見出し画像

なにか新しいことを始めたい人へのハウツー本かと思ったら、強烈に核心をついたブランディングの本だった。

やりたいことがある人は未来食堂に来てください 「始める」「続ける」「伝える」の最適解を導く方法  小林せかい

読書の狙い:きっかけは奥さんが買ってきたのを何気なく手にとったこと。正直とくに得たいなにかがあったわけではなく何の気なしに手にとったので、いい意味で期待を裏切られた一冊

目次
序章 未来食堂とは
第1章 何かを始める前、知っておきたいこと〜考え方〜
第2章 何かを始めるとき、やること〜アクション〜
第3章 何かを始めた後、続けるために
第4章 始めたことを、伝えるために
第5章 人が心を動かす瞬間
第6章 注目を集めるということ
第7章 注目されたときに気をつけること
第8章 人生に目的なんていらない

東京は千代田区にある一風変わった定食屋
未来食堂」をご存じない方向けに簡単に説明すると、東京の神保町にある定食屋です。カンブリア宮殿やガイアの夜明け、WBSなどビジネス系のTV番組や多くのWebメディアに取り上げられられる所以は以下の特徴が理由。
・もとクックパッドのエンジニアが始めた飲食店
・メニューがなく毎日違った「日替わり定食」のみ
・そのため昼食時は着席3秒で定食が出てくる
・店を手伝えばただで定食が食べられる「まかない」制度がある
・一風変わった(褒めてる)女性が一人で切り盛りしている

どこかで記事を読んだのか、「未来食堂」の名前は聞き覚えがあったので、奥さんが買ってきておいてあったのを何気なく読み、予想に反する内容に一気に読んでしまった。

侮ってました、ゴメンナサイ
最初は主婦というか、子育てを終えて時間ができた方がなにか自分にもできることがあるはず♪ みたいなシチュエーションを後押しするような話かと思っていたのですが、これはもう完全なビジネス書でした。確実に「起業」のノウハウが詰まっている一冊です。
目次に記載したとおりだが、何かをやりたいと思ってから始めるまで、始めた後継続させるためにやること、注目を集めるためにやること、集めてしまったらどう対応するかなどが事細かに書いてある。

既存を突き詰めた上で新しいものを生む「しゅ・は・り」
まず自分がやりたいと思ったことをとことん深掘りすること。具体的に言語化して細分化し、誰に対して何をどのようにしたいのか、まるでペルソナを設定するように深掘りしていく。そして既存を徹底的に学んだ上で既存の中にある「当たり前」を疑う。
「やらなければいけないこと」とされていることを疑い、本質のためにそれは本当に「やらなければいけないこと」なのかを考え直すというのだ。例えば定食屋の場合、昼間はメニューが豊富なのが一般的。焼き魚定食や丼などを揃えるのが一般的だが、実は開店直後のオーダーの実に9割以上がオーダーするのが「日替わり」だというのだ。
「日替わり」は店の方も準備しているのですぐに提供することができる。しかも値段は少し安めの値段設定なので来店者はこぞってオーダーする。そのためすぐに売り切れるので、そのあとは厨房が戦場になるという。
だったら、「日替わり」をちゃんと利益の出る値段設定にして多く用意したほうが利益率は上がるだろうというのが筆者の発想。しかも同じものを同じルーチンで作るので厨房の作業効率も高く提供時間が短くてすむ。だから来店者もストレスを貯めずにすぐに昼ごはんにありつける。ビジネスとしての効率性と利益性を確保しつつクライアントに喜んでもらうためのサービスを開発しているわけだ。いいことづくめである。
こういう常識を疑って既存を分解し再構築し、そこに少しだけ新しいエッセンスを付加する。発明は既存と既存の掛け合わせといったのは誰だったか。

常識や周囲にとらわれずやりたいことをやる あれ?どっかにいたぞ?
満点でなくていいからとにかく行動に移すこと。自分を信じて常識や周囲の言葉にとらわれずに行動する。続けてみてPDCAを回し改善していく。そしてそれらを正しく継続して周囲に発信していく。発信することで批判も評判もついてくるが、賛同してくれる人からは応援が得られる。応援してくれる人、常連客がついて利益が出ればそれを世間に還元していく。還元することでまた応援される。
非常に正しいスパイラルが回っている。元エンジニアらしく自分がやりたいことをロジカルに分解し、効率と利益を正当に求めて食堂を運営しているさまは従来の食堂のイメージをいい意味で打ち壊している。こういう周りがなんと言おうと自分が興味を持ったやりたいことをやり続けている人を僕らは知っているじゃないか。まるでホリエモンこと堀江貴文氏の様である。もっとも、彼女は彼ほど敵がいるようではないけれど。

発信しつづける意味 過程を見せる意味
SNSやブログでお店の決算情報を発信し続けていることも「未来食堂」の特徴の1つ。なぜそこまで公開するのか。これは個人的な解釈なんだろうけれど、続けていくための一つの手段なんじゃないだろうか。口にだして発信することで公約とし、自分ひとりの中の目標を他人との約束にしてしまっているのではないだろうか。
例えば、積ん読を解消したくて読書しようと心に決めてもなかなか一人では読むことができなかったりする。その対策として読書会を会社で企画して無理やり読まなくてはいけない状況を作ってしまえば、参加者みんなとの約束になるのでなんとか頑張って読む。
人は、自分との約束はなかなか守れない。だから他人との約束にしてしまう。この発信していく作業はそれなんではないだろうかと思う。

企業や個人のブランディングに通じる
目指すものを決め、掘り下げて学習し、とにかく行動に移し、改善しながら続けて、発信していく。これはまさに企業や個人のブランディング構築に通じるものだ。しかもこの書籍は具体的に筆者の行っていることが記載され、1つ1つは誰でも真似しようと思えば真似できることである。そういう意味で前出のホリエモンの「多動力」と変わらない。
署名は「やりたいことがある人は」だが、自分を確立し「なりたい自分になる」ことを目指す人は、手にとってみることをおすすめする。

やりたいことがある人は未来食堂に来てください 「始める」「続ける」「伝える」の最適解を導く方法

この記事が参加している募集