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まぬけな獣の詩

どうしても閉めきれない扉があって。
閉めても閉めても、ほんの少しずつ隙間が開いてしまって。
そこからたまに、透明な蜘蛛だとか、ハサミムシだとか、百足だとか、そういった不穏な者たちが入って来て。
近づいて手を掲げると、緩い微風が吹いていて、肌をばっちり露出した蛾が時々入って来て。

いつもだったら毛を逆立てて、眼を血走らせて、威嚇しているつもりであるのに。

扉を閉めようとする獣の姿は、どうしてもまぬけで、哀れで、隙だらけで。
暗い部屋で唸りを上げる獣は、みれば置いてけぼりの猫のよう。


放ちきれない時、書ききれない時、抜けきれない時、どこかまぬけで、何かを期待しているような、物欲しそうな顔をしている。
そんな時は感覚をすべて曖昧にもって、断定をすべて排して、ぼやけて、ぼやけて言葉に数滴の雫を垂らして。

そうしてようやく、ぼやけた何か、という形ができる。そういうの好きな人、いるだろ?私も、そう。

サポートはお任せ致します。とりあえず時々吠えているので、石でも積んでくれたら良い。