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大転職時代 引き留めるより引き付けよ 2023.02.20 3/3





日経ビジネスの特集記事 72

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 2023.02.20 3/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

CONTENTS

Prologue 「大転職時代」の到来

PART 1 企業は転職者に何を期待するか 均質な組織を崩す 変革の「起爆剤」たれ 

PART 2 ダイレクトリクルーティングが台頭 「待ち」では出遅れる 総スカウト時代に突入

PART 3 面接対策、リファラル採用 キャリア人材を獲得 先進企業の攻略法

PART 4 13万件の口コミデータから検証 20代が集まる人気企業の条件

Epilogue 人材戦略は「脱・囲い込み」 選ばれる企業を目指せ



第3回は

PART 4 13万件の口コミデータから検証 20代が集まる人気企業の条件

Epilogue 人材戦略は「脱・囲い込み」 選ばれる企業を目指せ


を取り上げます。


口コミデータから見えてきた、若手人材が魅力に思う企業とは。


PART 4 13万件の口コミデータから検証 20代が集まる人気企業の条件

生産年齢人口が減少する中において、20~30代の若年労働者の確保は企業にとって大きな課題だ。これまでのPARTで触れてきたように、終身雇用が崩壊し転職に対するハードルが低くなった今、若年労働者の転職は増えている。「労働人口が減っていて、選ぶ立場にあるのは明らかに採用したい企業ではなく求職者のほう。主導権は個人にある」とある人材会社のマネジャーは証言する。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 028
 

新入社員が、入社後1ヵ月も経たないうちに退職してしまうことは珍しいことではなくなってきました。新入社員から見ると、入社した企業が期待するほどの内容ではなかった、とか自分がやりたいことができそうにないと判断した時には、あっさりと辞めてしまうのです。

採用した企業としては、「見切りが早すぎる」という印象を抱くかもしれませんが、新入社員としては「会社はここだけではない。他にいくらでもある」という意識が強いのでしょう。

ただし、ここで考えなくてはならないことは、「したいこと」と「できること」は違うということです。

いくらしたいと思っても、全く経験もなく、スキルも持ち合わせていないという場合には、自分を過大評価していると思われても仕方がありません。

一方で、できることは自ら証明することができます。「したいこと」と「できること」の差は限りなく大きいと思います。

いくら売り手市場であっても、その点に留意しておかないと、他社に移っても同じことを繰り返すことになるかもしれません。

このことは、新入社員に限った話ではなく、入社して数年しか経っていない社員にも当てはまることです。


ここで、若手社員がどうして逃げてしまうのか、その理由を考えてみましょう。

「インターネット業界」と「食品・飲料業界」を比較したデータがあります。記事を抜粋してお伝えします(大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20
 p. 029から)。

・両業界に共通して比較的評価点が高いのは、社内での情報共有や意思疎通のしやすさを示す「風通しの良さ」「法令順守意識」「社員の相互尊重」といった評価項目

インターネット業界ではこのうち「風通しの良さ」「法令順守意識」が評価項目順でトップ2を占める。食品・飲料業界ではこの3項目のみスコアが3.0を超えている

・両業界で特に大きな差が見られる評価項目は、チャート左下の「20代成長環境」

インターネット業界では評価点が3.61だ。対して、食品・飲料業界は2.62と、0.99ポイントの開きがある。両者の差は歴然だ。

これらのデータから導かれる結論

20代の若手人材にとって、自身のスキルを磨けるかどうかが企業を判断する重要な指標なのだ。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 029
 

注意しなければならない点は、「20代」という社会人として間もない時期を対象とした項目であることです。

オープンワークでは、実際に該当企業に
働いている人や働いていた人から
「待遇面の満足度」「社員の相互尊重」など
8項目に対する評価を集計し、
独自のアルゴリズムで評価点を集計している。
評価は1に近づくほど低く、5に近づくほど高い。
今回の分析に当たっては、2020年から22年まで
の間にオープンワークに投稿された
22~29歳の口コミ約13万件から該当企業に
1年以上在籍する「現職者」のものを抽出。
オープンワークの分類に従い一定の投稿数が
ある53業界を総合評価点の高い順番に並べて、
上位10業界と下位10業界を比較した。
さらに、上位業界と下位業界から1つずつ、
特徴がはっきり表れている業界
(インターネット、食品・飲料)を選び、
上のレーダーチャートに表した。
大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20


若手社員が企業に期待していることに、企業が十分に応えていないとも言えそうです。

「この会社に勤めれば将来こんな力を身に付けられる」「このようなキャリアを描ける」というビジョンや、長期育成の仕組みを企業は示せていない。あるいは伝わっていないがために、若手が長期的スパンで克明にキャリアステップを描けていないと言える。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 030
 


『日経ビジネス』は次のように記しています。

転職が徐々に一般化し人材流動性が高まる中で、自身の市場価値をいかに高めるか、求職者は真剣に考えを巡らせている。若手人材は20代のうちに成長できる環境やそれに伴う評価を求めており、企業はそういったキャリアアップができる土壌をいかに耕せるかが、若手採用の明暗を左右する。ゆるブラックでは到底、振り向いてもらえない。

「今」成長したいし、「今」できることに対して適正に評価してほしい──。そんな若手社員の思いが透けて見える。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 030
 


Epilogue 人材戦略は「脱・囲い込み」 選ばれる企業を目指せ


転職が当たり前となる雇用流動化社会の実現は、企業と個人の関係を大きく変えるだろう。常に変革を求められる厳しさが伴うが、持続的な成長が実現できる可能性を秘めている。


これまでの日本型の雇用慣行における人材戦略はどうだったのか振り返ってみましょう。

これまでの日本型の雇用慣行における人材戦略は、新卒一括採用で人材を囲い込み、長期間かけて育成していくものだった。このやり方で生まれた均質で安定的な組織は高度なチームワーク、協調性を発揮し、高度経済成長期の日本を支えてきた。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 032
 

問題点はどこになるのか?

現在、その安定性・均質性の過度な高さが、かえって急速な変化への対応を困難にしている。「同質性が成長の弊害になってしまっている」。数々の企業の人事制度構築に携わり、日本の人的資本経営の「ご意見番」でもある、カゴメ・常務執行役員CHO(最高人事責任者)の有沢正人氏はこう喝破する。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 032 

日本社会の同質性はこれまでにも幾度も指摘されてきたことです。それでも日本社会は変われなかったのです。


カゴメ常務執行役員CHO 有沢 正人氏

1984年協和銀行(現りそな銀行)に入行。
主に人事、経営企画に携わる。
2004年HOYAに移り、人事担当ディレクターとして、
全世界のグループ人事を統括。
その後AIU保険(現AIG損害保険)人事執行役員を
経て、12年カゴメに特別顧問として入社。
17年10月執行役員CHO就任。
18年4月から現職。(写真=陶山 勉)
大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20


キャリア自律

1つの会社で雇われ続けることがなくなった働き手は、自分の価値をより発揮したり、高めたりしてくれる会社を探すようになる。「キャリア自律」という言葉が示す通り、自分のキャリアをどう組み立てれば市場価値が高まるのか考えるようになる。

その時、企業と働き手の関係は対等なものとなる。企業はこれまで働き手を「選んできた」が、今後は働き手のスキルや経験向上に資する機会を提供できるか、働き手に「選ばれる」ようにもなるのだ。日本の生産年齢人口は65年、今より約2900万人減り4500万人となる。選ばれるための競争は今後、激しくなるだろう。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 pp. 032-033
 


今号のタイトルの一部になっている言葉が出てきます。

有沢氏は「これからの人材戦略はRetention(引き留める)よりもAttraction(引き付ける)が重要になってくる」と語る。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 033
 


企業の本音と実情

企業にとっては、優秀な人材に逃げられたくないのが本音だ。だが変化の激しい時代、1つの会社に人材を縛り付けておくのはもはや難しい。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 033 



🔴カゴメのケース(副業やリモートワーク、専門職コース)

例えばカゴメは働き手が理想のキャリアを築けるよう、さまざまな制度や仕組みを用意する。社員が自分がやりたいことに時間を割けるよう、副業やリモートワークなど多様な働き方を推進。DXを活用した新事業の発案などを公募型のプロジェクト単位にし、若手社員も入りやすい仕組みにした。キャリアアップについてもマネジメント層に就かずに専門性を発揮し活躍可能な「専門職コース」を設けるなど、複線化している。

「社員の成長機会を用意するのは会社の役割。成長できる環境が整備されている会社には、おのずと優秀な人が集まる。企業も変革を起こしやすくなり、企業価値が向上する好循環が生まれる」(有沢氏)

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 033
 


政府の狙い

政府もこうした流れを後押ししようとしている。21年4月、政府は雇用改革制度の一環として、大企業に中途採用比率の公表を義務付けた。「人生100年時代」で働く期間が延びた今、1つの会社の中だけで自分のキャリアを構築するのは難しくなっている。労働者の主体的なキャリア形成を後押しするためにも、企業にキャリア人材の採用を活性化してほしいという狙いがある。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 033
 


雇用流動化社会がもたらすもの

雇用が流動化した社会が当たり前になれば、生産性、成長性の高い産業や企業に人を寄せることも容易になる。収益性も高まり賃上げもしやすくなる。活発な転職が可能となる雇用流動化社会は、社会のレジリエンス(強じん性)を高め、日本経済が成長しやすくなるための土台となる。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 033
 


企業も働き手も変わり続けることを迫られる

企業も働き手も変わり続けなければ、生き残れない時代になった。この状況をシビアと捉えるのか、チャンスと捉えるのか。その判断が、成長の分かれ目になる。

大転職時代 引き留めるより引き付けよ 
2023.02.20 p. 033
 


生物学における「適者生存」が転職にも当てはまるのでしょうか?

もちろん、生物学における「適者生存」という考え方には批判があり、「『適者が生存している』と見るのではなく、『運の良い者が生き残る』と見ることを運者生存(うんじゃせいぞん)」というそうで、一理ありますね。



🔷編集後記

今特集は、「大転職時代」を迎え、企業も社員も転職に真正面から向き合い、互いにとってメリットのある選択をすることが必要になったと言えます。

私は転職(転社とも)を複数回しましたが、その頃は勤め先を変えるのは良いことではないという考え方が支配的でした。一度入社したらその会社に定年退職するまで働くのが普通でした。

私が社会人であった時代とは異なり、現代では転職(転社)について社会が許容するようになってきました。働きにくい職場だと感じたら、さっさと辞め、求職することはごく普通になりました。

その一方で、ヘッドハンティングによって転籍することもまれではなくなってきました。業界で高い評価を得た人物は同業他社だけでなく、異業種からも声がかかることもあるでしょう。

ただし、注意しなければならないことがあります。ヘッドハンティングされたと有頂天になっていたら、実体は現在勤務している企業がヘッドハンティングという形をとり、追い出すのが目的だったという嘘のような本当の話があります。

ヘッドハンティングやダイレクトリクルーティングという手法を用いるのは、自社が求める社員像にフィットする(と思われる)人物にピンポイントでアプローチするためです。こちらは少数に絞って行われます。

一方、新卒を対象にした、従来型の多数の求職者向けの求人も今後も引き続き行われることは間違いありません。砂漠の中から「ダイヤモンドの原石」を見つけることになるかもしれません。


企業も働き手も生き残るのは「適者生存」なのか「運者生存」なのかは断言できませんが、いずれにせよ転職は両者の運命を分かつものになるでしょう。


🔴情報源はできるだけ多く持つ

海外情報を入手しようとすると、英語力が必須であったり、膨大な情報がクラウドサービスを利用すれば手に入りますが、それでも非公開情報はいくらでもあります。そうすると文献に当たることが必要になります。

日本の国立国会図書館のウェブサイトや米国の議会図書館のウェブサイトに当たってみるのも良いかもしれません。

もちろん、ロイターブルームバーグなどの報道機関の日本版(PCやアプリ)がありますから、これらを利活用すればある程度の情報を収集することは可能です。これらのLINEアプリもありますので、情報を収集することはできます。

あるいは『日経ビジネス』『東洋経済』『ダイヤモンド』『プレジデント』などの雑誌やウェブ版から情報収集することもできます。これらの雑誌やウェブ版の購読をお勧めします。

あとは自分で、関心のあることに絞って検索したり、ChatGPTBardに質問してみて、知見を広めるのが良いでしょう。

ロイター

ブルームバーグ

moomoo

(文字)


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