【全文無料】高校野球ファンに何としても伝えたい、都市対抗野球の魅力
※ヘッダー画像の写真は東京新聞様から引用
初めまして。
別の記事を読んでいただいた方は、いつもありがとうございます。
日本各地で毎日のように行われている野球。
プロ野球ももうすぐ交流戦が始まります。
高校野球は春の都道府県大会が終了し、各地区の大会が行われている頃でしょう。
日本の野球人気はプロ野球と高校野球に大きく偏っています。
もちろんプロ野球はエンターテイメントであり、ファンを楽しませる野球のため当然ですが、高校野球は肩書き上はビジネス目的ではない、部活動の全国大会になります(実際のところ甲子園はたくさんの大人の利権絡みの大会ですが、その話は別の機会に)。
高校野球の魅力は何と言っても「直向きに夢に向かって努力し、全力で突き進む青春の姿」「部活動引退を賭けて戦う、儚くも美しい一発勝負のトーナメント」「そんな選手たちを華々しく彩り、後押しする大応援団」と言ったところでしょうか。数多くの魅力があることはよく知られていると思います。
そんな高校野球や甲子園で活躍した選手たちが、さらに技術を高めて、さらなる大応援団を引き連れて、会社の命運まで背負って戦っている大会があるのをご存じでしょうか?
そう、それこそが「都市対抗野球大会」です。
都市対抗野球は本当に本当に見ている人を熱くさせる、全力プレーの素晴らしい野球が見られる大会です。
しかし高校野球と比べると、あまりにも注目度が低いです。
高校野球で活躍した選手しかいないのに・・・。
ちょうど本日から各地区の二次予選といって、クラブチームの一次予選を突破した強豪クラブチームと企業チームが東京ドームを目指す熱い戦いが始まるところです。
今日はこの投稿を通して一人でも多くの方に、「都市対抗野球か・・・。見たことなかったけど面白そう。今年は見に行ってみようかな?」と思っていただけるように、頑張って書いていきたいと思います。
都市対抗野球の魅力①「プロ野球2軍以上の野球技術」
「ドラフト5位は社会人か!即戦力として期待だな!」
プロ野球ファンならこんな会話を聞いたことがあるでしょう。
プロ野球でも即戦力としての活躍が期待されてドラフト指名される選手がゴロゴロいる。これは紛れもない事実です。
ドラフト指名されるアマチュアの選手は本当に一握りで、ドラフト指名には運も絡んできます。
ドラフトが近くなってきた時の怪我や、高校野球の最後の夏・大学野球の4年生の春リーグを怪我で欠場してしまうと、評価を大きく落としてしまいます。
ドラフトで指名する選手は、そのチームが補強したいと考えているポジションや年齢層の選手を指名します。
つまり「普通の年なら指名される選手でも、需要にあっていなければ指名されない事がある」という事です。
さらには高校生の場合、「大学野球で実力を付けてからプロを目指したい」と考える選手もいます。この場合プロ側が指名したいと考えていても、プロ志望届を出さなければ指名する事ができないため、自動的に進路はアマチュア選手になります。
このように実力のある選手がプロ野球に進まなかった場合、次に目指すのは「野球で1000万円を超えるような給料で働ける可能性のある社会人野球の選手」となります。
入社後はプロを目指すにしても、都市対抗野球の優勝を目指すにしても、「甲子園を経験した猛者が集まって練習を重ねた選手が一年の集大成として都市対抗野球に挑む」ことになります。
しかもプロ野球の143試合あるリーグ戦と違って、予選からトーナメント形式の大会となります。
敗者復活戦などがあったとしても、「一敗が非常に重くなる短期決戦」になるのです。
これだけレベルの高い選手たちが一瞬にかけて一試合に挑むのですから、それはもう高いレベルの野球が展開されます。
この激戦で鍛え上げられた選手は、ルーキーイヤーからゴールデングラブを獲得した埼玉西武ライオンズの源田選手や、ルーキートップの37セーブを記録した広島東洋カープの栗林選手のように、「プロ野球チームに入っても即トップクラスで活躍する実力を持っている」ということになるのです。
中には「プロ側が欲しい素晴らしい選手だけど、都市対抗野球に出続ける選手」すらいます。
先日東京ヤクルトスワローズの松本健吾投手が「史上初の初登板で二桁奪三振と無四死球の初完封勝利」という異次元の記録を達成しました。
彼は2023年は豊田市・トヨタ自動車の社員として第94回都市対抗野球大会に出場し、チームを優勝に導く大活躍を収めています。
しかし驚くべきなのは「彼は先発投手としてはトヨタ自動車の中では二番手だった」ということです。
その松本投手より素晴らしい投球をするエースが、嘉陽宗一郎投手です。
嘉陽投手はドラフト会議での巡り合わせやコンディションが合わなかったことが理由で、トヨタ自動車で25歳までドラフト指名を受けませんでした。
そこでプロ野球の夢を諦め、現在はプロを志していないのですが、28歳の今、「プロ野球で1年間ローテーションを守ったら確実に二桁勝てる」と言われています。
それでも彼はトヨタ自動車のために腕を振ります。それだけの魅力が、トヨタ自動車と都市対抗野球大会にはあるということです。
都市対抗野球の魅力②「補強選手制度」
「日立製作所さんの佐々木くんは素晴らしい。プロ野球でも即活躍できる選手だ。ぜひうちのチームに来て、都市対抗野球で暴れてほしい。」
都市対抗野球にはいくつか他の野球大会には無い独自ルールがあります。
その中でも大会の野球の質の向上に一役買い、負けたチームの素晴らしい選手にもスポットライトが当たる素晴らしい制度として「補強選手制度」があります。
簡単にいえば「地区予選で負けた同じ地区のチームから、最大3人までチームに加えて大会に出場できる制度」になります。
1950年にプロ野球が2リーグ制となったため大量の選手が社会人野球部からプロ野球に移籍し選手が不足する事態になりました。
それを受けて、全国大会に出場するチームの戦力を補強するため、「各地区で戦力を補強した強いチーム同士で大会を盛り上げるために運用された制度」になります。
さらに詳細なルールとしては、各地区の第一代表(一度も負けずに代表決定したチーム)から順番に、最大3名の補強選手を選択します。そのため一つの地区で複数のチームが本戦に出場する場合、必ず代表が順番に決まるような敗者復活を用いた複雑な予選トーナメントになっています。
つまり同じ地区から出場するチームが複数ある場合は、「第一代表からその地区の補強選手の中で一番素晴らしい選手を獲得し、優勝を狙える戦力になる」ということですね。
昨年の北関東予選では、強豪である日立市・日立製作所がまさかの予選敗退となりました。
そのため第一代表となった鹿嶋市・日本製鉄鹿島は、2023年に読売ジャイアンツからドラフト3位指名を受けた佐々木俊輔選手ら素晴らしい選手を補強選手として獲得して大会に出場しています。
前年度優勝チームは次回大会に推薦出場となるが、補強選手を選択できない
また他のアマチュア野球の大会には無い特徴として、「前年度優勝のチームは優勝旗である黒獅子旗と同じデザインの刺繍をして、予選免除で推薦出場できる」という制度があります。
そして開会式で黒獅子旗を返還し、開幕戦を戦うところまで決定します。
しかしこの際に「補強選手は選択できない」というデメリットも発生します。「当然ですよね。最強の黒獅子チームなのですから。補強なんてしなくても優勝できますよね。」ということです。笑
実際のところ、補強選手がいないのは他の補強選手を獲得したチームと戦う上で戦力的に厳しいだけでなく、「予選で手に汗握る戦いを経験せずに本番を迎えて、調整がうまくできず早期に敗退する」ということもよくあります。
都市対抗野球の魅力③「地域や企業から駆けつける大応援団の迫力ある演奏が音楽ホールで聴ける」
野球部が野球をするのが仕事であるように、応援が仕事の他部署「応援団もまた仕事として盛大に盛り上げる」
都市対抗野球の魅力として欠かせないのが、「大音量・大迫力・統一感のある応援」になります。
甲子園も吹奏楽部やチアリーダーによる大応援合戦が繰り広げられるのはご存知かと思いますが、応援も野球同様に大人になってより洗練されて帰ってきます。
2017年に当時のiPhoneで撮影した動画ですが・・・迫力は伝わると思います。これ屋外ですからね。笑
予選は「どれだけ予算がかかろうが突破しなければならないもの」
各地区の予選から、それはもう大赤字を承知の素晴らしい応援団による大応援が行われます。
応援に使う統一されたグッズも後援会やチーム応援席に入っていただくお客さんに無料で配布しています。
利益を出すための大会では無いため、それはもう採算度外視です。笑
それでもいいんです。野球部に勝って東京ドームへ連れて行って欲しいのですから。
そして選手ももちろんそれは承知です。「会社として数億円規模で予算を突っ込んだ福利厚生・宣伝としての一大事業の成功が、野球部の勝利にかかっている」のです。
もし会社が不景気になれば、野球部の存在自体が経営者会議や株主総会で問題視されるでしょう。
この色々な大人の事情もあり、「絶対に負けねぇ!!」と試合を戦う地区予選は、高校野球ファンからしたら堪らない「正真正銘大人の甲子園」と言った温度感の大会になるわけです。
特に地区予選の「最終枠を決める代表決定戦は、ぜひ全国の野球ファンに見ていただきたい」と思っています。
一昨年の第93回都市対抗野球北関東予選の第二代表決定戦。
前日に敗者復活戦で崖っぷちから代表決定戦に勝ち上がった太田市・SUBARU。この時3年ぶりの東京ドームがかかっていました。
対するは前日に第一代表決定戦で日立市・日立製作所の胴上げを見た鹿嶋市・日本製鉄鹿島。最後は大津亮介(現福岡ソフトバンクホークス)が抑えるシーンです。
なんとか塁に出ろ!と叫ぶSUBARUの選手。勝って大泣きする日本製鉄鹿島の選手。
勝って涙。負けて涙。そこには高校野球の県大会決勝がありますから。
本戦出場を彩るオトナ・シード「特定シード権」
都市対抗野球独自の制度としてもう一つ面白い制度を紹介します。「金でシードを買うことができる」というものです。笑
これ本当に面白いですよね笑
プロ野球よりビジネス感がある。笑
具体的に詳細を話すと
・一回戦で10,000人(以前は15,000人)を集客できるチームは事前にチケットを購入する(1000万円以上かかります)ことで特定シードとなる
・特定シードは基本初戦で当たらないように忖度される
・特定シードは試合の日時を指定できる(集客しやすい日を会社で決めるため)
と言ったものです。これは高校野球ファンからすると「ハァ!?全然フェアじゃねえ!!」と思うかもしれません。
ただ考えてみてください。初戦から優勝候補が当たってしまったら・・・、大会は盛り上がらなくなりますよね?「初戦からこことここがぶつかるのは勿体無い!!」と思うことはあると思います。
さらに言うと、都市対抗野球大会では「同一企業の別地区のチームがまとめて本戦に出場する」と言うことが結構あります。
JR東日本、JR東日本東北、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州、JR北海道硬式野球クラブ、JR盛岡、JR水戸、JR・・・
これらのチームが初戦から当たってしまうと、その企業としては「うちの会社が優勝したいのに、共食いしたら意味ないじゃないか!!」ってなりますよね。
このため「同一企業のチームも初戦では絶対当たらないように忖度する」ことになっています。
他にも同一地区のチーム(北関東地区のチーム同士とか)は初戦から当たらないようにする忖度も発生します。
このように色々考慮して、「一回戦は全試合が盛り上がるようにする」ことになっています。
二回戦以降は勝ったチーム同士で、それ以上の組み合わせの忖度はなく進んでいきます。
実際特定シードの試合は観客がたくさん入るため、応援団のボリュームも非常に大きくなります。ぜひ現地で体感していただけたらと思います。
昨年の決勝戦は、それはもう本当にすごい応援でした。応援だけ見たら「自分が見てきた野球の中でも一番すごい応援」でした。
決勝戦の組み合わせが「東海地区第一代表・豊田市・豊田自動車vs東海地区第二代表・浜松市・YAMAHA」という、東海地区予選からぶつかっている強豪同士の対決でした。
ただでさえ因縁の対決であるだけでなく、楽器メーカーとして応援では絶対に負けないYAMAHA。
さらにこの日はとある大学生の野球部を応援団の「補強選手」として連れてきていました。
※動画ファイルは50MBまでだった都合で途中からの再生になっています。音量設定にご注意ください。
本物はもっともっとすごいのですが、雰囲気が伝われば幸いです。
都市対抗野球の魅力④「さながらジェネリックWBC。人生を賭けた地域対抗の野球が見られる」
多くの人に支えられたクラブチーム
都市対抗野球は企業単体の持つチームだけが出場しているわけではありません。
クラブチームと言って、複数の企業で共同出資して運営しているチームもあります。
北関東で例を出すと、足利市・全足利クラブという強豪クラブがあります。
足利市役所や足利銀行など、足利市の企業に勤めながら、特定の練習日の午後や休日に野球場に集合して野球に取り組むクラブです。
運営資金も一社の持ち物ではないため、複数の企業で共同出資して運営しています。
「チケット収入もない野球チームだと分かっていて投資して運営している」ということです。
給料は企業チームと比べて薄給になりますし、練習環境もいいとは言えません。
それでも足利市を代表して企業チームに立ち向かう存在だからこそ、スポンサーや応援してくれる人がいるし、その人たちのために選手は都市対抗野球を目指して頑張っているのです。
ちなみに全足利クラブはクラブチームだけの大会「全日本クラブ選手権」で優勝候補に入る実力がありますし、どの選手も野球の強豪チームから集まっています。
初めて見たら、そのレベルの高さに驚くと思いますよ。
そして地域の方々が声を枯らして応援している姿に、とても感動していただけると思います。
休部・クラブとしての存続を乗り越えて企業チームに復活した企業「ミキハウス」
先ほど全足利クラブの話の際に「チケット収入もない野球チーム」というお話をしました。プロ野球と違い、興業としての野球ではないため当然です。
しかしプロレベルの選手・指導者・グラウンド・練習設備を購入・維持するとなると、「年間数億円の赤字」が数字上現れます。
そのため本業が不況で経営難の状況に陥った際には、どうしても「会社を存続するためには、経営上このまま野球部を運営するのは難しい」と判断せざるを得ない状況になります。
ところで皆さんは「ミキハウス」という名前を聞いたことがあるでしょうか?子育てを経験した方なら、ピンと来る方も多いのではないでしょうか。
小さい子ども向けの商品を数多く展開していますよね。
大阪府八尾市に本拠地を置く、現在3年連続で本戦に出場している強豪チームになります。
しかしミキハウスも2005年には「経営不振による廃部」を経験しています。
奇しくもその2005年に「他の企業チームに主力選手が移籍してから本戦に初出場を決める」のですが・・・。
その後2009年に経営状況が回復すると、地元のクラブチームに支援を行い、「ミキハウス」の名前をユニフォームに使用し、、、2018年についにそのクラブを解散し、ミキハウス硬式野球部として選手を雇用・単一企業チームとしての復活を果たします。
元プロ野球選手という肩書きは何の役にも立たない。最終学歴とともに、野球人生を賭けてグラウンドに立つ。
そんなミキハウスは、元読売ジャイアンツにドラフト1位で入団した「桜井俊貴」選手が昨年入団したことでも話題になりました。
桜井投手は一度読売ジャイアンツを戦力外となり、スカウトに転身します。
立命館大学から読売ジャイアンツに入団した桜井選手は、スカウトとしてたくさん都市対抗野球大会や社会人野球の試合を観戦しました。
そしてその中で、体はまだ動くのだから、この熱い戦いに戻りたいと感じ、選手として復帰することを決意します。
桜井投手のように、元プロの選手が社会人野球で活躍しているパターンはたくさんあります。
横浜DeNAベイスターズを退団後、千葉市・JFE東日本で都市対抗を制覇した須田幸太投手。東北楽天ゴールデンイーグルスを退団後、現在小山市栃木市・エイジェックで4番打者として活躍する内田靖人選手など・・・。
そんな選手たちはグラウンドに立つと、最終学歴で紹介されます。内田選手なら東北楽天ゴールデンイーグルスではなく「常総学院高校」とアナウンスされます。
非営利目的の野球大会であることも一つの理由ですが、元プロ野球選手だから楽に活躍できるなんて甘いレベルではないことも言えると思います。
元プロ野球選手であっても、社会人野球のグラウンドに立っているのはアマチュアの選手です。
一生懸命に打球を追いかけ、時には頭からベースに飛び込みます。負けた時にはぼろぼろ泣きます。
そんな「肩書を捨てて、チームのため、家族のため、会社のみんなのために、高校野球よりも必死に人生を賭けて戦う姿」には、見ている人を感動させる魅力があるのです。
いかがでしたでしょうか?
書いているうちに自分自身が過去に見た熱闘を思い出してしまい、ついつい記事の制作にも熱が入ってしまいました笑
都市対抗野球は再三申し上げているように、営利目的よりも地域振興・野球普及のための大会であるため、規模や面白さの割に世間から注目をあまり浴びていない大会になります。
しかし高校野球を愛するアマチュア野球ファンの皆さんなら、必ず一生の思い出に残るような素晴らしい試合を見られると思います。
本戦では試合は熱く、気温は涼しく、東京ドームで快適に(むしろ席によっては空調が寒いくらいに)試合が見られるのも高得点のポイントです笑
一人でも多くの方に、都市対抗野球の魅力が伝わればいいなと思っています。
そのため今回は無料で最後まで読めるように投稿させていただきました。
もし面白いと思っていただけたなら、クリエイターサポート、オススメなどして応援していただけると嬉しいです!
皆様からの評価が直接届いた時、もっと頑張るモチベーションを得られると思います。
もし良ければ野球選手や指導者の方向けに、ベンチの仕事をまとめた記事も作っているので、読んでいただけたら嬉しいです。
また現在「ドラフト会議を楽しむ方法」というタイトルで、長編記事を作成しました。
有料で公開していますが、本記事以上に気合を入れてまとめましたので、ぜひお読みいただけると嬉しいです!!
それではまた別の記事でお会いしましょう。
お疲れ様でした。
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