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校内スピーチコンテストで、クラス賞に選ばれた次女の話

少し前の話です。

1学期が始まってしばらく経ったころ、中3の次女が
「明日から、ひとりずつ、クラスでスピーチしなくちゃいけないんだ」
と言い出しました。
どうやら3分間スピーチをするそうです。
内容は、ある程度、自由。
なにを話せばいいんだろう、と頭を抱える次女に、わたしは張り切って新聞を広げました。
「ねーねー、こういうのは? SDGs」
「うーん…」
ほかにもいろんな記事を指差して、あれは? これは? と聞くものの、次女はすべて
「うーーん……」
そして
「出席番号順だからまだ先だし、もう少し考える」
と言ったまま、その話題はおしまいになりました。

そんなことをすっかり忘れていたある日、次女は学校から帰ってくると
「今日、クラスでコッペパンの話をしたんだ。
そしたら、けっこう盛り上がって」
へ? コッペパンの話??
「どこのパン屋さんが美味しいとか?」
「そういうのじゃないんだけど。
なんか、話してたら、コッペパンが食べたくなっちゃった」
じゃあ、おやつはコッペパンにしよう、と近くのパン屋さんに買いにいった数日後。
中学校の先生から電話がありました。

「〇〇さん(次女)が校内スピーチコンテストで優秀な成績を収められました。
今日、賞状をお渡しする予定だったのですが、私の都合でお渡しできなくなってしまいました。
そこで○日の放課後、職員室に来るよう〇〇さんに伝えて頂けますか?」

校内スピーチコンテスト、ですと?
いったい何を話したんだ??

学校から帰ってきた次女に聞くと
「だから、コッペパンの話」
「コッペパンの、どんな話?」
「うーん…コッペパンの歴史とか。
あと、最後に、
ところで今日は何の日か知っていますか、
じつは、今日はコッペパンの日です、
って言ったら、みんな笑ってくれた」
「なんで、コッペパン??」
「なにを話そうって調べていたら、ちょうどスピーチする日がコッペパンの日で、面白いと思ったし、コッペパン、好きだから」

クラスでコッペパンの話をした、と言うのは、3分間スピーチのことだったのか!
いや、しかし、コッペパンって。
忙しそうな母のために頑張ってコッペパンサンドを作ってみたとか、
なけなしのお小遣いで買ったコッペパンを、お腹を空かせた母に分けてあげたとか、
そういう、ちょっと良さげな話では全然なさそう。
(そんなことをしてもらったことは一度もない)
優秀な成績って、どんなだよ…。

後日、貰ってきた賞状には「クラス賞」と書かれていました。
そうだよね、最優秀賞とか、そういうのではないよね、と思ったものの、コッペパンの話で賞状をもらうって、なんかすごいなぁ…と、しみじみ眺めてしまいました。 

そして張り切って新聞を広げた自分を思い出し、ふふっと笑ってしまいました。
いかにも先生受けしそうなものを、親は子に、つい押し付けちゃうんだよね。
SDGs、それってなに?
なんて聞かれても、正直、わたしは答えられないのに。

次女の方が、きちんと理解していました。
コッペパンの話とはいえ、クラス賞に選ばれたということは、次女のスピーチには人を引きつけるものがあったのでしょう。
よく分かっていないものを話すより、自分が「面白い」と興味を引かれたこと、「伝えたい」と思ったことを話す。
それが、スピーチだよね。

振り返ると、わたし自身、ピカピカしたよく分かっていない言葉を口にしていることがあります。
一見、良さげな話が、声に出したとたん、空っぽに聞こえてドキッとすることもあります。
その言葉、ちゃんと理解しているか?
その話、本当に伝えたいと思っているか?
次女のコッペパンの話は、そんなことを振り返るきっかけになりました。

そんなわけで、今日のおやつはコッペパンにしようと思います。 






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