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【読書感想】中村文則『何もかも憂鬱な夜に』

2018/11/08 初めて読む本、読了。

中村文則『何もかも憂鬱な夜に』

孤児で施設で育った刑務官の僕。
僕は死刑判決を受けた二十歳の山井を担当している。

巻末の又吉直樹さんの解説が素晴らしいので書くこともない気がするが、書いてみる。

死刑は法務大臣が執行命令を出す。その責任も大きい。しかし、執行自体は行わない。

執行そのものにとてつもない葛藤と精神的負担がある。その重荷を刑務官という人間に背負わせてよいものだろうか、と小説を読んでいて感じた。

この小説は混沌としていて、感情が定まらない。その定まらなさが正しいのだと思う。 

「俺にはやるべきことが一つだけ残っている」と山井が言う。

殺害した夫婦の両親や知人は山井の死を望んでいる。それなら死刑で死ぬことは自分の役割だと。

役割の中にいるのは初めてだと。

この台詞で泣いてしまった。そんな悲しい役割があるのかと。

私も混乱の多い子供だった。思春期は絶望しかなかった。混乱と溶け合ってどうにかこうにか今を生きている。

うまく生きることはとうに諦めた。でも、小説がある。物語が私の狭い了見を広げてくれる。

この小説を読んでよかった。

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