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【読書感想】島本理生『あられもない祈り』

2019/05/12 読了。 

島本理生『あられもない祈り』

主人公は大嫌いなタイプの女で、これっぽっちも共感も同情もできないくせに、この小説から祈りを受け取ってしまった。 

「求められなければ気が休まらないくせに、いったん始まってしまうと、あとはもうおびえを抱いて朦朧としながら早く終わることばかり考えている」

主人公の「私」は20も年上の「あなた」と恋をする。「あなた」には結婚間近の恋人がいる。「私」にも同棲している恋人がいる。

「私」はセックスにおびえがある。14歳の夏、男に連れ込まれた布団の中におびえの正体がある。そのおびえの正体は、無理矢理貫かれたとかそういう類のものではない。ただ、そのおびえの元になった感情が、私は分かって分かって仕方なかった。

肌を合わせることで人恋しさを解消しようとする寂しさは、侘しい。「私」の心に巣くう侘しさは、「あなた」としたセックスでひと時消えたように見えた。

うまく言えないが、この小説を書いた人がいて、この小説が存在していること自体が祈りなのだと思う。私は祈りを受け取って、少なからず救われてしまった。「私」みたいな依存気質な女、嫌いなんだけどな。救われたわ、くそー。



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