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大阪限定の実話怪談本・第2弾『大阪怪談 人斬り』(田辺青蛙)著者コメント・試し読み・朗読動画

シリーズ第2弾!
魑魅魍魎が跋扈する大阪! 恐怖の怪異ガイドブック

内容・あらすじ

北区:百貨店前で目撃されたゾンビの幽霊!
堺区:死んだ人に会わせてくれる、ふしぎ地蔵
福島区:地図から消えた謎の島の怪異
中央区:死を招く、コンビニの傘の忘れ物!
西区:切腹のくじ引きをした土佐稲荷神社
千早赤阪村:河内音頭で唄われる十人斬り猟奇事件

ホラー作家・田辺青蛙が徹底取材の上で書き下ろした地元・大阪の怪談集第2弾!

・大阪の春の風物詩、造幣局の通り抜けにまつわる奇妙な話「通り抜け」
・たこ焼き屋で出会った男性の怪異「天満のたこ焼き」
・千日前は心霊スポットとしても有名。霊が見えるという友人を連れて行ったら…「見てしまった者」
・伝承される悲劇とそれらに纏わる不思議な話の数々「大阪千人斬り」「曽根崎五人斬り」「河内十人斬り」
など、大阪市内を中心に綴られる怪異譚を47話収録。

ほんまに怖い話、大阪にはようさんあるんやで――。

著者コメント

 大阪は笑かす話をしゃべりたがる人は多いけど、コワイはなしはなあ……というような感じで始まった怪談取材。
 しかし、コワイ話を喋りたがる人も大阪には多かったようで、今回の収録作の3倍以上の量の怪談が前回の『大阪怪談』を出してから集まってしまいました。
「こんな話がある」、「こんな話もある」と、年齢を問わず怪談を通じて多くの人と交流出来たのはとても楽しく、このシリーズを出来るだけ長く続けたいと願っています。
「事件現場」はあのグリコ森永事件の犯人を捕まえたい!という探偵に憧れている人が、事件現場で不可解な出来事に遭遇する話です。
 私もこの話を聞いた後に事件現場に行って来ました。特に何かを見たりすることは無かったのですが、怪談を聞いた影響でしょうか、ぞわぞわと肌があわ立つような不気味な雰囲気を現場で感じました。他にもこの本には大阪で起こった事件に纏わる不思議な話が掲載されています。

試し読み 1話

事件現場(大阪府茨木市)

「探偵って憧れたことないですか? 今まで誰も解決したことのない事件の真犯人を見つけられたらカッコええなって思って。たまたま家の近所やったもんやから、グリコ森永事件の跡地巡りをして、推理してやろって過去に思ったことがあるんですよ」
 そう言って、大阪の高槻たかつき市在住で建築関係の仕事をしているという前岡さんは笑った。

「切っ掛けはNHKドラマの『未解決事件file.01 グリコ・森永事件』を見たからなんですけどね。入浴中の江崎社長を裸のまま誘拐して三日間監禁、その間に十億円と金塊を要求した『かい人21面相』と警察のやりとりは、再現ドラマだとわかっとってもてのひらにぐっしょり汗かくくらい興奮したなあ。
 実は江崎社長が監禁されていた水防倉庫って、いまだに残っているんですよ。事件から四十年近くも経っとるのにですよ。
 僕、茨木いばらき市にそんな大事件の舞台となった場所があるなんてテレビで見るまで知らんかったから、見に行ったんですよ。で、うわあテレビや雑誌で見たんと同じやってカメラで写真を撮ろうとしたら、なんか倉庫の横におったというか現れたんです、黒い人の形をしたもやもやが。大きさは二メートルくらいで、トタン屋根の下、雑草の上に素足で立っとって、目っぽいものが上の方に二つありました。そいつが僕に対して、なんでか凄い悪意を持っているのをビシビシ感じたんです。
 だからかそいつ、僕の方にいきなり凄い速さで迫って来たんです。走るとかじゃなくって、氷の上をツーって滑って向かって来るような感じでした。
 黒いもやもやに追いつかれたら死ぬ、殺される! と思って全速力で逃げましたよ。
 今思い出しても鳥肌立つくらいヤバかった体験です。
 あの黒いもやもやが何やったとか調べる気はないけど、この世のもんでは絶対なかった。
 だから、あの倉庫がまだ残っているのも、もしかしたら、取り壊しができない、なんか理由があるんかも。
 建築関係の仕事やってると、たまにその手の話は聞くんです。あれは壊したくても壊されへん。関係者の命にかかわるもんやからって」

 前岡さんはそう言い、同じ黒いもやもやに遭ってしまいそうな気がするから、他の事件現場にも行きたくても行けないということだった。
 ちなみに、犯人が身代金要求に使った電話ボックスも、いまだに壊されずに残されている。
 その電話ボックスを使うと誰かに肩を叩かれて、後ろを振り向くと誰もいないということが起きる、という怪談を「ひらかた怪談サークル」で出会った方から聞いた。

―了―

朗読動画

5/23 18時公開!

著者プロフィール

田辺青蛙 (たなべ・せいあ)

『生き屏風』で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。著書に『大阪怪談』『関西怪談』『魂追い』『皐月鬼』『あめだま 青蛙モノノケ語り』『モルテンおいしいです^q^』『人魚の石』『致死量の友だち』など。共著に「てのひら怪談」「恐怖通信 鳥肌ゾーン」各シリーズ、『京都怪談 神隠し』『怪しき我が家』『怪談実話 FKB饗宴』『読書で離婚を考えた』など。

▼ネット連載「北海道の怖い話」配信中▼


シリーズ好評既刊


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関西怪談
京都怪談 神隠し


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