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セミリタイア人生を充実させたい人向けの話です。その20

その20

今日は田古島さんスペシャルです。

【小説】スラッシュワーカー/喜嶋富魅尭/

第二十話

ポジティブな彼からの影響を受けて
改めて気付いたことだが
本当に沢山の人から
いろいろ事を教わり、
様々な事象から学ばせてもらっている。

良い事は勿論だが、
そうでは無い事の方が
むしろインパクトが強く
印象に残っている事が多い、
自分自身はそれほどキャパシティ(容量)
多い人間では無いのですぐに
いっぱいいっぱいになってしまう。

そんな自分が何とか
アクシデントを乗り越えられる要因としては
後輩になるが、田古島さんの影響が
かなりあるのかもしれない。

彼を例えるならば
昭和の営業マンそのものであり、
当時流行った
「24時間戦えますか?」
というCMそのものの人間だ。

今ではいわゆるブラックになってしまうが
いつ寝てるんだろうと思うくらい、
夜中に業務メールが流れてくる
その内容も単純な内容のものではなく
かなり作業をした様子が分かる
添付ファイル付きのメールばかりだ。

部下の中には、
仕事をしている時間を
カムフラージュする為に、
タイマーで送信している人間もいたが
そういう人間は此方から返信すると
反応が無いのですぐに分かってしまう。

田古島さんに関しては、
昼夜を問わずメールの量は異常であり、
正真正銘の本気のメールばかりだった。
タフネスという言葉は
彼の為にある様なものかもしれない

明晰な頭脳と強靭な体力を武器に
ブルドーザーの様に仕事を片付ける、
そして何よりも大変な事があっても
まったくへこたれない精神力がある。

彼のエピソードについては
沢山あるのだが、
その一つ一つを思い出してみると
かなり大変な事ばかりだが
思い出すと、つい笑ってしまう。

彼が部下だった、
会社の旗艦店の店長として
活躍してもらっていた時のことだが
彼の店舗は
日本一の売上をほこる店舗でありつつ
周辺の治安がとても悪いエリアの立地だった。
他の旗艦店店長達は、
1店のみの担当だったのだが
何故か、彼だけは3店を担当していた。

その理由を会社に確認したところ
「田古島さんだから」という答えだった。
答えになってないだろと思ったが
その意味はほどなく理解出来た、
とにかく昼夜を問わず働く、
彼はいつ家に帰っているのだろうかと
心配になってしまうのだが
彼の心配をしているのは自分1人だけで
他の人間は全く心配していなかった。

彼の弱点の一つとしては
自分自身のレベルが高いので
他人への要求も高くなってしまうことだ
上司に対しても一切容赦が無く
それぐらいの事も出来ないのかくらいに
大変な要求をいつもされたものだ。。。

ある時のことだが、
彼の指示通りに1日動いたところ
気が付くと15キロくらい
えんえんと歩かされた事もある
彼ほどタフならば問題など無いと思うが
体力にそれほど自信が無い
自分自身にとっては
相当なダメージが残ってしまい、
回復する迄、
数日必要だった事を思い出す。

彼は死ぬ気でやれば何でも出来る
死ぬ気でやっても死なないという

ポリシーを持っているので
周りの人間としては
とても頼りにもなるが
本当に彼のペースにあわせてしまうと
死人が出てしまう事になるかもしれない。

数あるエピソードの中でも
武勇伝的なものとしては
「ウィンナー事件」というものがある。

彼が着任して3ヶ月過ぎた頃の店舗へ
1件のクレームが入る
電話の内容は弁当のおかずである
ウィンナーが生だとのことだった。

事件当日の彼の行動としては、
部下が仕事に悩んでいたので
今後についての相談を受けていた
忙しい最中でも、
部下思いの彼は食事をしながら
悩みを聞いていたらしいのだが
急にクレームが入ったので
部下を残してクレームに向かったという案件だ。

結果として、
上記の対応迄であれば
事後報告レベルだったのだが
想定外の事象を引き起こす田古島さんは
結果としてクレームに向かってから
10時間以上帰ってこなかったことで
大事件になってしまった。

クレーム対応に向かった田古島さんに
店舗に残されてしまい
心配になってしまった彼の部下から、
電話を貰ったのが深夜のAM2時だった。

その時は高松に出張だったので
市内のホテルに宿泊していたのだが
やっと熟睡に入ったぐらいの
タイミングで、
携帯のブルブルが全く止まらない
寝ぼけまなこで確認してみると
登録していない番号だったので
あわてて電話に出てみると
新入社員の私用携帯電話からだった。

話しを聞いてみると
田古島さんが風〇店にむかってから
6時間経つのに帰ってこないとの事だった。

新入社員の面間さんは
4月入社以降、
一生懸命頑張ってくれていたが
真面目過ぎる故に
6月に入って悩みが増えてしまい
上長の田古島さんに相談していたとの事だった。

「もしもし?喜嶋ですが?」

「すみません部長、○○店の面間です。
 夜分遅く申し訳ございません。」

「ハイハイ、どうしましたか?」

「部長大変です、田古島さんが帰ってきません」

だいぶ切羽詰まった雰囲気が伝わってきた
入社したての新入社員が
夜中に電話しているからなの緊張しているのが分かる。
そんな中で頭が働いていないのからかもしれないが
田古島さんが帰ってこないって???

「?今はどこかの店にいるのかい?」

「田古島さんと昭和食堂で食事をしていたのですが
 田古島さんが〇〇〇〇店(風〇店)に行って
 帰ってこないんです。」

まったく意味が分からない
田古島さんが風〇店に行ったのが問題なのか?
それをわざわざ報告してくれたってことなのか?

「うーーん、そうなの何で田古島さんは
 ○○○○店に行ったの?」

「はい、急な用事が入ったと言って向かいました。」

「で、一人で残されちゃったってことかい?」

「ハイっ」

この時は、田古島さんの知ってはいけない一面を
垣間見てしまったのかもしれないと
新入社員の面間君と話していて感じとっていた。
業務時間外なので何とも言えないが、、、、、

「田古島さんはすぐ帰ってくると言ってたんですが、、、、」

「そうなんだ、ううーーむ、今迄も同じ様に
 急にいなくなる様な事はあったのかい?」

「いや、今迄はありませんでした。」

「田古島さんはよくそういうお店に行ってるの?」

「行ってるかもしれませんが、良く分かりません」

理由はよく分からないが
面間君がかわいそうになってきた

「どれくらい待ってるの?」

「もう6時間です。。。」

「6時間???」

「はい、もう6時間待ってます。」

6時間過ぎている?
田古島さんが酔っ払って
面間君をほったらかしにして
家に帰ってしまったとの疑いが強まる

以前、田古島さんの先輩と
3人で食事をしていた時に
気が付くと先に帰っていた時があったが
まさか、部下に対してもやっているとは、、、
少し残念な気持ちになってしまった。

「お会計は大丈夫かい、
 もし難しければ昭和食堂の店長さんならば
 話しすることが出来るから
 電話変わってもらえるかい?」

店長と話しをして
帰らせようとしたところ
面間君から衝撃の発言を聞くことになる。

「田古島さんには此方から確認するので
 もう面間君は帰りなさい、
 交通手段が無ければタクシーを使ってくださいね。」

「ありがとうございます。
でも部長!ひょっとしたら
田古島さんクレーム対応かもしれません?」

「んんっ?田古島さんクレーム対応なの?」

「かもしれませんが、よく分かりません」

このやりとりを自体を
文字に起こしてしまうと結構な長さになるが
電話だとホンの数分になる。
少し寝ぼけていたからかもしれないが
面間君としては、
とても切羽詰まった状態であり
かつ緊張しながら電話をくれた中で 
田古島が帰って来ない事の重大性を
なんとか伝えたかったのだと思う。

その部分を理解出来ずに
田古島のことを
部下と食事をしている最中に
勝手に風〇の店舗に行ってしまい
あげくの果てに部下を残して
一人で帰ってしまうという
とても残念な人と思ってしまっていた。

「面間君、急な用事が入ったと言って
 ○○○○店に行って、6時間帰ってこないの?」

「ハイ、そうです」

「クレーム対応とは言ってたの?」

「ウィンナーがって言ってました」

どんどん嫌な予感がしてきた
どうやら、かなりヤバい状況の様な気がしてきた
寝ぼけていた頭が急に冴えてくるのと同時に
背中に冷や汗まで滲んできた。

ペットボトルの水を飲んで
頭をスッキリさせてから
店舗に確認してみると
先ほどの会話の全容が見えてきた

田古島さんと面間君が食事をしていると
店舗にクレームが入り、
その内容を確認してみると、
どうやら店舗で買った
お弁当の中に入っていた
ウィンナーが生だったとのことであり
急遽メーカーさんと一緒に
田古島さんは6時間前に
○○○○店へ向かったという事だった。

田古島さんが向かった理由も分かり
誤解も解け、
対応についても問題は無いものの
既に6時間が経過しているのは
明らかにおかしい
何か発生しているのかもしれない。

最悪な状況も想定してしまうが
高松から打てる手は限られている
とにかく、
このままの状態は非常にマズイ
いくら不死身の田古島さんといえども
ほっとく訳にはいかない。

続く









2018年に退職後、 独立して頑張っております。 まだまだ不慣れですが 何に対しても頑張りますので 温かく見守ってくださいませ(^^)