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【読書感想】村田沙耶香『消滅世界』

2018/10/24 読了。

村田沙耶香『消滅世界』

夫婦間のセックスは近親相姦で、結婚していても恋人がいるのが当たり前で、でもその恋人と挿入する性行為はしなくて、避妊手術を施されているから性行為をしても妊娠はしないし、精子も卵子もないからさらさらした水が出るだけで、子供が欲しくなったら人工授精で妊娠するというのが当たり前の世界の話。遠い未来ではなくて、近い、たぶん現代と平行している世界。

読み終わりは終わりではなくて始まりで、読み終わっても私の中では『消滅世界』が育っている。私の中で得たいの知れないものが蠢いていて、それが胎児のようで気持ちが悪いのに愛おしい。

設定は奇抜のように見えて、現代の問題を解決していったらそういう世界になるという説得力がある。だから怖い。今と繋がっているから怖い。でも段々怖くなくなっていく。それが一番怖かった。

新型出生前診断が始まった時に、世界は大きく方向を変えたと思った。こうした流れは止められないだろうとも思った。変わり続けていく途中に私たちは生きている。

この小説は、セックスやマスターベーション、そして子育て、最終的には個人から世界へと広がっていく。

あまりに壮大に広がっていくからどういう風に物語を締めるのかが気になったが、自分としては最高の終わり方だった。アダムとイヴの誕生だよ、あれは。

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