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後編:2023年、国はどんなロボットに投資するのか?(国土交通省・文部科学省・内閣府編)

3回シリーズの最終回。今回も、国はどのようなロボットの開発や活用に予算投入しようとしているのかを調べてみます!

最終回は、インフラを司る国土交通省、そして、研究開発の司令塔でもある文科省、さらにその上の大きな方向性を進める内閣府の中で、ロボット関連の取り組みを見てみましょう!!

前編(経産省)、中編(農水省、厚労省)は、以下になるので、興味ある方は是非!

国土交通省

名前の通り、国土や交通に関する取り組みがなされています。
国民にとって主要なインフラの1つである道路に関しては、「人々の幸せにつながる道路」というキャッチフレーズのもと、以下の図のような大きな方向性が示されて、それに基づいた取り組みが実施されています。

https://www.mlit.go.jp/page/content/001498745.pdf

ロボット関連では、今年度4月に成立した改正道路交通法で自動配送ロボットが『遠隔操作型小型車』という車両区分になったことも踏まえて、道路空間の整備やロボットの走行に必要な幅員や勾配のデータ提供の支援が行われるようです。

https://www.mlit.go.jp/page/content/001498745.pdf

ロボットとは違いますが道路を走行するモビリティの自動運転という文脈では、レベル4の自動運転の法規要件、国際標準化、バスなどの実証も行なわれるようです。このあたりの知見や技術は、ロボット側にも活かされるようになるとよいですね!

https://www.mlit.go.jp/page/content/001498748.pdf
https://www.mlit.go.jp/page/content/001498748.pdf

また、ロボットは物流のデジタルトランスフォーメーションという文脈でも活用されるようです。以下のサマリーのように物流施設におけるデジタル化・自動化(自動倉庫やピッキングロボット)やドローンによる物流という取り組みが事例としては書かれています。

https://www.mlit.go.jp/page/content/001498738.pdf

もう少し詳しい施策は以下のような感じです。ドローン配送の方は、一部地域では、CO2削減のために自動配送ロボットを使う、とも書かれています。

https://www.mlit.go.jp/common/001499328.pdf
https://www.mlit.go.jp/common/001499328.pdf

また、物流DXという文脈では、港湾においてもロボット活用が記載されていますが、デリバリーというよりからは、物流施設を整備、特に維持管理のためのセンシングにロボットを有効活用しようという内容のようです。

https://www.mlit.go.jp/page/content/001498750.pdf

また、傘下に観光庁もあるということで、観光視点でのポストコロナの取組も行われるようです。その中の感染対策の一つとして、ロボットも頭の中に入っていますよ!という写真もありました。

https://www.mlit.go.jp/page/content/001498754.pdf

文部科学省

大学で行われているロボット関係の研究の多くは、科研費を始めとする文科省の予算で行われていると思います。検索の仕方が合っているのか、自信がないところもありますが、2022年度から新たに開始された科研費の研究だけでもタイトルに「ロボット」が含まれているものが156件ほどあるようです。大量にある研究の中の1つとして、ロボットに関連するものもあるという感じでしょうか。

概算要求レベルで「ロボット」という言葉が使われているのが、ムーンショット型研究開発制度です。ムーンショットの取り組み全体は、内閣府が統括していますが、9つある目標の内容に応じて、各省庁に担当が割り振られています。ロボットに関連するところでは文科省の担当として、

目標1:2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現リンク
目標3:2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現リンク

の取り組みが推進されています。

https://www.mext.go.jp/content/20220829-mxt_kouhou02-000024712_8-2.pdf

それぞれの取り組みで、本年度から目標1目標3も参画テーマも倍以上に増えて、今後益々、研究開発が本格化していくかと思います。当初からの参画テーマに関しては、それぞれ立派なホームページも開設されているので、以下にリンクを張っておきます。ご参考まで。

また、ムーンショットとは、関係はありませんが、文科省ということで、宇宙に関する取り組みもJAXAを中心として行われています。この中では異分野からの宇宙分野への参画を促す取り組みもされていて、タカラトミーなどが発表していたSORA-Qもここから生まれたようです。

https://www.mext.go.jp/content/20220829-mxt_kouhou02-000024712_8-10.pdf

内閣府

https://www.cao.go.jp/yosan/soshiki/r05/gaiyou_r5.pdf

内閣府自体がロボットの開発そのものを管理、推進することはないかと思いますが、各省庁の枠にとらわれず、より高い視点で科学技術やイノベーションについての方向性を出す総合科学技術・イノベーション会議(通称、CSTI)を有しています。

多くの取り組みがされることになると思いますが、注目が集まるのが、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)でしょうか。現在、12個の大きなテーマが推進されていますが、本年度で第2期が終わり、来年度から第3期が始まります。

今年度は来年度からの第3期の本格化に向けて、フィージビリティスタディという位置付けでテーマの深掘りが行われています。ロボティクス関連では、「人協調型ロボティクスの拡大に向けた基盤技術・ルールの整備」という内容がテーマ候補になっており、筑波大学・サイバーダイン社の山海先生がPD候補となり、以下のコンセプトのもとで専門のタスクフォースの中で様々な検討が行われているようです。年度末には、FSの調査結果などもとりまとめられるようです。

高齢者を抱えたり子育てなどにより生活スタイルや働き方が多様化していく中で、自立的な生活と仕 事のライフタイルを選択でき、世代を超えた人々の生活・心身の健康等の諸問題を解決できる安心安 全な社会の実現に向けて、人協調ロボット技術が担う役割を明確にし、それらを実現するための要素 技術・システム化技術を開発するとともに、当該技術が十分に機能するために必要な環境整備(規格 化、導入促進ルールの整備)等を実施することを通じて、住宅を中心とした生活空間へのロボット導入 モデルと経済サイクルを伴う社会実装モデルを確立し、人・AIロボット・情報系の融合複合技術を軸とし た人協調型ロボティクス社会の実現を目指す。

また、この他、ロボティクスというキーワードはないものの、政府が進める「デジタル田園都市構想」の中でも、地方創成、スーパーシティという文脈の中で、おそらくロボット関係の取り組みも盛り込まれるのではないでしょうか。取り組み自体は、内閣官房側が引っ張ると思いますが、予算としては内閣府の中にも組み込まれていました。ただし、こちららはあくまでも ロボットが主というよりかは、まち、くらし、の中で必要なテクノロジーを必要に応じて活用していく、もしくは、新しいモデルを作るということ二十点が置かれるのだろうと思われます。


3回に渡り纏めてみた各省庁のロボット関係の国プロの内容はいかがでしたでしょうか?意外と多いなと思った方も、他の国と比べた時に少ない?と思った方も、立場によって感じ方は色々かなと思います。いずれにせよ、貴重な税金なので、成果をうまく出せるようにしていきたいですね。私自身も使わせて頂くことがある国プロ、肝に銘じたいと思います。

では、また来週〜。
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安藤健(@takecando)

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安藤 健/ロボット開発者
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