多くの人が持っている八つの誤った見解
私たちが陥りやすい見解(考え方)には、八つ(グループとしては四つ)ほどあります。別に八つだけに限定することもないと思うのですが、昔から八つと言っていますので、まずは八つについて考えてみましょう。
[生と滅]
生じるとか滅するというのは、いわば始まりと終わりを言っています。始まりと終わりがあるということは、その間に変わりゆくものがあると考えられます。敷衍すれば、生も滅もまた変わりゆく一形態なのです。
このことを仏教では、「諸行無常」(全てのものは、常なるものは無くして変わっている)と言います。そうすると、生滅も無いと言っていいわけです。だから、不生不滅なのです。仏教では、目の前に現れている現実が「不生不滅」なのです。ちなみに、常なるものは無くして変わっているのは、条件や環境(これを縁と言う)に依って起こっています。これを、「縁起」と呼びます。
[常と断]
常は、ずっと変わらないことを意味します。断は絶えることを意味します。これらは、上述の生滅と同じと考えていいでしょう。
[一と異]
一は、唯一絶対の根本原理を意味します。異は種々雑多な現象を意味します。これらもまた、前述の生滅と同じように考えていいでしょう。
[来と出]
来は、これから来ると言う未来を意味します。出は、すでに去った過去を意味します。実際には、未来も過去もなく、「いまこの時」だけが変わっていくのです。
四つのグループ(すなわち八つ)は、全て否定できることがわかります。いや、否定すべきことなのです。だから、仏教では「不生・不滅、不常・不断、不一・不異、不来・不出」のように否定して、とらわれることのないように戒めています。とらわれなければ、正しい見方が得られるわけです。
(注)八つを否定して正しい見方をすべきだと言うことを、
八不(はっぷ)中道と言います。
さらに、否定だけでなく、喜怒哀楽のどれにもない時「中」と言い、節度を守る時「和」と言います。要するに、中和の精神が大事だと言うのです。比較したり極端に走るのではなく、中道の見方があることを再認識すべきなのです。
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