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▼哲頭 ⇔ 綴美▲(2枚目とフィボナッチ)

(哲学を美で表現するとしたら?美を哲学で解釈するとしたら?そんな思いをコラムにしたくなった。自分の作品も含めた、哲学と美の関係を探究する試み。)

今日の1枚は、レオナルド・ダ・ヴィンチの『洗礼者ヨハネ』である。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、15世紀から16世紀に活躍したルネサンス期の人物で、芸術・科学・建築などあらゆる分野で才能を発揮した。そのため彼は「万能人(普遍人)」と呼ばれている。彼は遠近法を取り入れたり、意図的に錯覚を用いたりと、科学的なアプローチで絵画を描く試みをしている。

そのような科学的なアプローチの代表的なものの一つが「黄金比」である。黄金比とは、縦と横の比率が1:1.618であるもので、最も美しい比率と考えられている。この黄金比に基づいた長方形は、短い方の辺の長さで表される正方形(それが長方形内に作ることができる最大の正方形)を取り除くと、残された部分がまた長方形となるが、その縦と横の比率は再び黄金比になるのである。そして、もう一度その長方形内に作ることができる最大の正方形を除いたとき、残された部分の長方形がまたもや黄金比になっていて、永遠に黄金比の長方形が作られていくのである。

こうして出来上がる最大の正方形の連続について見たとき、中央にある最も小さな正方形の1辺の長さを1と考えると、1辺の長さの変化は1、 1、 2、 3、 5、 8、 13、 21、 34というような数字の並びになる。この数字の並びは、前の数字に次の数字を足すと、その先の数字になるという法則性を持っており、このような数列を発見したのは、13世紀頃にイタリアで活躍した数学者レオナルド・フィボナッチであった。そのためこの黄金比と密接な関係を持つ数列は「フィボナッチ数列」と呼ばれている。

そして、黄金比とフィボナッチ数列に関わる最大の正方形の中に四分の一円を描いていくと、螺旋(渦巻線)ができあがる。この螺旋(渦巻線)は自然界における無理のない曲線の変化そのものであり、オウムガイの殻、ひまわりの種の配列、海面の渦潮などではっきりと観察することができる。この黄金比に基づいて描かれる無理のない曲線から私たちは「自然界の調和美」を感じることができるわけである。この螺旋(渦巻線)は「対数螺旋(等角螺旋、ベルヌーイ螺旋)」とも呼ばれる。

そして『洗礼者ヨハネ』が魅力的に映るのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの写実的な表現だけでなく、ヨハネの肩の付け根から指先にかけての曲線が、対数螺旋になっているからと考えられている。このようにレオナルド・ダ・ヴィンチの作品は、表面上の写実的な表現の豊かさに、自然界の調和美が加わり、大いなる魅力が生み出されているのである。さらに、彼はあらゆるものの内部の仕組みを知ることにこだわり、積極的に解剖を行っているので、内部構造の裏付けも加わっている。

ヨハネ1

ヨハネ2

つまり『洗礼者ヨハネ』の魅力は、写実と調和美と内部構造の見事な掛け合わせによるものなのである。

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