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盛田昭夫 『21世紀へ』(020)





盛田昭夫 『21世紀へ』(020)

昔、4Cというキーワードがありました。

"Customer" "Competitor" "Company" "Channel"です。

顧客、競合企業(競合者)、自社、流通チャンネルのことです。

ところが、現在では、競合企業が見当たらない市場も出来上がっています。

Winner takes all.(勝者の総取り)

圧倒的な強さで、市場を奪ってしまったり、新市場を自ら作り出し、その市場の支配者となるケースが出てきています。

例えば、情報のすべてを支配しつつあるグーグルは、潤沢な資金力を背景に、通信分野やヒューマノイド(人型ロボット)あるいは軍事ロボット、クルマの自動運転システムなどの市場を先取りしよう、と全社で猛烈なスピードで動いています。

アマゾンは書籍のネット販売からスタートしましたが、今ではクラウドコンピューティングの世界で勢力を増大させています(AWS=Amazon Web Service)。

アマゾンは、ビッグデータを処理できるサービスを低コストで提供しています。

グーグルとアマゾンがIT(情報技術)市場を支配してしまう可能性がある、と言われています。

日本はこの世界でも後塵を拝することになるのでしょうか。

   


『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック


目次

はじめに

第1章 経営の原則

第2章 人材の条件

第3章 マーケットの創造

第4章 国際化への試練

第5章 経済活性化の原理

第6章 日米関係への提言

第7章 変革への勇気

第8章 日本国家への期待

第9章 新世界経済秩序の構築

あとがき




第2章 人材の条件

「マキシマムの力を発揮せよ[インタビュー]」(1967年)から


むしろ出ていく人は、会社という機構には合わなくて、そして、むしろ自分でやったほうがいい人が出ていくのであって、優秀な人たちだけが社を出て、残っている人はみんなぼんくらだと思うのは大間違いだ

 腕のたつ人は腰掛け的な人が多いように見受けられるのが、会社から出ていって外でやるのはちっとも悪いことではない。会社も、その会社の機構に合わない人を無理にとめておくことはない。といって、いい人が出ていくということではない。むしろ出ていく人は、会社という機構には合わなくて、そして、むしろ自分でやったほうがいい人が出ていくのであって、優秀な人たちだけが社を出て、残っている人はみんなぼんくらだと思うのは大間違いだ。  

21世紀へ 盛田昭夫 058 pp. 96-97 


「マキシマムの力を発揮せよ[インタビュー]」(1967年)から


独立したほうがいい人は独立したほうがいいし、会社のなかで腕をふるえる人は、会社のなかで腕をふるえばいいのだ 

 会社という機構のなかで腕を磨ける人だってたくさんいると思う。腕のいい人はみんな独立するというけれども、それはとんでもないことで、独立したほうがいい人は独立したほうがいいし、会社のなかで腕をふるえる人は、会社のなかで腕をふるえばいいのだ。

21世紀へ 盛田昭夫 059 p. 97 


第3章 マーケットの創造


「ソニー・スピリット」(1963年)から


「自ら計画し、自ら生産した製品は、自らマーケットをつくり、自らの販売計画によって販売すべきである」ということである。「自らサービスに当たること」である

 東通工は市販品を生産・販売する初期において、商法の鉄則ともいうべき、よい教訓を得、今日ソニーに脈々と流れる経営の基本ポリシーを打ち立てたのである。すなわち、それは「自ら計画し、自ら生産した製品は、自らマーケットをつくり、自らの販売計画によって販売すべきである」ということである。
 さらにまた一つの問題がある。先に述べたように、日本楽器を通じて販売された商品のアフターケアーである。当時、その欠点を補うべく、東通工は日本楽器の全国の支店にサービスマンを駐在させて、自らの手で修理補修にあたった。
 このことが、サービスの的確さと迅速さを図るのに役立ったのはもちろんであるが、そのサービスを通じて、生産技術の改良に資することがいかに大きな影響を持ち、かつ重要であるかを身をもって知りえた。ここでまた、さらに信条に一つの項を加えた。すなわち、「自らサービスに当たること」である。

21世紀へ 盛田昭夫 060 pp. 109-110 

 

盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田さんが、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという悲痛な気持ちが伝わってくる本です。

盛田さんの「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることの多くが当たっています。
盛田さんの慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

本書をアマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしましたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられることでしょう。


🔴「独立したほうがいい人は独立したほうがいいし、会社のなかで腕をふるえる人は、会社のなかで腕をふるえばいいのだ」

現在では仕事において選択の幅が広がっています。副業や社内起業が認められたり、一旦退社しても出戻りが容認されるという企業も出てきました。

自分に自信がある人は、高く評価してくれる他社で腕を振るったり、独立して起業したり、フリーランスで複数の企業で働くことも可能です。

一方、現在の企業が自分にとって働きやすく、評価してくれていると感じているのであれば、あえて退社する必要はありません。

会社のなかで腕をふるえる人は、会社のなかで腕をふるえばいいのだ

ただし、したいことと、できることは必ずしも一致しないことに注意を払う必要があります。

したいことはあるが未経験で何の実績もないのに、やりたいと手を挙げても認められるとは限りません。まず、足元を見つめ、自分ができることを再確認してみてはいかがでしょうか?

⭐こちらの記事もご参照ください。




盛田さんは、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンでもありました。表現がダサい? 古い?



⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。

ここ数十年で業態を変えてきたことは、世の中の変化に素早く対応できることを示しています。

ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。

ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。

スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するこのブログを最初に投稿したのは、アメブロで9年前(2014-07-24 21:40:30)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p.1  


ソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。

(3,607文字)


⭐出典元



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