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【東大授業料値上げ開示請求・その2】決定期限が延長されました

こんにちは。東京大学情報公開室から封書が届き、開けてみたら「開示決定等の期限の延長について(通知)」でした。

前回「その1」は以下のリンクからどうぞ。


前説

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律では、開示か不開示の決定を「開示請求があった日から30日以内にしなければならない」としていますが、例外として、「事務処理上の困難その他正当な理由があるとき」は、「30日以内に限り延長することができる」ことになっています。つまり、つごう60日間が請求から決定までの期間になります。

(開示決定等の期限)
第十条 前条各項の決定(以下「開示決定等」という。)は、開示請求があった日から三十日以内にしなければならない。ただし、第四条第二項の規定により補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、当該期間に算入しない。
2 前項の規定にかかわらず、独立行政法人等は、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、同項に規定する期間を三十日以内に限り延長することができる。この場合において、独立行政法人等は、開示請求者に対し、遅滞なく、延長後の期間及び延長の理由を書面により通知しなければならない。

ちなみに、この条文に加えて「開示請求に係る法人文書が著しく大量であるため」に「六十日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合」には、間に合う分だけを開示して残りをさらに先延ばしするということも認められており、この場合には一律で何日ではなく「相当の期間」という形での延長ができますが、今回はこちらの規定(第11条、通称「特例延長」)は適用されていません。

本体

送られてきた通知を掲載します。

なお、筆者の本名、公印の印影、開示請求の日付や番号などは塗りつぶし処理をしました。

コメント

期限延長という制度は法律に決められているもので、開示請求をされた側に認められている処理なので、それ自体について特に何か言う筋合いはありません。

ところで、条文では「開示請求者に対し……延長後の期間及び延長の理由を書面により通知しなければならない」と定められています(強調は筆者)。ここで「延長の理由」をどの程度くわしく書くべきかは微妙な問題です。行政手続法に規定された行政処分に対する理由の提示については判例や学説の蓄積があって、基本的には、根拠条項を示すだけでは不十分で、どんな事実関係に対してその根拠規定が適用されたかなどをある程度具体的に示さなければならないとされています。で、開示・不開示の決定そのものは行政処分である一方、その手前の期限延長が行政手続法上の「処分」に該当するかどうかというとよく分からず、筆者は定義からすると該当するとは言えないのではないかと思います(制度運用の実務的な慣行からは、少なくとも該当するという解釈の根拠となるようなものはないように見えます)。ということは直接的には行政手続法の解釈がそのまま今回に当てはまるとは限らないのですが、一方で、行政手続法においては理由を示すべき趣旨の一つに行政の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制することがあると考えられているところ、この点については期限延長についても妥当する部分があると考えます。

そして、そもそも延長ができるのは「事務処理上の困難その他正当な理由があるとき」という条件が付いているのですから、この規定に基づいた処理を行う以上は、少なくとも延長の条件に該当していることを示すのが求められていると考えても無理はないでしょう。このあたりを踏まえて、理由としては形式的な文言が記載されているだけでは不十分で、ある程度の内容を備えたものであるべきとは言えるはずです。

さて、今回書かれていた延長の理由は以下の通りでした。

開示決定等に関し時間を要することから、法第10条第2項を適用し、30日の延長をせざるを得ない。

これを分解してみると、以下のようになります。

  • 「開示決定等に関し」:開示決定等の期限を延長するのですから、開示決定等に関する事柄であるのは当然です。

  • 「時間を要することから」:時間を要する場合でなければ期限の延長は不要ですから、当然です。

  • 「法第10条第2項を適用し」:根拠条項です。

  • 「30日の延長を」:結論であって理由ではありません。

  • 「せざるを得ない」:修辞であって、単独では具体的内容を含んでいません。

これは果たして理由の提示として十分でしょうか。

なお、一応弁護というか好意的な解釈をする余地はなくもないので、書き記しておきます。というのは「開示決定等に関し」の部分ですが、行政庁が開示請求を受けてからそれに対する決定を行うまでのプロセスは、細かく見ればおおよそ次のように分けられるはずです。すなわち、①開示請求された文書があるかどうか探す、②見つかった文書が開示請求の対象に該当するかどうか判断する、③開示請求の対象に該当する文書について開示の可否を検討する、④結果を正式な決定として決裁する、といった具合です。「開示決定等」を狭い意味で捉えれば、このプロセスのうち③④(特に④)を指していると見ることもできなくはありません。もっとも、この文面だけでそれを読み取るのはそもそも無理がありますし、仮にそうだとしても、結局③④に時間を要するような具体的事情が示されているわけではなく、全体としての評価を大きく変えるには至らないように思います。

蛇足

「延長後の期間」には「開示請求書を受付けた日から30日」と書かれていますが、本来30日だった期間をそこから30日間延長するのですから、延長後の期間は60日が正しいと思うのですが、どうなのでしょう。

別紙の表の12番目の項目、"発出された「総長対話」の……について(通知)」"の部分、開きカギ括弧は2個連続しているのが正しいです。元の開示請求ではそうなっています。

同じく別紙の表の14番目(最後)の項目、"安田行動前"という誤字があります。筆者が提出した元の開示請求では"安田講堂前"となっており誤字はありません。

結語

本稿は以上となります。さらに最大30日待つことになってしまいましたが、結果が判明次第、続報をお伝えします。


(2024年8月23日追記)結果はまだ届いていませんが、続きの投稿を公開しました。

(2024年9月3日追記)決定通知書が届きました。


この投稿は、筆者以外の著作物・文書を引用・掲載している部分を除き、CC BY-NC-SA 4.0の下で利用できるものとします(同ライセンスの認める範囲をこえて利用したい方は、個別に対応を考えますので、筆者までご相談ください)。なお特に、開示決定等の期限の延長についての通知書は、筆者が同ライセンスの適用を行う範囲に含まれませんので、ご注意ください。

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