【読書感想】伊坂幸太郎『重力ピエロ』
2019/05/11 再読。
伊坂幸太郎『重力ピエロ』
最高な家族の物語。
壮大な話をするが、伊坂幸太郎の小説は社会を変えていく力があると思っている。伊坂作品には一風変わった人物がたくさん出てくるが、その者たちが話すユーモアのある会話は毎度毎度私の固定概念を鮮やかに壊す。小説によって心の根っ子が変わることは、やがて社会に漫然と根付く概念を変えていく。私は勝手にそう思っている。
重力ピエロは、強姦された時に出来た子供・春とその兄・泉水と両親の話。テーマは重いけど、筆致が軽いから、湿っぽくない。湿っぽくないけど、春の苦悩が立ち昇ってくる。春の苦悩に触れた時に、春は出自を知った時からこうやって自問自答してきたんだと、苦悩の長さと深さにどうしようもできなくなる。春の決断は春にしか出せないのだと私も腹を括るしかなくなる。
ただ、春には最強の家族がいる。審判員の尻を叩くお母さんのエピソードは最高だ。こんな風に子供の気持ちも掴みながら、子供の罪を帳消しにしちゃうような大人になりたい。泉水と春の父母みたいに、大らかで面白くて強い人間になりたい。最初は模倣からでもいいや。気が付いたら伊坂さんの小説に出てくるようなぶっ飛んでる妙ちきりんな大人になれていたらいいな。
読んでいる間は難しいことも色々考えたけど、結局いつも同じ感想になる。この最強な家族が傷つかずに暮らせる社会にしたいなあ、と。ほんと、それだけです。
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