★我楽多だらけの製哲書(65)★～沖縄料理とレヴィ=ストロース～
（2016年の出来事の回想である）
沖縄に来てようやく一週間が経ちました。新しい学校、新しい街、新しい人間関係、新しい家などあらゆることが新しく、それを十分に受け止め切れていない感は否めないですが、とにかくまずは初心に帰り、今までの教員経験にあぐらをかかずに積極的に動いてみようと思います。それをしなければ、私はもう成長できず、教員としては限界に達し、あとはレベルダウンしていくだけになってしまいます。
そんな激動の一週間でしたが、年度が始まったばかりで皆さんも忙しいはずなのに、教科や部署で歓迎会をしてもらい、ありがたいことだと思います。先生方の名字を見ていると、一瞬では読めないものや、読めるもののこれまであまり聞いたことはないものがあり、多くの先生が沖縄出身であることが分かりました。
それだけに歓迎会とは言いながらも、盛り上がる話題は沖縄関連のことが大半を占め、それについて行けないアウェイ感もありました。ただ、物事は捉えようだと思います。私は沖縄の話題が大半を占めているならば、私以外の人は沖縄の話題を当たり前のこととしている可能性が高く、沖縄の話題を新鮮なものとして受け取れるのは私しかいないということで、「沖縄に関して無知であること」を皆に珍しく思ってもらえるのも自分しかいないわけです。そのような環境を利用して、皆に沖縄のことを積極的に教えてもらうことにしました。自分たちにとっては当たり前のことを珍しく聞く私に、皆さんは親切にも色々と教えてくれました。
歓迎会のお店のメニューで沖縄ならではの料理があり、もともと食に関心のない私は、それらのメニューをほとんど食べたことがなかったので、皆さんは矢継ぎ早に私に「食における未知との遭遇」の体験をさせてくれたのでした。
私が初めて文明に接した未開人のごとく、次々に注文されるメニューを珍しそうに食べる様子が面白かったのでしょう、「ソーメンチャンプルー」やら「島豆腐」やら「海ぶどう」やら、一気に色々な食べ物を体験させてもらいました。
このような歓迎会において、新しく赴任した人に色々教える側に立つことはこれまで私も経験してきたことではあります。そして、自分が知っていることを知らない人に教えるときには、ある種の優越感が生まれることも経験しています。
フランスの文化人類学者レヴィ=ストロースは、未開社会の文化が遅れた野蛮なものであり、一方で西洋の文化が進んでいて優れていると序列化することは偏見で誤りであると主張しました。彼は、それぞれの文化には独自性があり、絶対的な優劣関係はそこにはないとする「文化相対主義」を展開しました。彼によれば、未開社会の思考は具体的な事物を用いる思考で、それを「野生の思考」と名づけています。一方、西洋の文明社会の思考は抽象的概念を用いる思考で、彼は「文明の思考（栽培の思考）」と名づけました。どちらの社会も表面に現われる姿は違いますが、物事を分類したり体系化したりする手法が異なるだけで、内実としては共通した構造が存在していることになります。
ある視点に固執して物事の優劣を絶対視しようとすると、そこには当然のことながら「偏見」が生まれてしまいます。私たちに必要なことは、多様な視点から物事を見つめ、評価・判断していくことだと思います。
さて、私自身の問題に話を戻すと、教員というものは当然のことながら子供たちに何かを教えるという立場であり、この優越感にどっぷりと浸かっている存在です。さらに、新たに赴任してくる人がいると、同じ大人に対してもそのような優越感を覚えることがあります。
しかし、この優越感は存在としての優劣関係を意味するものではありません。特に大人同士の場合には、自分の方がよく知っている話題もあれば、逆に相手の方がよく知っている話題もあり、一方が絶対的に優位であるということではないのです。例えば、今回の歓迎会の場合は、「沖縄の話題」という条件では他の先生方がよく知っているというだけであり、あくまでも相対的な優越性であると言えます。それを証明するかのように、シンガポールの話題になったときは、私だけがシンガポールのことをよく知っているということで、その条件下での優越性が私の側にありましたが、やはりそれは相対的なものにすぎないわけです。
それでも、皆がよく知らないシンガポールの話題を話しているときには、悪い気にならないのは優越感に浸っているからなのでしょう。
しかしこの優越感に知らず知らずのうちに毒されてしまうような存在にはなりたくないと常々思っています。今回の職場の変更は、優越感中毒を回避するための貴重な機会だと思うので、再び謙虚さや初心、積極的に他者から学ぶ姿勢などを取り戻し、さらなる成長につなげていきたいと思います。
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