門編としては、十分な一冊だ。

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