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話題になる飲食店の特許!回転寿司(くら寿司)、ラーメン(一蘭)、ステーキ(いきなり!ステーキ)

スシローで醤油ボトルをペロペロしたり、回転するネタをつまみ食いしたりするのがSNSで拡散されていますが、そんな感じで社会的に注目される問題が現れたときに、ごく稀に注目されるのが、『特許』です!

というわけで、今週のnoteは、これまで話題になった飲食店の特許について、勝手に厳選した3つを紹介します!!「くら寿司」「一蘭」「いきなり!ステーキ」と皆さんも行ったことあるお店も登場するかも知れませんっ!!
(私自身は特許出願の経験などはありますが、弁理士などのプロではないので、その辺りのざっくりさはお許しください~)

最初は、現在、話題の回転寿司から。

今回もちょっとだけ話題になったのが、「くら寿司」の寿司カバー。

ビデオまで作ってアピールしている寿司カバー。ホームページでもちょっとだけ書かれているように、2013年に特許第5416288号「飲食物搬送用収容体」という特許を取得しています。

特許の範囲を示す請求項の最初に書かれているのは、

【請求項1】
店内の各座席に飲食物を搬送するための搬送路を備えた飲食物搬送装置の前記搬送路に載せられて搬送される飲食物搬送用収容体であって、
飲食物が盛られた容器を載置するための容器載置部を有する載置台と、この載置台の容器載置部上を覆うために前記容器載置部に対して開閉可能に前記載置台に取り付けられた蓋体と、前記容器載置部上への皿の載置に伴い前記蓋体を閉動作させるとともに前記容器載置部上からの皿の取り出しに伴い前記蓋体を開動作させるための開閉機構とを備えて成ることを特徴とする飲食物搬送用収容体。

ということで、特許文章に慣れていないと読みにくいかも知れませんが、ざっくり言えば、『回転レーンの上で、お皿を置くと閉まり、お皿を取ると開くカバー』という感じです。とても広い範囲の権利です。

特許の中で書かれている図も以下のような感じで、まさに寿司カバー!!
少なくとも目に見えない菌からしっかり守ってくれるカバーです。今回のような目に見える敵から守ってくれるかはわかりませんが・・・(きっとそのうちそんな特許も出てくるかも知れません)

もっと細かく興味がある方は、こちらから全文読めます!

引用:特許第5416288号 明細書図面

ちょっと気になったので、J-PLATPATという国の特許検索システムで「くら寿司」の特許(検索ワード:出願人/権利者/著者所属:くら寿司orくらコーポレーション)を調べて見ると、特許出願数:114件、うち登録数が54件となっています。

業界トップのスシローが、特許出願:10件、うち登録数8件(検索ワード:出願人/権利者/著者所属:FOOD&LIFE or スシロー)なので、飲食業という業態としてはかなり多いと思われます。

上の表でそれぞれの特許名称を見てみると、今回の容器カバーから搬送装置、掃除機器、食品加工装置、ネタ供給装置、アンケート装置、食器回収装置、ゲーム装置、在庫管理システムなどなど、色々な分野で特許の権利化を行っていることがわかります。

この中には、5皿で一回景品が当たるチャンスがある皿回収システム「ビッくらポン!」の特許も含まれています。子供に大人気のやつですね。おそらく、これとかこれとかが該当する特許かな?と思われます。

コロナのときに話題になったのが、一蘭の特許。

コロナがまだまだニュースでたくさん取り上げていたこと、よく話題になっていたのが、ラーメン屋さん一蘭の食べ方。

行ったことがある人はわかると思いますが、コロナ前からラーメン食べるのに集中して欲しい?ということで、隣の座席とついた手で区切られた半個室で食べるスタイルは、店員さんとも暖簾で隔たれており、非接触ブーム、クリアボード、黙食と多く紹介されていました。

このお店のスタイルも、特許が取得されていることが知られています。

『えっ!!? 隣の人とパーティションもダメなの??』と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

実際に、2003年に株式会社一蘭により出願された特許は、「店舗システム」として特許第4267981号を取得しています。

その一番大きな権利範囲である請求項1を見てみると、以下のように書かれています!!

出入口から客席を含む客の動線を直線的に構成する複数の客側通路と、厨房を含む店の従業員の動線を直線的に構成する店側通路とが空間的に仕切られており、前記店側通路の一部をなす接客スペースが、長手状のカウンターを複数の間仕切りで仕切って個別に構成した複数の前記客席と対向して形成されるとともに、前記接客スペースと前記各客席とを暖簾で仕切った店舗システムにおいて、
前記客の動線中に配設した客側機器である、
a)出入口に設置された客の入店及び退店を検知する入退センサと、
b)各客席に設置された、客の着座及び離座を検知する座席センサと、
c)各客席に設置された、客から店舗側へ意思表示する連絡スイッチと、
前記店の従業員の動線中に配設した店側機器である、
d)少なくとも接客済みか否かを入力可能とした座席情報入力スイッチと、
e)前記座席センサの検出結果、前記連絡スイッチ及び前記座席情報入力スイッチからの入力結果に基づいて座席状態を表示する客席情報出力器と、
を備えるとともに、
前記座席情報入力スイッチは第1ボタンと第2ボタンとを備え、
前記客席情報出力器は、
前記第1ボタン及び前記第2ボタンと共に、前記接客スペース内であって、前記客側通路の反対側上部に、前記各座席毎に設けた客席ボックスの前面に並設され、前記座席セン
サが着席又は退席を検出すると点滅表示するとともに、着席を示す点滅時に前記第1ボタンが押下されると点灯に変化し、退席を示す点滅時に、前記第1ボタンが押下されると消灯する一方、前記第2ボタンが押下されると前記点灯状態に復帰する第1ランプと、
前記連絡スイッチからの入力信号により点灯表示する一方、前記第2ボタンが押下されると消灯する第2ランプと、
前記厨房に配設され、前記座席センサが着席を検出すると点灯する第3のランプと、
前記入退センサが客の入退を検出すると、入店と退店とを区別した音が発せられる前記厨房に配設した第1の店側スピーカと、前記店側通路に配設した第2の店側スピーカと、客側通路に面して取付けた客側スピーカと、
を備えることを特徴とする店舗システム。

長いっ!!!!

長いので、惑わされてしまいそうになりますが、要は、座席の位置関係とか、ボタンとかセンサーの仕組みなどなど一蘭の食べる方法すべてをそのまんま記述しているという感じです。

引用:特許第4267981号 図面より

ここまで詳細に書いてしまうと、特許化はできてしまうけど、例えば、客側と店員側を仕切りのを暖簾でないものに変えるだけでも権利の侵害を回避できてしまいそうな気もしますので、権利の範囲はかなり限定的かなとも思ったりもします。

おそらく特許でブイブイ儲けたいというよりも、特許を持っているというブランディングとか、全く一緒のものは真似させないよ!という意味合いが強そうです。

というわけで、ご飯のテーブルを間仕切りで仕切ったりするくらいでは、まったく問題なさそうです!!

特許業界でも真面目に話題になったのが、いきなりステーキのビジネスモデル特許。

飲食業界での特許というと、飲食業に従事していない私とかでも、特許の研修で真面目に勉強する有名な特許があります。

それは、「いきなり!ステーキ」のビジネスモデル特許です。

いきなり!ステーキといえば、一世を風靡した低価格の立ち食いステーキのお店で、行ったことがある方も一定数いらっしゃるのではないでしょうか。

そのビジネスの良し悪しは横に置いておき、特徴としては、お客さんが食べたいお肉の量を指定し、店員さんがその場で切り分け、焼き上げて提供するというオーダーカットシステムと呼ばれるスタイルです。

いきなり!ステーキを運営するペッパーフードサービスは、このオーダーカットシステムそのものを特許化することを狙いました。

その名も、「ステーキの提供システム」!!

最初に彼らが狙った権利範囲は、
『お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むことを特徴とする、ステーキの提供方法』

ところが、さすがに特許庁から、これはただの作業のプロセスで発明ではないでしょ!!という指摘を受けています。通常のこのような特許庁からの指摘に対して、発明者は修正(専門用語としては補正)をできるのですが、補正した後がこちら。

お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備えることを特徴とする、ステーキの提供システム。

ポイントは、お肉を提供するステップを間違いなくするために、
・お客様を案内したテーブル番号が記載された札
・カットした肉を計量する計量機
・カットした肉を他のお客様のものと区別する印し
という3つのスペシャルな構成要素を定義したことでしょう!

この内容で、特許が成立しました!!
いきなり!ステーキからは、プレスリリースも出されています。

ところがどっこい、第三者から

「上記の3つは全然スペシャルではなく、ただの道具で、こんなの発明じゃないでしょ!!!」

という雰囲気の指摘が入ります。
そして、擦った揉んだがあり、一旦は、特許庁が特許を取り消します。
しかし、めげないペッパーフードサービスは、その取消しを取消す訴訟をしますっ!!

結果、取消しは取消されました!!もはやドラマ的な展開です・・・

なぜこの特許を勉強したことがあるかというと、特許というとどうしてもスゴいハイテクな発明という印象があるのですが、今回のような札、計量機、印というめちゃくちゃローテクな3つの組合せでもシステムとして成立し、その効果が説明できれば特許になる!!ということを教えて貰った記憶があります。

というわけで、皆さんがいきなり!ステーキで、何気なく、
「サーロイン、250グラムでぇ~」
と注文された裏側では、特許5946491号が有効に機能しているということを噛みしめて頂ければと思います。

引用:特許5946491号図面より

もう少しちゃんと勉強したい方は、以下などが良いかもしれません。



というわけで、今回は色々と話題になる飲食店にまつわる有名特許を紹介してみました!!

では、また来週~!!
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安藤健(@takecando)
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