見出し画像

「出世の街・しずおか浜松へ」あれから3年、ほんとうに出世できたのか?

すこしまえの旅の話をします。

2020年秋に静岡県浜松市に行った話です。
そうそう、浜松市って、「出世の街」なんですって。

出世の街・浜松

徳川家康公が29歳のとき築城した浜松城。家康公はこの地で天下統一の礎を築きました。家康公が浜松城を離れたあとも、歴代城主の多くが「出世」したことから、浜松城はのちに「出世城」と呼ばれるようになったそうです。(浜松市ウェブサイトより)

「出世城」と呼ばれた浜松城

近代になってからは、やらまいか精神(なんでもやってみようというチャレンジ精神)にあふれた多くの企業家を輩出し、カワイ、スズキ、浜松ホトニクス、ホンダ、ヤマハなど数々の世界的企業が浜松から生まれる。

浜松市ウェブサイトより
浜松餃子とやらまいかジョッキ(遠州男唄濱松たんと浜松駅南口店)

浜松市は「やらまいか精神」で名だたる城主や企業家を輩出したすごい街なのですね。やらまいか精神とは、なんでもやってみようというチャレンジ精神のことです。

そんな出世の街を訪れ、浜松城に行き、ゆかりのある神社へもお参りしたわたしですが、あれから数年、果たしてわたしは出世できているのでしょうか?

そして、「出世」とは? さらに「成功」の要件とは? 

当時の旅日記をひもとき、静岡・浜松市の旅を振り返りながら、「出世」とは? 「成功」とは? そんなことにも思いをめぐらせてみたいと思います。


旅日記

1泊2日の浜松出張

2020年11月、わたしは静岡県浜松市へ1泊2日の旅に出ました。そう、コロナ渦まっただなかのあの年です。その頃、ちょっと状況は落ち着いてきたかに見えていて、「Go To トラベルキャンペーン」が始まっていました。

静岡に行ったのは、仕事でした。ルーロットという移動式チャペルでどこでも結婚式ができる事業を行っているので、結婚式を行う候補地の下見と、お客さまとの打ち合わせのためでした。

下見をする場所は愛知県田原市から静岡県御前崎市までの静岡県西部の海沿いの広範囲にわたる地域です。宿泊はそのまんなかくらいにある浜松市に決めました。

静岡地図を描いてみました

ちなみにですが、わたしにとって、富士山のある静岡県は「関東」のイメージでした。なぜなら関西人にとっては、関ヶ原を超えたら「関東」になるのです。しかし浜松出身のアシスタントちゃんに聞いても、新郎新婦さんに聞いてみても静岡はあくまでも「東海」なんだそうです。そっかあ。

旅のプラン

まず1日目にお客さまと下見と打ち合わせをして、2日目はひとりで浜松市内の美容室、衣裳店、お花屋さんの確認をするというプランです。(現地調達も含め、いろいろなことを想定しておくためです)

がっつり仕事です。しかもわりと重要な。

でもね、コロナ渦でずーっと旅ができなかったんです。ほんの少しでもいいから浜松の旅を楽しみたい! そんな気持ちにもなりますよね。

わずかな時間でも旅気分をあじわいたい。そのためにいちばん手っ取り早いのは「食」です。その土地でしか食べられないものを食べたい。

静岡でしか食べられないものといえば、そう、アレです。

さわやかハンバーグ

静岡県でしか食べられないさわやかハンバーグです。行くでしょう。行きますよね。

炭焼きレストラン「さわやか」

1日目の仕事を終えて新郎新婦さんと解散したあとで、浜松駅前の遠鉄百貨店のなかの店舗に行きました。

コロナ渦なのにすごい混んでいます。でも予約システムがあるので安心です。予約しておいて、呼び出しがあるまで待っていれば良いのです。その間、メニューを見てワクワクしておけば時間なんてあっという間!

メニューは2020年11月のもの。現在は変わっているかもしれません。

しばらく待って案内していただきました。ランチョンマットがさわやかMAPになっています。「さわやか自社製造のハンバーグは炭焼きレストランさわやか以外では一切販売しておりません」と書いてあります。静岡県外では食べられないっていうのがすごいです。

熱した牛さんの鉄板でハンバーグが来ました! 頼んだのは、花嫁さんおすすめの「げんこつハンバーグ」です。

店員さんが目の前で手際よくハンバーグをまっぷたつにして、まだ赤い断面をあつあつの鉄板にぎゅむっと押し付けて、ジュージューしてくださいます。

押し付けられてるときの牛の表情よ

ソースもこの日お会いした新郎新婦さんおススメの「玉ねぎとデミグラスのハーフ&ハーフ」にしました。

左デミグラス、右タマネギ

つやつやのソースをまとったハンバーグがなんともおいしそう。

いっただっきまーす!

肉!

うおおお、肉!

これはもうハンバーグというよりも、「肉」でした。手ごろなお値段で、がっつり肉を食べたぞー! という満ち足りた気分になれます。なんだろう、お肉はやっぱり元気が出るよね。わざわざこのハンバーグを食べるだけのために静岡に来る人がいるっていうのも納得。おいしかった。

ホテルはクラウンパレス浜松

宿泊はクラウンパレス浜松です。出張ですが、Go to トラベル、使わせてもらいました。広々としたお部屋がとってもお安くなったうえに、クーポン券までいただいちゃって、なんかすみません。

神戸からの新幹線往復とホテルのツアーが 割引されて、¥16770でした。(プラス¥4000のクーポン付き)すごくないですか?

うれしい。ありがとうございます。しっかり静岡県にお金を落として帰りたいと思います!

快適ホテル
旅ではかならず旅日記をつけるので、デスクが広いのはうれしい
浜松駅のすぐ近くのホテルです。地下からアクセスできます。

仕事とはいえ、またこうして旅ができるというのはすごくしあわせなことだなあと、このときしみじみ思いました。旅をして仕事をしたいと、わたしはずっと思ってきたのでした。

この日は静岡の海沿いの広範囲を下見したので、それなりに疲れていて早めに就寝しました。

(注)ちなみにGo to トラベルクーポンは、すべてお土産の「うなぎ」に変わりました。ありがとう、Go to トラベルさん!

遠鉄百貨店 浜名湖山吹にて


朝ごはん

旅の朝はすごく早く起きて日記を書いたり、ゆるゆるお部屋で過ごします。この朝の時間がまた好きなの。わたしは基本早起きなんですが、旅先の早起きほど楽しいことはないのです。

そして、大好きなホテルの朝ごはん。ホテルクラウンパレス浜松の朝ごはんは和朝食でした。ごはんが何杯も食べられそうなおかずがいっぱいあってテンションがあがります。おかずが魅力的すぎてごはんと胃袋が足りないよう。

特にしらす!

しらすがふっくらと美味しかった。静岡って、端から端までずうっと海沿いですもんね。こんなに海が近いのだから、おいしいはずだわ。

太平洋だった

そう、海といえば。

静岡県の海って、太平洋なんですよね。

御前崎

わたし、はじめてちゃんと太平洋見たかもしれないです。もう、全然違いました。広島出身で神戸在住のわたしが今まで見ていた海は、瀬戸内海だったんですね。はじめてちゃんとした(?)太平洋を見てびっくりしました。「え、うそでしょ、この先ずーっと陸がないの?」って正直ちょっと怖くなりました。この先果てしなく海、ってことをつきつけられる迫力。

この海をずっと見ていた人はやっぱりスケールが違うんじゃないかしら、そりゃあ城主にも企業家にもなるわ、とふと思ったのでした。

御前崎

五社・諏訪神社へ

2日目は浜松市内をめぐります。わたしは歩いて20分くらいならだいたい歩いてしまうので、浜松駅から浜松城に向けてテクテク歩いて行くことに。食べすぎた朝ごはんを消化しなくては。

道中、立派な神社があったので立ち寄ってみました。

11月だったので、七五三らしき参拝者さんで賑わっていました。着飾っておすましをした子どもたちがかわいい。

ここは五社・諏訪神社です。

調べてみると、ここも徳川家ゆかりの神社で、パワースポットのようでした。

五社神社は、徳川家康公によって、二代将軍秀忠公誕生の際に「産土神(うぶすながみ=生まれた土地を守る神)」として、浜松城内から現在の地に遷されました。家康公は、その後も子供たちの初宮祈祷(お宮参り)や、自身の厄除けの祈祷を五社神社で行ったといわれています。一方、諏訪神社は三代将軍家光公によって現在の位置に遷され、以後、両社はともにこの土地の産土神として崇敬されるようになりました。
(中略)子守り・子育ての神様として地域の人々を見守り続けている五社神社・諏訪神社では、七五三の時期になると艶やかに着飾った子供たちやその家族でにぎわいます。

浜松市ウェブサイトより

子守り、子育ての神様! だから七五三でにぎわっていたのですね。

いざ、浜松城へ!

いよいよ、出世城と言われる浜松城へ向かいます。

天下人となった徳川家康が、若き頃に戦国の世に名を上げた周辺諸国の名家、今川、武田、織田など 巨大な戦国大名に囲まれ、戦い生き延びて天下盗りの夢をつかんだ場所が浜松城です。

浜松城公園ウェブサイトより

家康くんと直虎ちゃん

ひろびろとした浜松城公園に入ると、出世大名家康くんと出世法師直虎ちゃんが出迎えてくれました。

ちなみにこのとき2020年。この時点ですでに、2023年の大河ドラマが「家康くん」であることは決まっていて、2017年の大河ドラマの主人公「直虎ちゃん」とともに浜松を盛り上げようとがんばっていました。

ふたりともうなぎをせおってる

このときはありませんでしたが、いまは「どうする家康」の大河ドラマ館ができているみたいですね。

「野づら積み」に大感動

さっそく浜松城の天守へ。

石垣がかっこいいぞ

ゴツゴツした石垣がかっこいいと思ったら、これは「野づら積み」と言われる積み方なのだそうです。

石垣(浜松市史跡)

堅固なつくりと書いてあるけど、なんだか一見そのへんにある石を適当に積んだようにも見えます。ところが、これがこう見えてとても頑丈なのだそうです。

「浜松城の石垣は見るからに荒々しく、外見は粗雑で一見崩れやすそうに思えますが、四百年の風雪に耐え、今なお当時の面影を残している重要な遺構であり、史跡浜松城跡の中で文化財として価値の高い部分です」

城内案内板より

なんと! そんなにすごいものなんだ!

おみそれしました!

この石垣には基本的にには野面石(自然のあるがままの石)を使い、接合部(合場)をほとんど加工しないで積む野面積みという方式です。
(中略)格段の積み方は、布積(ぬのづみ)と呼ばれる、石段を一段ずつ横に並べて据えながら積み上げ、布の横糸が通ったように積む技法が採用されています。
不整形な石を積むとはいえ、原則的には石の大きな面を表にし、小さな面を内にして積みます。隙間に背後から飼石を入れて、石が動かないように固定します。背後(内側)は多量の栗石を詰めて強化します。(中略)さらに砂利を入れてあるので水はけも良く、水圧で崩れることはありません。

城内案内板より

布積み! 

横糸を通して、石を編むように積む、ですって!?

か、かっこいい。「布」と言われると、「いとへん」なわたしはググッと惹きつけられてしまいます。

それぞれの石は、ほとんど加工しないで自然のあるがまま使う。それぞれの石のいい面を表に出し、小さな面を内にして積む。横糸だけは通して、あとはその石の特性を活かす。隙間には石を入れ、さまざまな石で支える。水はけがいいので、水圧で崩れることもない。野面積みは、不整合なようでいて、しっかり強い。

これって、なんだか「組織」「人材」にも同じことがいえるのではないかと思いました。

それぞれの人材は組織に合わせようと無理強いをしない。おのおのの得意なことや、いい面が表に出るようにする。そのかわり、大切にする価値観(横糸)はしっかり通して、そこだけはブレないように組み、あとはその人の個性を活かす。弱い部分はお互いで支え合い、組織の風通しをよくしておく。個性を活かしながら、しっかり強い。

これこそが、理想とする組織ではないでしょうか。

移動式チャペルの事業は、会社組織ではなく、その都度結集するチームで行っています。スタッフだけではなく結婚式にはさまざまな人が関わってきます。

さまざまな人が関わると、もちろんむずかしいこともありますが、人それぞれの個性を活かすやり方がきっとあるはずで、もっとよりよく、強固にできるはずだと思ったのです。そのためには、思いや価値観をしっかり共有しておかなくては。

わたしはこの野づら積みをみて、そのことを強く感じたのです。きっとそうですよね、そのことを教えてくれたのですよね、家康公。

その通りじゃ。って言ってそう。

あ、そうだ、石垣のことばかりでそういえばお城のことをまったく書いていませんでした。なんか石垣のインパクト強すぎて本体(城)の記憶が…。

ですので面白いなあと思って撮った写真を載せておきますね。(でもなんでこの写真…)

「短期間で建築できるシンプルさ」っていうところが好きポイント
浜松城 登閣

出世神社へ

さて、野づら積みの興奮覚めやらぬまま、出世神社と言われる「浜松元城町東照宮」へ。

ここは、豊臣秀吉と徳川家康のゆかりの場所らしく、最強のパワースポットなのだそうです。

誰もが知っている秀吉公と家康公。この二人がまだ無名だった時代、唯一交差した地点それがここ遠江引間城(現在の浜松元城町東照宮)なのです。

「出世の街浜松」サイトより

境内には、間に入って写真をとってください的なスポットがあります。

ふたりの間に入るってことね。でもこれ、ひとり旅の場合はどうすれば…。

すると、像の前にひとりたたずむ男性が。すかさず、声をかけます。

「お写真、お撮りしましょうか?」

そう、じぶんが撮って欲しいがために、先に誰かに「撮ってあげますよ」って言う作戦です。そうしたらだいたい、その後で撮ってくれます。助け合いです。(安全な日本だけで通用することかもしれないですけどね)

そしてしっかりとお参りしてきました。

でもこのときわたしが願ったのは「出世」ではありません。出世なんてしなくていいから「どうかこの結婚式が安全に行われ、どうかみなさんに喜んでもらえますように」と願ったのでした。

あれから半年

そして迎えた2021年4月吉日。

あれから約半年後、地域の人にもたくさん協力してもらって、結婚式は滞りなく行われ、新郎新婦さま、ご家族、ご友人、みなさんにとても喜んでもらえました。こんなにしあわせなことはありません。

もう、何よりもそれがいちばんです。出世なんてどうでもいいんです。(いや、そりゃまあ、出世もしたいけど)でも何をもって「出世」「成功」と言うのかってことですよね。

そしてあれから3年

さらにあれから3年、結論から言いますと、わたしは出世しておりません。まあ、個人事業主のわたしにとっての出世とは? って話ですけどね。

でも、あのときのおふたりにはベビーちゃんが誕生しました! 孫が増えました。(わたしの結婚式、もしくはドレスを着た花嫁さまのベビーはわたしの孫というシステム)もうこれがわたしにとっての大出世です。

こうして「出世の街浜松」の旅を振り返りながら「出世」そして「成功の要件」をあらためて考えてみました。答えはこの旅のなかにありました。

「出世」そして「成功」の要件とは

出世の街・浜松で見つけた「成功」の要件

1、やらまいか精神

なんでもやってみよう! 挑戦してみようというやらまいか精神(チャレンジ精神)が、カワイ、スズキ、ホンダ、ヤマハなど数々の世界的企業を輩出したゆえんなのかもしれません。

浜松餃子とやらまいかジョッキ(遠州男唄濱松たんと浜松駅南口店)

2、ものごとを太平洋のように大きく捉える

毎日スケールの大きな太平洋を見ていると、自分がちっぽけに思えて、些細なことで悩んでいるのがばかばかしく思えてきそうです。

些細なことに一喜一憂せず、常にどっしりと構え、問題が起きても大きく捉えて対処する。そんな太平洋のような、おおきな心を持てるようになりたいものです。

御前崎からの太平洋

3、「野面積み」に学ぶ強固な組織のつくりかた

一見、ごつごつしているように見えても、とても強固な野面積み。横糸(価値観)だけはしっかりと共有しておいて、それぞれの個性を活かし、よい面を表に出して、背後で支える。そんな組織づくりが成功へとつながるのではないでしょうか。

浜松城の野面積み

出世の街・浜松。学ぶべきところが満載でした。


ところで具体的な「出世」のご利益はあったのか?

さて、出世の街・浜松を旅したあとで、具体的な「出世」のご利益はなかったのでしょうか。

それがね、じつはありました。でも、仕事とは違うジャンルの「出世」でした。

浜松のホテルでの夜のこと、あれはちょうど「さわやかハンバーグ」で順番待ちをしていたときのことです。わたし宛に一通のメールが届きました。

それはnoteの私設コンテスト、「2020年秋の美術・芸術! コンテスト」の受賞を知らせるメールでした。

ホテルクラウンパレス浜松にて

▼受賞作

このときの受賞をきっかけにnote活動にはずみがつき、フォロワーさんも増え、わたしは文章を書くことに目覚めたのです。

そして、「せっかくならちゃんと勉強してみたいなあ」と思ったのです。そして大学に行き小説や文章を学び、その結果、文藝春秋に掲載されることにも繋がりました。

これってちょっと「出世」っぽくないですか?

もしかしておふたりのご利益?


おまけ

浜松出身のアシスタントちゃんがくれた浜松みやげ。

おいしすぎて、開封したら写真を撮る前に秒でなくなりました。

チーズあげ潮

びっくり。

静岡、おそるべし。




▼関連note

この記事が参加している募集

日本史がすき

ドレスの仕立て屋タケチヒロミです。 日本各地の布をめぐる「いとへんの旅」を、大学院の研究としてすることになりました! 研究にはお金がかかります💦いただいたサポートはありがたく、研究の旅の費用に使わせていただきます!