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❓❕【哲探進歩/てったんしんぽ】❕❓…1歩目(このコラムの趣旨と考察例)

🐾1歩目(このコラムの趣旨と考察例)🐾

【はじめに】

2021年は、フルタイムの放棄と引き換えに、探究を様々な角度から考える機会に恵まれた。そして、たくさんのオンラインセミナーに参加したことが大きい。
2005年頃から製造・開発にこだわり続けた探究ワークシートについても、現在、業務委託契約を結んでいる企業の方々から多くの示唆を得て、洗練されたものになっている(その探究ワークシートを含めたコンテンツはその企業の商品として今度の4月にリリースされるようである)。契約の関係上、企業の名は明かすことはできないが、本当に感謝である。
そういった探究に関する試行錯誤の成果を、私自身もしっかりと形にしていきたいと思い、このコラムのシリーズを始めるに至った。(このコラムは、これまでの投稿で出てきたアイデアや、「探究脳と共通テスト脳との繋がり」の考察などを含めた継承・発展的なコラムであり、これまでの全ての試行錯誤が土台となっている)

【1】タイトルに込めた思い

タイトルは「哲探進歩」で「てったんしんぽ」と読む。「哲学」「探究」「進路」「散歩」の4つの言葉から1文字ずつを選び、組み合わせた。

学習指導要領解説(文部科学省ホームページ)によれば、「探究のプロセス」は、<課題の設定><情報の収集><整理・分析><まとめ・表現>の「4つ」であり、<探究とは何か>を含め、それぞれ以下のような文章で説明が加えられている。
<課題設定>…疑問や関心に基づいて、自ら課題を見付ける」
<情報収集>…「具体的な問題について情報を収集する」
<整理・分析>…「その情報を整理・分析したり、知識や技能に結び付けたり、考えを出し合ったりしながら問題の解決に取り組む」
<まとめ・表現>…「明らかになった考えや意見などをまとめ・表現し、そこからまた新たな課題を見付け、更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく。」
<探究とは何か>…「要するに探究とは、物事の本質を自己との関わりで探り見極めようとする一連の知的営みのこと」

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引用・・・高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 総合的な探究の時間編

この「探究のプロセス」の4つは固定的に捉えられるものではなく、順序が入れ替わったり、どこかが重点的に行われたりする。
⇒⇒⇒この「探究のプロセス」によって考察を重ねるものなので、★『探究』★の文字はタイトルに不可欠なのである。

他にも、学習指導要領解説の中では、「日常生活や社会に目を向け、生徒自ら課題を設定する」ことを出発点にして、「探究の過程(プロセス)を経由」し、「自らの考えや課題が新たに更新され、探究の過程(プロセス)が繰り返される」と書かれている。
⇒⇒⇒この「日常生活や社会に目を向け」る部分を、私は★『散歩』★と呼びたい。通常、散歩とは町や公園など外のどこかをぶらつくことであるが、私が用いた「散歩」は古代ギリシア語に起源をもつ「peripatetic」を想定している。これは「逍遙する」「散歩する」「散策する」などと訳され、アテネのリュケイオンという学園で散歩しながら思索にふけったアリストテレスの学派「ペリパトス派(逍遥学派)」のようなイメージである。そしてこの★『散歩』★はリアルな散歩だけでなく、バーチャルな散歩(ネット上、本の中、脳内の思索)も含めたもので、「ペリパトス派(逍遥学派)」の活動そのものなのである。だから、この★『散歩』★もタイトルに含める必然性がある。

また、「(高等学校の「総合的な探究の時間」では)各教科・科目等の特質に応じた『見方・考え方』を総合的・統合的に働かせることに加えて、自己の在り方生き方に照らし、自己キャリア形成の方向性と関連付けながら『見方・考え方』を組み合わせて統合させ、働かせながら、自ら問いを見いだし探究する力を育成するようにした」とある。ここで述べられているとおり、探究活動は考察を重ねて問題・課題を解決するだけで終わるものではなく、探究活動の経験を「自己キャリア形成の方向性」に結びつけるものとされている。
⇒⇒⇒つまり、探究活動は★『進路』★と繋がるものなので、こちらもタイトルには欠かせない。

これらの活動を有効なものにするためには、現代に生きる自分の力だけでは限界がある。そこで、助けとなるのが「先哲の思想」である。先哲の思想は、人類が長い歴史の中で蓄積してきた「知の財産、理性の財産」である。これを現代の私たちが活用しないことは宝の持ち腐れである。
⇒⇒⇒この★『哲学』★を最大限に活用することによって、探究活動は広がりと深まりを持つことになる。だから、★『哲学』★の文字もタイトルには欠かせない。

よって、探究活動に欠かせない「哲学」「探究」「進路」「散歩」の4つの言葉を組み合わせた「哲探進歩/てったんしんぽ」がタイトルになったわけである。つまり、「哲学の力を借りて探究しながら、進路に向かっていくための散歩」ということである。

【2】哲探進歩を色々な面から考えてイメージを膨らませる

①哲探進歩を「植物」に例えてみると…
「散歩」は、探究活動の始まりとなる「気づきの土台・地面」である。
「探究」は、課題の設定が「気づきの芽」、情報の収集が「(都合により非公開)」、整理・分析が「(都合により非公開)」、そしてまとめ・表現が「気づきの花」である。
「哲学」は、情報の収集とともに探究活動という植物がしっかり育つための「(都合により非公開)」である。
「進路」は、探究活動の経験によってこれからもっと調べたいこと・もっと取り組みたいことなどに繋がっていく栄養になるので「気づきの果実」である。

②哲探進歩を「時間軸」で考えてみると…
「散歩」は、様々な事象との出会い【現在】である。これは、リアルな散歩、バーチャルな散歩(ネット上、本の中、脳内の思索)で繋がるものであり、▲探究の前段階▲となる。

「哲学」は、普段から哲学に触れている部分は▲探究の前段階▲である。また、先哲の思想【過去】の中に飛び込み、結びつきそうな思想を探す部分は▲探究の本編▲の<情報の収集>となる。

「探究」は、▲探究の前段階▲を材料に、▲探究の本編▲として展開していくものである。
 (A)探究のプロセスの一つ目<課題の設定>で、様々な事象との出会い【現在】の中から「不思議・不足(!)、疑問(?)」といった気づき【現在】を発掘する。そして、仮説【おぼろげな未来】で気づきを整える。
 (B)探究プロセスの二つ目<情報の収集>で、気づき【現在】と仮説【おぼろげな未来】をはっきりさせる、そして類似の事象【現在】も調べるが、その際、自分の記憶【過去】も使う。
 (C)探究プロセスの三つ目<整理・分析>で、気づき【現在】+先哲の思想【過去】と類似の事象【現在】を結びつけて、様々な思考の枠組みを利用しながら考察を重ねる。
 (D)探究プロセスの四つ目<まとめ・表現>で、考察結果を「見える化(言語化…主に文章を用いるので左脳的情報、または客観化…主に図表を用いるので右脳的情報)」することで、他者に向けて説得性のあるメッセージを創設する【未来へのきっかけ:理念】。

「進路」は、探究活動の経験を元にして【未来「を」想像/未来「の」創造】をしていく。これはいわば▲探究の開拓地▲である。つまり、探究活動の経験をこれからもっと広げたい・深めたいことに繋げていく【未来への動き出し:実践】(調べ始めるのも実践の一部である)。

③哲探進歩を「ロジカルシンキング」で考えてみると…
  (都合により非公開)

④哲探進歩を「地学の観点」で考えてみると…
  (都合により非公開)


【3】哲探進歩の構成と考察例

「散歩」⇒「探究+哲学」⇒「進路」の順序で進める。
「散歩」で気づきを得て、「探究+哲学」で考察を重ね、「進路」で学問・仕事と結びつける。
そして、哲探進歩の概要をスライドにまとめる。

(考察例として、以前の「カステラ/かすてら」の記事を用いる)
「散歩…気づきの土台・地面」
私が頻繁に利用するセブンイレブンではこれまで4種類の「カステラ/かすてら」の存在を確認している。その4種類とは、「しっとり上品な味わいカステラ」、「スプーンで食べるふわふわかすてら」、「ふんわり玉子の風味がかおるしっとりかすていら」、「バターカステラ」である。

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「探究<課題の設定>…気づきの芽」
4種類の商品によって、ひらがなやカタカナの表記に違いがあるのは「なぜ(❓)」だろう。

「探究<情報の収集>…(都合により非公開)
南蛮文化とか南蛮由来とか言われて何をイメージするだろうか。鉄砲、地球儀、時計、メガネ、オルガン、ヴィオラ、カルタ、タバコ、金平糖、油絵など色々ある。その中でも、長崎の地と強い結びつきを持っているのが南蛮菓子の代表格である「カステラ」だろう。カステラは室町末期にポルトガル人によって長崎に伝えられたとされている。ポルトガルには昔からパン・デ・ロー(pão de ló)と呼ばれる焼き菓子があり、それがカステラの原型に近い。また名称の「カステラ」は漢字では加須底羅または家主貞良と表記され「かすていら」と呼ばれていたようだ。それはイベリア半島西部のポルトガル王国とは別にイベリア半島中部にあったカスティーリャ王国のパン(またはお菓子)を意味する「pão de Castela/Castilla(パン・デ・カスティーリャ)」のポルトガル語発音に由来するらしい。カスティーリャ王国は1479年にイベリア半島東部のアラゴン王国と統合(同君連合を形成)し、スペイン王国になっていて、このスペイン王国とポルトガル王国は王族の婚姻関係を結ぶ風習があり、ポルトガル宮廷料理人が書いたレシピ本『料理法』の中にカステラと同じ製法のお菓子の記述があったようで、両国の食文化の交流が名称の由来にも関係していると考えられる。

「哲学…(都合により非公開)
「カステラ/かすてら」の表記と和菓子か洋菓子かということとの関係性には、和菓子とは何か、洋菓子とは何かが関係する。それは「〇〇らしさ」というアイデンティティの問題に関わってくると考えられる。このアイデンティティという概念は、ドイツ生まれでアメリカに移り住んだ精神分析学者エリクソンが提唱したものである。

「探究<整理・分析>…(都合により非公開)
こうして西洋から伝来したカステラだが、時々「かすてら」と平仮名表記されることがある。マリトッツォ、モンブラン、ティラミスなど西洋のお菓子はカタカナ表記されるのが一般的で、これらの平仮名表記は見かけない。しかしカステラはカタカナ表記も平仮名表記も同じくらい見かける。この違いは日本に伝わってきたタイミングが影響している。一般的に和菓子は漢字または平仮名表記、洋菓子はカタカナ表記であるが、この和菓子と洋菓子の区別は、明治になってから伝わったかどうかで考えられている。そして明治以前に伝わった「カステラ/かすてら」は、西洋からもたらされた異国のお菓子という歴史的事実を背負いながら、和菓子洋菓子の区別が生まれた時期には既に日本に伝わっていたため、便宜上、和菓子の一つになっているのである。だから明治を基準にした和菓子の概念で捉えれば「かすてら」となる。しかし日本発祥のお菓子かどうかを基準とした和菓子の概念で捉えれば、それに該当しない点から「カステラ」となるのだろう。つまり「カステラ/かすてら」は、「洋菓子ではないが南蛮菓子である和菓子」という「おかしなお菓子」なのである。さて、4種類の「カステラ/かすてら」にドトールの商品を加え、今回はヴェン図で考えてみることにした。

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「探究<まとめ・表現>…気づきの花」
ヴェン図から分かることは(もちろんサンプルが少ないので通俗的帰納法に過ぎないが)、カタカナ表記は、文字のカクカクとした力強さやインパクトが感じられ、「カステラ」が主役になっている。それはonly oneという印象である。これに対して平仮名表記は、文字に柔らかさがあるため、他の言葉の「しっとり」や「ふわふわ」と自然に混ざり合い、全体が作り出す優しさを構成する部分として協調性を感じる。それはone of themという印象である。明治以来の区分上、「チーム和菓子」の一員と考えるならば「和を以て貴しと為す」の精神に根差した後者の表記がふさわしいかもしれない。ただ、純粋に日本発祥でないことで、実際には「チーム和菓子」の一員と見做されていないことに対する反発の気持ちから、アウトローにカタカナとして自己主張したくなるのも分からなくもない。そこには「カステラ/かすてら」にしか分からない複雑な心境があるのだろう。これは国籍などのアイデンティティの問題とパラレルな関係ではないだろうか。

「進路…気づきの果実」
今回の考察によって、文字の形によって印象が変わること、その印象を活用して商品の文字が考えられていることが明らかになった。ここから、学問の一例として「デザイン学やデザイン工学」など、仕事の一例として「パッケージデザイナー」などが連想される。

今回の哲探進歩は以下のスライドに集約される。
今後も、様々な散歩によって「哲探進歩」を進めていきたい。

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