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権威主義国家の権力闘争を疑似体験する教育ゲーム「パワープレイ」のルールを紹介する

権威主義的な支配体制を維持しようとする政府は、汚職、武力による弾圧、言論や思想の統制などの政策を駆使する傾向があります。このような傾向は特定の政治家の気質や思想で説明できる性質のものではありません。政治体制の特徴と関連付けて体系的に理解する必要があります。

大まかにまとめると、権威主義の特性を理解するポイントは4つあります。(1)権威主義の国で政権を維持するためには、政権に対して忠誠を誓った盟友が一定数の規模で必要です。(2)盟友は簡単に裏切る恐れがあるため、最高指導者は彼らに十分な見返りを支払わなければなりません。(3)権威主義の体制を転覆するには、複数名が協力して集団行動をとらなければなりません。(4)体制が崩壊したとしても、その後で成立した政権が安定的である保証はありません。

これらのポイントを理解することができれば、権威主義の下では政府が国民を抑圧し、公益に反する行動をとる傾向があり、しかもその統治が長期にわたって継続しやすい理由が明確に理解できるようになるはずです。

この権威主義の支配体制を教えることを目的とした教育ゲームのルールが2020年に政治学のジャーナルで発表されています。10名から20名のプレイヤーを想定したゲームであり、拡張ルールを追加することも容易なデザインになっています。この記事では、その論文の内容に沿って、どのようなルールを使えば権威主義を教えることができるのかを説明したいと思います。

ゲームの概要

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