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沈まぬ日本製鉄 橋本改革、V字回復の真相 2022.11.21 2/3

【『日経ビジネス』の特集記事 】 #32

✅はじめに

⭐『日経ビジネス』の特集記事から、私が特に関心を持った個所重要と考えた個所を抜粋しました。
Ameba(アメブロ)に投稿していた記事は再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、再投稿した記事は他の「バックナンバー」というマガジンにまとめています。

⭐原則として特集記事を3回に分けて投稿します。
「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」です。
プロフィールから)


日経ビジネス電子版セット(雑誌+電子版)「らくらく購読コース」で、2022年9月12日号から定期購読を開始しました。


日経ビジネスの特集記事 #32

沈まぬ日本製鉄 橋本改革、V字回復の真相 2022.11.21 2/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

日本製鉄の復活が急ピッチで進んでいます。
橋本英二社長が推進するグローバル経営は新しいステージに入りました。

今回はインド開拓に全力で取り組む姿を中心にお伝えしていきます。


PART 2 日本製鉄が支える「鉄は国家」 インド開拓に1兆円 グローバル3.0の野心

インド 中国勢入れぬ巨大市場 ミタルと一貫生産

インドは成長著しい国です。人口は急増し、今年中に中国を抜くと推測されています。

⭐出所:インド、今年は人口世界一に


以前、主要な新興国の象徴として、BRICs (Brazil、Russia、India、China の4カ国)と言われましたが、今では BRICS(Brazil、Russia、India、China、South Africa の5カ国)と言われているようです。

ただし、この5カ国の中で突出しているのは、ご存じの通り中国とインドです。

さらに言えば、インドは労働生産人口が極めて多く、しかも若いということが魅力的です。しかも、「0(ゼロ)を発見した国」であり、数学に強い人たちが多いということも利点です。

インドの2023年に分かる最新の労働人口(労働力)は476,670,190人です。

⭐出所: グラフで見るインドの労働人口(労働力)は多い?少ない?


余談になりますが、日本では九×九(くく)ですが、インドでは2桁×2桁(インド式数学)の暗算ができるのです。

バンガロールはインドのハイテク産業の中心地として知られています。

しかし、現実には「インドは多くの国にとって最大のアプリ開発アウトソーシング先だ。インドで働くソフトウエアエンジニアの数は、アメリカに次ぐ世界第2位。2024年にはそのアメリカも追い抜く可能性が高い」(国際IT都市バンガロールが深圳を追い抜く日 Newsweek 日本版 2021年2月11日(木)09時00分)ということです。

つまり、生産拠点ではないという意味です。

✅バンガロール

バンガロールは、1980年代以降に欧米企業の業務アウトソーシング先として成長を遂げ、インフォシス・テクノロジーズやウィプロといった大手を生み出してきた。その結果、インドのソフトウエア産業の中心となり、今や世界的にもその地位を築こうとしている。

既に2000年代初頭から、グーグルやIBM、マイクロソフト、シスコ・システムズといったアメリカのビッグ・テックは、インドの研究開発拠点をバンガロールに置いてきた。それがこの街にスタートアップカルチャーと積極的な投資をもたらし、インドにおけるアプリ開発の中心地となるのを後押ししてきた。

⭐出所: 国際IT都市バンガロールが深圳を追い抜く日


余談が長くなりました。
本題に入ります。

インドにはアルセロール・ミタル(以下、ミタル)という世界最大級の製鉄会社があります。

このミタルと日本製鉄が共同出資したAM/NSインディア(AMNSI)という企業があります。

AMNSIからスタートします。AMNSIにアルセロール・ミタルが60%、日本製鉄が40%出資しているそうです。

✅ハジラ製鉄所

東京都中央区以上の広大な敷地に、粗鋼の年産能力で約900万トンに及ぶ設備が並ぶ。2021年のインド国内のシェアは5位だ。

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✅インドの技術力

インドの技術力についてAMNSIの橋本淳CTO(最高技術責任者)はこう語っています。

日本とインドで大きな技術の差はなくなっている。オペレーションの腕も着実に上がっている。何よりアグレッシブ。

沈まぬ日本製鉄 橋本改革、V字回復の真相 2022.11.14  p.019       


✅海外拠点

日鉄は世界各地で一貫生産を推し進める
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✅日鉄とミタルの経営はイコールパートナーシップ

日鉄とミタルは19年12月、当時インドの製鉄4位だったエッサールを約7700億円で買収。日鉄の海外の企業買収としては過去最高額に達した。

日鉄とミタルの出資比率は違うが、同じ数の取締役を送り込んでおり「実質的に経営はイコールパートナーシップ」(AMNSIの永吉敬洋副社長)となっている。

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世間では「対等合併」と公言していても、実質的には吸収合併であることはほとんどです。中には相互補完という意味で合併するケースはありますが、それは両社の規模がほぼ同じ場合です。


✅AMNSIの特長

ミタル、日鉄、インドの技術責任者が対等に議論する。製鋼の副産物「スラグ」の処理方法一つを取っても各国で考え方が違うが、妥協はせず意見を戦わせる。

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対等に議論するところに両社の関係が表れていると思います。


✅世界の国・地域の粗鋼生産量

世界鉄鋼協会によると、22年1~6月の64カ国・地域の粗鋼生産量は、中国の減産が響いて前年同期比5.5%減だったが、インドは8.8%増。需要を着実に取り込んでいる。

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インドの成長性が突出していることがわかります。


✅日鉄の海外グループ会社の成長は驚異的


2022年3月期は過去最高を記録した
●日鉄の海外グループ会社の事業収益
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2023年3月期以降もこのまま成長していくでしょうか?
私は可能性大だと思っています。


✅中国とインドの成長は対照的


鉄鋼市場は中国の減少とインドの増勢が鮮明に
●世界の鉄鋼需要の長期見通し
   沈まぬ日本製鉄 橋本改革、V字回復の真相 2022.11.14  p.019


✅日本製へのこだわりを捨てる

日鉄がミタルと合弁企業を設立し、事業を成功させるために行なったことは「日本製へのこだわりを捨てる」ということでした。

覚悟の決断だったことが推測できます。中途半端な気持ちでは成功しないという、日鉄のトップの橋本社長の強い意思の表れと私は見ています。

グローバル1.0

日鉄がグローバル化にアクセルを踏んだのは1960年代前半に遡る。59年に鋼材の輸出国から輸入国に転じた米国に、鉄鋼製品の輸出を拡大。それを皮切りに中国やアジア各国に売り込み先を広げていった。これがグローバル1.0だ。

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グローバル2.0

グローバル2.0は90年代~2010年代で、「下工程」の現地化を進めた。日本の上工程で製造した半製品を輸出。世界各地で最終製品にしていった。中国の宝武鋼鉄集団やタイのサイアムグループなどとの合弁で現地生産を拡大。海外の下工程の鋼材生産量は年1700万トンと10年前に比べ8割増えた。

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グローバル3.0

今扉を開き始めたのがグローバル3.0。鉄鋼製品の母といえる高炉での銑鉄や、鋼づくりなど上工程から下工程まで垂直統合で海外に根を下ろす。「メード・イン・ジャパン」のこだわりを捨て、日本を起点とした従来の国際分業からビジネスモデルを転換させる。

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✅中国とインドの対立

地政学的中国とインドは対立関係にあります。


Wikimedia Commons
   https://commons.wikimedia.org/wiki/File:India_China_Locator.png


中印は外交面で対立しており、中国メーカーは現地生産できないうえ、インドへの輸出も限られている。参入障壁が極めて高いのがインドの鉄鋼市場だ。

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現在、中国の人口は世界一ですが、今年中(2023年中)にインドが世界一になると予測されています。この点が中国にとって気に入らないことかもしれません。

国連によると、インドの人口は23年に中国を超え、世界首位の14億6000万人に到達する見通し。鋼材の内需は30年度に2億3000万トンと21年度の2倍超に膨らむ。建設、交通、エネルギーなどインフラから自動車や家電まで長期的に旺盛な需要が見込まれる。

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✅日鉄は投資拡大の手を緩めない

日鉄が生き残れるかどうか、予断を許さない。命運を左右するのは能力拡張競争に耐えられる経営力だ。
 「投資拡大の手を緩めた時は負ける時。拡張競争に後れを取ることは許されない」。AMNSIに送り出された稲田知光技術担当役員は出発前、日鉄の橋本英二社長から飛ばされた檄(げき)を今も覚えている。

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ここで投資拡大の手を緩めれば、今までの投資が水泡に帰してしまうという危機感を抱いているからです。


✅強気な数字をはじく

日鉄のグローバル事業は破竹の勢いだ。22年3月期の海外の連結事業利益(輸出や一部の海外グループ会社などは除く)は、1350億円。過去最高を記録した。
グローバルな粗鋼生産能力は22年3月期時点で年6600万トン。これを橋本社長は中長期的には「1億トンまで引き上げる」青写真を描く。

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目標数字はできるだけ高く提示することが良いですね。
そうしないと数字は伸びていかないからです。
低い数字を達成してもその後伸びていきません。妥協は許されません。


今まではインドでの実例をご紹介しました。
最後はタイの例をご紹介します。

🔴タイのケース

✅攻めるのは建設用 市場に合わせ適"鋼"適所

日鉄が掲げるグローバル1億トン体制に向け、タイでもグローバル3.0が22年4月から動き始めた。

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高炉を持っているか持っていないかは雲泥の差。

G/GJスチールは3月、日鉄が約550億円を投じ買収した。21年の連結売上高は342億2100万バーツ(約1370億円)で営業利益は1億6100万ドルだった。
(中略)
鉄スクラップを溶かして製鋼する電炉から圧延設備までをそろえるタイ唯一の製鉄会社。首位サハビリアスチールも電炉は持っていない。「電炉を持っているかいないかで鋼材づくりの自由度は格段に違う。多種多様な需要にきめ細かく対応できる」。日鉄の東南アジア事業を統括する東南アジア日本製鉄の星健一社長はこう説明する。

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✅日鉄にとってのタイの地域特性

タイはもともと日本製鉄の金城湯池だ。日系自動車メーカーが集積し、日鉄は日本から輸出された半製品を現地で加工。ハイテン材などを供給してきた。自動車用鋼板の同国シェアはトップとみられる。

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✅G/GJスチールの買収で適"鋼"適所の実現を目指す

G/GJスチールの買収で適材適所ならぬ適“鋼”適所を実現し同国最大の市場に切り込む──。そのビジネスモデルにはインドと同じくグローバル3.0の神髄が宿る。

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✅広がる世界との差

今まで日鉄の奮闘ぶりの一端をご紹介してきましたが、憂慮すべき事実があります。

それは2000年と2021年を比較すると、粗鋼生産量の順位が1位から4位にダウンしていることです。

しかも、生産量で中国やインドの企業に大きく水を開けられています。

国・地域と品種を掛け算した、適“鋼”適所によって、グローバル経営に磨きをかけている日鉄。だが、世界の競合と比較すると、橋本社長が口酸っぱく言うようにアクセルを緩めることはできない実情が分かる。

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日鉄は中国勢の台頭を受けて後退した
●粗鋼生産量の世界上位10社
        沈まぬ日本製鉄 橋本改革、V字回復の真相 2022.11.14  p.025
       


次回は、

PART 3 水素還元製鉄やCCUSで突破 道険し脱炭素 "静脈"人材に託す

PART 4 日本企業の悪循環を断つ 利益なき顧客最優先を改めよ


をお伝えします。 



🔷 編集後記

日本製鉄が巨大企業であるばかりか、どれほどの影響力があるかお分かりになったと思います。

目下、業績は好調です。

そんな日本製鉄に死角はないのかということに重点を置いて、次回ご紹介します。



⭐ 回想録


⭐ マガジン (2023.01.12現在)




























   


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