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【東大授業料値上げ開示請求・その2】決定期限が延長されました

こんにちは。東京大学情報公開室から封書が届き、開けてみたら「開示決定等の期限の延長について(通知)」でした。 前回「その1」は以下のリンクからどうぞ。 前説独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律では、開示か不開示の決定を「開示請求があった日から30日以内にしなければならない」としていますが、例外として、「事務処理上の困難その他正当な理由があるとき」は、「30日以内に限り延長することができる」ことになっています。つまり、つごう60日間が請求から決定までの期間になりま

    • 【東大授業料値上げ開示請求・その1】行った開示請求の内容を解説します

      6月下旬に、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律に基づいて、国立大学法人東京大学に対して14件の法人文書開示請求を行いました。内容はいずれも今般の授業料値上げ(の検討)に関するものです。開示請求に対する決定は、期限延長の手続きが取られない限りは30日以内に行われることになっていますので、まもなく結果が判明するはずですが、それに先立って、行った開示請求の内容とその解説を示します。 開示請求の手続きは、東京大学のウェブサイト「開示請求の方法」のページに載っている様式に

      • 国立大学の法人化以後における授業料などの変遷

        周知のとおり、2004年度に国立大学が法人化された際、授業料は文部科学省の定める「標準額」をベースに各大学が定めることになった。国立大学法人法第22条第3項に「国立大学及び次条の規定により国立大学に附属して設置される学校の授業料その他の費用に関し必要な事項は、文部科学省令で定める。」という規定があり、これに基づいて国立大学等の授業料その他の費用に関する省令が制定されている。 本稿では、この省令の制定時から現在までの改定の経過を辿り、国の制度がどう変遷してきたかを見ていく。個

        • 国立大学の運営費交付金制度とその変遷

          今日は知識編である。巷で飛び交う「運営費交付金は年1%削減されている」とか「授業料を値上げするとそのぶん運営費交付金が減らされる」といった命題の真偽を確認する。答えから書いてしまうと、前者は部分的に事実を含んでいるが実態はもっと複雑であり、後者は現時点において直ちに事実であるとは言えない。 なお、本当は運営費交付金だけでなく競争的研究費(の、特に間接経費)や施設整備費補助金などを含めて大学財政全体を議論しなければならないと思うが、ひとまず運営費交付金に絞って記述する。 (

        【東大授業料値上げ開示請求・その2】決定期限が延長されました

          大学における「自治」に関する概念の再整理の試み:意思決定への参画という観点での新たな実践に向けて

          本稿は、大学において「自治」と呼ばれうる概念や理念について、最近の大学をとりまく情勢の観点を取り入れつつあらためて検討を加え、再整理を試みるものである。 冒頭で結論を提示してしまえば、ひとくちに「自治」といっても以下の3つの概念に区分することができるのではないか、というのが本稿の中心的仮説である。 特定の政治的勢力ないし短期的・近視眼的政策からの大学自体の独立(大学の自治) 構成員それぞれによる大学の意思決定への参画とその仕組み(全構成員自治) 学生の自主的活動に対す

          大学における「自治」に関する概念の再整理の試み:意思決定への参画という観点での新たな実践に向けて

          東京大学「総長対話」という欺瞞

          報道をどこまで信頼するかという問題はあるが、それはひとまず措く(ちなみに4年前の事件では報道された情報が誤りだったというケースは結果としてほぼ見られなかったと記憶している)。 さて、授業料値上げの正式な決定が行われる場所は、この「科所長会議」ではない。科所長会議の規則的な意味での設置根拠は「部局長等との会議に関する総長覚書」だが、会議の内容はあくまで報告と意見交換・情報交換に限られており、審議や決定の権限は一切持っていない。また、この覚書はあくまで学内のもので、法令上に設置

          東京大学「総長対話」という欺瞞

          東京大学の授業料値上げに関する第2次声明

          竹麻呂です。筆者個人の責任で、以下の通り声明します。 主文東京大学の授業料値上げ問題に関し 授業料のあり方・国立大学の費用負担のあり方の議論を深めること 大学当局に対して考え方を明らかにするよう求めること 学生の意見を有効に表明するメカニズムを構築すること が望ましい状況であると分析します。 以下、解説です。 1. 授業料のあり方に関する議論の必要性これは以下の第1次声明でも表明した点です。 以下のnote投稿でも述べています。 重複をおそれずに記すと、営利

          東京大学の授業料値上げに関する第2次声明

          (東京大学における)学生の意見表明と自治会

          本稿は東京大学教養学部学生自治会による以下の声明に対して若干の解説を試み、あわせて私見を表明するものである。 全構成員自治の概念学生には、大学に対して意見を表明し、運営に参画する権利がある。その根拠は、大学が学問を追究する高等教育機関であって研究機関であり、学生もその共同体の一員だということに求められよう(「大学の自治とは | 自治会について | 東京大学教養学部学生自治会」なども参照)。これを「全構成員自治」という。東京大学においては、このことは歴史的に「東大確認書」で確

          (東京大学における)学生の意見表明と自治会

          東京大学の学費値上げ(の報道)について

          国立大学の学費の意義については既にTLでたくさん言及があるのでそちらに委ねることにして、ここでは、国立大学の費用はどのように賄われるべきかという観点から、東京大学執行部の立場を確認しておきたい。 東京大学の行動計画であるUTokyo Compassでは「3つの視点」を置いているが、それに先立ついわば0個目の視点として「自律的で創造的な大学活動のための経営力の確立」が挙げられている。そこには3つの目標が含められており、「『自律的で創造的な大学モデル』の構築」「持続可能な組織体

          東京大学の学費値上げ(の報道)について

          【緊急提言】東京大学教養学部は対面試験欠席に救済措置制度を設けよ

          本日、緊急事態宣言の発出を受け、東京大学の活動制限レベルがレベル1に引き上げられた†‡。本来、活動制限指針ではレベル1での授業は「オンライン講義のみ」とされている†が、今回は「対面での実施が必要な実験・実習・演習や定期試験については、十分な感染対策を前提に可」ということになっている。東京大学教養学部では、1月中旬に始まる定期試験について、東京大学の学部1・2年生全員が所属する前期課程については原則として対面で実施することになっており†、1月4日の時点で緊急事態宣言が発出される

          【緊急提言】東京大学教養学部は対面試験欠席に救済措置制度を設けよ

          東京大学教養学部(前期課程)「2020年度Sセメスター定期試験・レポート・小テストのガイドライン」をめぐる一論考

          この文章は、2020年6月25日に発表された東京大学教養学部(前期課程)「2020年度Sセメスター定期試験・レポート・小テストのガイドライン」について、前稿に引き続き、その問題点等について検討を行うものです。なお、教養学部前期課程の学生ではないという意味で私が当事者ではないことその他の前提は前稿と同じです。 前稿:東京大学教養学部(前期課程)「2020年度Sセメスター定期試験・レポート・小テストのガイドライン」の問題点 教養学部では、今回の試験に関して、「オンライン試験相

          東京大学教養学部(前期課程)「2020年度Sセメスター定期試験・レポート・小テストのガイドライン」をめぐる一論考

          東京大学教養学部(前期課程)「2020年度Sセメスター定期試験・レポート・小テストのガイドライン」の問題点

          この文章は、2020年6月25日に発表された東京大学教養学部(前期課程)「2020年度Sセメスター定期試験・レポート・小テストのガイドライン」について、私の個人的な立場から、考えうるであろう問題点を書き記すものです。 私自身は東京大学工学部の3年生であり現在は教養学部の所属ではなく、その意味では当事者ではないのですが、この3月まで教養学部の所属だったということ、学部は違えど同じ東京大学に所属する者として、という点から書いています。また、東京大学のとる方針は、一般に国内の他大

          東京大学教養学部(前期課程)「2020年度Sセメスター定期試験・レポート・小テストのガイドライン」の問題点