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『怪談四十九夜 鬼気』まえがきを全文公開!


4月27日発売の『怪談四十九夜 鬼気』(黒木あるじ編著)のまえがきを全文公開いたします!


まえがき

名うての執筆陣が集まり四十九話の怪談を綴る本シリーズ、驚くべきことに七冊目の刊行であります。あいかわらず編著を冠しておきながら、一読者とおなじ目線で楽しんでしまう私ですが、錚々たる書き手の名前を見れば、その気持ちも理解してもらえるのではないかと思います。

前巻までは「出棺」「荼毘」「埋骨」と葬送にちなむ副題がついていた本シリーズ、今回は「鬼気」と銘打たれました。例によって考案したのは担当編集氏。「さすがに葬儀関連の単語はもう残っていないだろう」と油断していたところに、このタイトル。いっそう禍々しい方向へ舵を切るとは、ただただ戦慄するばかりです。
前巻のまえがきにおいて、担当氏がすでに取り憑かれている可能性を示唆しましたが、あながち冗談ではないかもしれません。

辞書をめくってみれば「鬼気」は〈身の毛のよだつような気配〉〈恐ろしくて不気味な雰囲気〉と書かれています。我々は「鬼」と聞けば、額に角の生えた怪物を想起します。虎柄の腰巻や金棒を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし「鬼」という字は、もともと「死者の魂」を意味するものでした。文字のなりたちも〈異様に巨大な頭の人間〉をあらわした象形文字なのだとか。

つまり「鬼気」とは、人ならざるモノの気配ということになります。私たちがふいにおぼえる寒気、意味もなく感じる怖気こそが鬼気なのです。それでも気配だけなら「気の迷いだろう」と自分を騙せるかもしれません。しかし暗闇に響く知らない声を聞いてしまったら、もう誤魔化すことは不可能です。その囁きは死者の声です。その呻きは異形の聲(こえ)です。鬼があなたに訴えているのです。
「鬼が云う」と書いて〈魂〉と読むのです。

ぜひ本書を楽しみながら、そっと耳をそばだててみてください。自分以外には誰も居ないはずの室内で誰かの声が聞こえたなら、それは鬼気がせまっている証拠かもしれません。決して鬼の呼びかけには答えませぬよう、どうかご注意を。
二度とこちらへ戻れなくなるかもしれませんので。

さて──そろそろ、長い夜の幕開けです。


▼続きは書籍にてお楽しみください▼

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