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黒史郎の実話怪談新シリーズ始動『実話怪談 黒異譚』著者コメント・試し読み・朗読動画

底無しの黒い恐怖!!

黒史郎の実話怪談新シリーズ始動!

実話怪談 黒異譚

内容・あらすじ

現代で採集された話と先人の|記録《のこ》した|《はなし》を読み比べる――

「わたしからサオリを奪った男って…」
何万人ものアカウントから特定し、つきまとう女!
「裏アカ女子」より

「妹の顔の皮を剥いで遺体を雪の下に埋めた…」
そして、兄は家へ入るなり卒倒した!
「皮むき峠」より


奇妙でじわじわ怖い――ホラー作家・黒史郎が紡ぐ実話怪談の新たなシリーズが発動。

・登山中の若い頃の祖父の写真、妙な違和感を覚える「救助者
・母親が描いた怪人の絵を異様に怖がる息子がある夜…「悪魔が来る
・自分と合わない客には露骨に不愛想になる飲み屋の女将の理由「寄る辺

――など、著者が採集した現代の怪談の数々と、民俗資料や伝承記録から先人が残した怪談を掘り起こして収録。

体験した者がいて記録する者がいるのは今も昔も変わらない――怪談フリークが紡ぐ新たな読み味をお楽しみいただきたい。

著者コメント

 今回の本は(というか今回もですが)、ぼくの有能な姪っ子三人が収集に協力してくれたのですが、声優関連、美容関連、芸能関連だからなのか、人間関係・友だち関係、大丈夫? ドロドロしすぎてない? おじさんに困ったことがあったら言ってね、となるような話が多かったです。
 なにより、いちばん上の姪が、語りまで上達していたのでびっくりしました。
 お小遣いをはずみまくりました(今度はプレステ4もあげなくてはなりません)……お財布が……

試し読み 1話

濁声

 その日、大久保家のテーブルには例年通り、奥さんが腕をふるった豪勢な食事が並んだ。
 娘・ひかりさんの十六歳の誕生日である。
 十二月二十四日、クリスマスイブでもあるので連日のパーティーとなる。小学生の次女と三女もいるのでにぎやかな二日間となるのだが、その初日であるこの日、ひかりさんに笑顔は見られなかった。数日前に親しい友人が急逝きゅうせいしていたからである。
 ショックでひかりさんは訃報ふほうのあった日から眠っておらず、ここ数日は爪を見つめてぼんやりとしていた。
 水以外は喉を通らない様子なので――今日は祝い事どころではないだろう、せっかく料理を作ってもらったがパーティーはひとまず延期にして、また気持ちが落ち着いてからあらためてやってはどうかと父親は娘を気遣った。だがひかりさんは首を横に振ると「こんな日だからこそ、いつも通りにすごしたい」という。
 本人がそういうならとパーティーを続けることになったが、どういうわけか、いろいろなことがうまくいかない。
 ビデオカメラをまわすと電源を入れた直後に落ちてしまう。ろうそくに火をつけたそばから、息を吹きかけられたように消える。リビングの照明を消すと隣の部屋のテレビの電源が入る。誰も触れていないのにピアノが鳴る――ひとつひとつは些細なことだが、そのたびにパーティーは中断され、ただでさえ重い空気だったのに、どんどん娘たちの表情がくもっていく。
 なにかが起きていることに、みんな気づいていた。だが、つとめて気づいていないふりをしていた。少しでも明るい空気にしようと次女と三女が即興のダンスを披露するが、この日に限って動きが滑稽で不気味だった。
「もう一度、歌おうか、もっと元気よく」
 ぼんやりしているひかりさんを囲んで、二度目のバースデーソングの合唱がはじまる。
 はっぴばーすでー、とぅーゆー、はっぴばーすでー、とぅーゆー
 はっぴばーすでーでぃあ――
 ひがあありいい
 次女と三女の歌声が同時に男のようににごった。

―了―

朗読動画

5/25 18時公開!

著者プロフィール

黒 史郎 (くろ・しろう)

小説家として活動する傍ら、実話怪談も多く手掛ける。「実話蒐録集」シリーズ、「異界怪談」シリーズ『暗渠』『底無』『暗狩』『生闇』『闇憑』、『黒塗怪談 笑う裂傷女』『黒怪談傑作選 闇の舌』『ボギー 怪異考察士の憶測』ほか。共著に「FKB饗宴」「怪談五色」「百物語」「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズ、『未成仏百物語』『黄泉つなぎ百物語』など。

好評既刊

異界怪談シリーズ 5作目
異界怪談シリーズ 4作目
異界怪談シリーズ 3作目
異界怪談シリーズ 2作目
異界怪談シリーズ 1作目
ベスト版


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