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言葉の覚え書き

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2021年3月の記事一覧

「日本書記」?

ネット書店や図書館の書誌情報でもよく見られる誤りです。「日本書記」ではなく、いとへんの「日本書紀」。 『古事記』と『日本書紀』とを合わせて「記紀」と呼ばれることもあります。

読めますか?──「博士」

一般的には「はかせ」と読まれることが多いかと思いますが、この場合は物知り、博識な人のことを指します。 昆虫博士(こんちゅうはかせ) 漢字博士(かんじはかせ) 学位を指す場合は、専らハクシと読みます。 文学博士(ぶんがくはくし) 博士課程(はくしかてい) 博士号(はくしごう)

ゼロかレイか

数字の「0」は何と読むでしょうか。 「交通事故死ゼロ」「海抜ゼロメートル地帯」のように、特定のフレーズでゼロと読む場合もありますが、基本はレイ(零)です。理由は至って単純で、レイ(零)は日本語の漢字読み、ゼロ(zero)は英語だからです。 天気予報の降水確率で「0%」をゼロパーセントではなくレイパーセントと読むのは、四捨五入で切り捨てられた0以上5パーセント未満の値を「わずかな」を意味する「零(れい)」で表現しているからだ、という説をテレビやウェブ上で見かけますが、それだ

「期待に答える」?

「期待にこたえる」の「こたえる」は、相応の実績を示すなどの行動、すなわち反応を指すので、「応える」と書きます。 「答える」は、言葉を返す、返事をするなどの意味に使います。

「斜に構える」

「斜に構える」は剣道の「中段の構え」に由来する言葉です。「中段の構え」とは、写真のように剣を相手の方に斜めに向ける構え。攻撃と防禦いずれの動きにも移行できる剣道の基本姿勢です。ここから、しっかりと身構える、改まった態度をとることを「斜に構える」というようになりました。なお、読み方は「シャにかまえる」です。 俗に、物事に正対せず、まともに取り合わない意味にも使われますが、これは「斜に構える」という字面から、横目で見ながら蔑む姿を想像したことによる誤用と思われます。

「煮え湯を飲まされる」

白湯(さゆ)をどうぞ、と差し出されて飲んでみたら、煮えたぎるお湯だった──そんな、嫁にいびられる姑のような光景から、信頼していた者に裏切られるという意味を示す慣用句です。 2011(平成23)年度の「国語に関する世論調査」では、「煮え湯を飲まされる」の意味を本来の「信頼していた者から裏切られる」で使う人が64.3パーセントと、「敵からひどい目に遭わされる」の23.9パーセントを上回りましたが、16―19歳の年齢層では前者が41.0パーセント、後者が37.2パーセントと拮抗す

「破天荒」

2008年度の「国語に関する世論調査」によると、「破天荒」の意味を「豪快で大胆な様子」と回答した人の割合が64.2パーセント、「だれも成し得なかったことをすること」が16.9パーセントでした。 「天荒」とは未開の土地のこと。唐代に科挙に合格者がまだいなかった荊州(現在の湖北省)から、初めて及第した人物が現れたことを「天荒を破った」と言った故事から、「破天荒」は前例のない誰もなし得なかったことをするという意味になりました。

「きらぼし」?

もともと「きらぼし」という言葉はなく、「綺羅(きら)、星(ほし)のごとし」の「綺羅」と「星」を一語と誤認したことからできた語です。 「綺羅(きら)」とは、綾織りの絹(綺)と薄い絹布(羅)のことで、美しい衣服のたとえです。美しい衣服が星のようにたくさんあることから、優れた人が集まる様子を「綺羅、星のごとし」というようになりました。

「砂を嚙むよう」

口当たりが悪いことから、無味乾燥でつまらないという意味です。 2018年度の「国語に関する世論調査」によると、「悔しくてたまらない様子」と答えた人の割合が56.9パーセントと、本来の意味の「無味乾燥でつまらない様子」の32.1パーセントを上回る結果でした。

「存亡の危機」

2016年度の「国語に関する世論調査」では、「存亡の機」を使うという人が6.6パーセント、「存亡の危機」を使うという人が83.0パーセントでした。 出典は『戦国策』で、次の一文に由来します。 計者事之本也。聽者存亡之機也。 計は事の本なり。聽は存亡の機なり。 (『戦国策』「秦策二」) 生きるか死ぬかのタイミングなので、「存亡の機」というわけです。 生存が危ぶまれることを示したいのなら、「存亡の危機」よりも「存続の危機」の方がよさそうですが、「存亡」を帯説(たいせつ。

「知恵熱」

「知恵(智慧)熱」とは、生後間もない乳児にみられる発熱のこと。「知恵がつきはじめる時に起こると俗に考えた」(『日本国語大辞典』精選版)ことからこう呼ばれます。 2016年度の「国語に関する世論調査」によると、「知恵熱」の意味として、「乳幼児期に突然起こることのある発熱 」と回答した人の割合は45.6パーセント、「深く考えたり頭を使ったりした後の発熱」と回答した人の割合は40.2パーセントでした。

「ぞっとしない」

「ぞっとする」といえば、身の毛がよだつ、恐怖を感ずるという意味。では、「ぞっとしない」は怖くないという意味でしょうか。 2016年度の「国語に関する世論調査」によると、「ぞっとしない」の意味として、「恐ろしくない」と回答した人の割合は56.1パーセントと過半数でした。 しかしながら、「ぞっと」は、怖いという意味以外に、「美しいものに出あったりして、強い感動が身内を走り抜けるさま」(『日本国語大辞典』精選版)を意味する語でもあります。「ぞっとしない」はそれを否定した言い方で

借金を「なし崩し」にする

2017年度の「国語に関する世論調査」によると、「なし崩し」の意味を「なかったことにすること」と回答した人の割合は65.6パーセント、「少しずつ返していくこと」は19.5パーセントという結果でした。 「なし崩し」の「なし」は、「無し」ではなく「済し」。「済す」とは、「返済」という熟語もあるとおり、借りた物を返すという意味。したがって、「少しずつ返していく」が正解です。

「御の字」

2018年の「国語に関する世論調査」では、「御(おん)の字」の意味として、「一応、納得できる」と答えた人の割合が49.9パーセント、「大いに有り難い」と答えた人の割合が36.6パーセントでした。 「御(おん)」は、「御身(おんみ)」「御方々(おんかたがた)」のように尊敬を表す接頭辞であることから、「御」の字を付けるほど鄭重に扱うべき、というのが「御の字」の意味。したがって、「大いに有り難い」が正解です。