マガジンのカバー画像

詩人荒廃

6
運営しているクリエイター

記事一覧

星なき夜の散文抄

星なき夜の散文抄

今はただ、俺の目に映る君の表情が、濁らなければそれでいい

立ち尽くす夜は、どこまでも広く、ただ長い
無音の闇に吹く紫煙は、立ち上りて行く先を知らない

打ち尽くす度、猛る心を蠢く老木の枯れ枝が嘲笑い
声にもならない叫びは遠く掻き消される
そういう夜を、ただ惑う

骨脈、蠢動、嗤う末節
眼前には枯木
影は無様
警告の音叉
白骨は重く
肉は爆ぜ
関節は軋み
風は遮る
沈黙は止まず
草木は唄わず

もっとみる
ついばむ。

ついばむ。

ちょっとした遊びをやってる。
ついさっきまでウイスキーロックで静かちびちび飲んでいた男が、急に動き出す。
たまたま隣で飲んでいた女は眼を疑う、そんな遊びって、あるのかな。なんて。

バーテンダーは一瞬だけ迷い、次々に酒を入れる。ステア、たったそれだけ、嘘はつけない。男はじっと所作を見つめる。真剣な眼差し。
カクテルグラスに華は咲かない、だがしかし、この高級ブランド品のような艶は一体なんだ。その後、

もっとみる
まぬけな獣の詩

まぬけな獣の詩

どうしても閉めきれない扉があって。
閉めても閉めても、ほんの少しずつ隙間が開いてしまって。
そこからたまに、透明な蜘蛛だとか、ハサミムシだとか、百足だとか、そういった不穏な者たちが入って来て。
近づいて手を掲げると、緩い微風が吹いていて、肌をばっちり露出した蛾が時々入って来て。

いつもだったら毛を逆立てて、眼を血走らせて、威嚇しているつもりであるのに。

扉を閉めようとする獣の姿は、どうしてもま

もっとみる