見出し画像

横隔膜(Diaphragm)

今回は呼吸運動の中心である、横隔膜について。

横隔膜は吸気の主動作筋ですが、大腰筋との連結だけでなく内臓との関係も深く、全身に影響を与えている筋肉の1つです。

抽象的な表現になりやすい横隔膜ですが、具体的な部分で整理できるところは整理しておくと臨床でもロジックがつながりやすくなると思います!

それではさっそくいきましょう!

横隔膜の起始停止

画像1

起始:胸郭下口の全周で、腰椎部、肋骨部、胸骨部に分かれる
停止:腱中心
支配神経:横隔神経C3~C5
作用:胸腔を拡大させて吸気を行う
(基礎運動学第6版)
起始:胸郭下口の全周で、腰椎部、肋骨部、胸骨部に分かれる
 腰椎部:内側脚と外側脚にわかれる。内側脚は第1~4腰椎体から起こる。
     外側脚は第2腰椎体・肋骨突起と第12肋骨の先端との間に張る。
     (内側/外側弓状靱帯の2つの腱弓から起こる)
 肋骨部:第7~12肋軟骨の内面から腹横筋の起始と交叉して起こる。
 胸骨部:剣状突起と一部は腹横筋腱膜の内面から起こる。
停止:腱中心
支配神経:横隔神経C3~C5(副横隔神経)
作用:円蓋を下げることで胸腔を拡大させて吸気を行う
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:胸骨、肋骨、腰部に付着する。
 胸骨部:剣状突起後面
 肋骨部:下位6本の肋軟骨と肋骨の深部
 腰部:腰椎と2つの腱膜弓、内側/外側弓状靱帯
停止:腱中心
支配神経:横隔神経C3~C5
作用:胸腔底の引き下げ、下部肋骨の挙上
(オーチスのキネシオロジー第2版)

胸郭の外側に広く付着を持ち、停止部は腱中心という特殊な筋ですね。

起始部を見ればわかりますが、腰椎、肋骨、胸骨それぞれに付着するため、横隔膜の機能低下の原因は非常に多岐にわたります。

例えば、腰背部の筋緊張亢進(腰椎の可動性低下)や大胸筋の短縮(肋骨の可動性低下)、腹斜筋の筋力低下(肋骨下制不足)などが考えられます。

もちろん筋肉による影響だけでなく、自律神経や内臓などからも多大な影響を受ける横隔膜について深掘りしていきましょう。

筋機能

画像2

横隔膜の主な機能は、胸郭を拡大して息を吸うことです。

横隔膜の中心は腱状になっていて、収縮によってその腱中心が下に押し下げられることで胸腔内を陰圧にして息を吸い込みます。

その際に横隔膜の下にある肝臓や胃が押し下げられることで腹腔内が上から圧迫され、腹部が膨らみます。

これを腹式呼吸と言います。

横隔膜は肺活量(強制吸気)の約60%と、一回換気量(安静吸気)の約70%に関与すると言われています。

安静吸気では横隔膜の他に外肋間筋も働いているという報告が多く、肋骨の上げ下げによっても胸腔を広げています(胸式呼吸)。

また、Zone of Appositionと呼ばれる横隔膜の運動部位があります。

これは横隔膜が下降できる範囲のことで、下部胸郭と腹筋群の機能によって変動します。

つまり、肋骨は柔らかく、腹筋はしっかり使えるようにすると横隔膜は働きやすくなるということです。

論文もたくさん出ていますので、興味がある方はZone of Appositionで検索してみてください。

腹式呼吸と胸式呼吸

画像3

一般的に腹式呼吸が良い、胸式呼吸は良くないと言われることもありますが、個人的にはどちらもできる状態が最も良いと考えています。

前述したとおり、腹式呼吸は主に横隔膜の収縮によって内臓が押し下げられることで腹部が膨らむ呼吸様式です。

一方胸式呼吸は肋間筋や斜角筋などの呼吸補助筋と呼ばれる筋群によって胸郭を膨らますことで行う呼吸様式です。

腹式呼吸では内臓も大きく動くため、内臓のマッサージ効果もあると言われており、腹筋群にも刺激が入るので良いと言われています。

胸式呼吸は呼吸補助筋の作用に頼った方法なので、胸郭が硬くなりやすく、頚部周囲の筋緊張も高まってしまうのであまりおすすめされていません。

しかし、スポーツ動作などのように激しい運動中は胸式も腹式も同時に活用できた方が一度に取り入れられる空気の量が増えることになるので、私はどちらもできるように選手には指導しています。

パラドックス呼吸

しかし、一番気をつけなければならないのは、パラドックス呼吸と呼ばれる呼吸様式です。

これは吸気で胸が膨らみながらお腹が凹み、呼気では逆になる呼吸です。

この方法では横隔膜が機能しておらず、腹筋群も弱化している恐れがあります。

無意識にパラドックス呼吸になってしまっている方がほとんどなので、もし発見したらまずは呼吸法から修正していきましょう。

横隔膜や腹筋群が機能的に働かない状態でスポーツを行うと、
疲れやすい、休んでも疲労がとれないという自覚症状のほか、慢性障害や肉離れなどにも間接的に関係してしまいます。

まずは胸式も腹式もできるように練習しつつ、パラドックス呼吸にだけは気をつけましょう!

筋膜連結

画像5

横隔膜は、ディープ・フロント・ライン(DFL)に含まれます。

DFLは、

後脛骨筋⇒(中略)⇒内転筋群⇒大腰筋⇒横隔膜⇒(中略)⇒舌骨筋群

と続いています。

内転筋や大腰筋との筋連結は有名ですので意識している方も多いのではないでしょうか。

しかし、後脛骨筋との筋膜連結を意識している方は少ないかもしれません。

後脛骨筋は足部のアーチを上げる筋として有名なので、偏平足では横隔膜への影響も考える必要がありそうです。

また、外側の筋群を緊張させて立つ姿勢の方も内転筋の機能不全から横隔膜へ影響があるかもしれません。

大腰筋との関係性はこちらから。

経絡

画像6

経絡としては腎経との関連が深いと考えられています。

腎経は足裏から脚の内側を上行し、体幹部も中央近くを通っていきます。

DFLとほぼ同じ走行なのがわかりやすいですね。

腎臓は体内の水分をろ過する臓器です。

そのため食事や水分摂取などが腎臓に関係していることはなんとなく想像つくと思いますが、それが横隔膜へ影響しているかもしれないと考えてみると発見があると思います。

腎臓は腰椎の高さで後方に存在しているので、腰痛へも関係しますし、大腰筋へは直接的に関係します。

横隔膜の周辺組織

画像4

横隔膜は多くの内臓や血管、神経が周辺にある非常に多部位に影響を及ぼす筋です。

横隔膜の上には左右の肺があり、下には右に肝臓、左に胃があります。

そのため、深呼吸をすると胃のマッサージになると言われています。

内臓疲労は多くの人の不調に関係していることが多く、深呼吸はその対処法の1つとして有効です。

逆に肝臓や胃の不調は横隔膜を硬くする原因にもなり得ます。

飲みすぎや食べ過ぎなどは呼吸を浅くしてしまう可能性があるので、注意しましょう。

また、腹大動静脈、食道も横隔膜を貫いています。

腹部の硬さが血流、つまり循環に大きな影響を与えていることは知っている人も多いと思いますが、横隔膜の硬さも循環に大きな影響を与えています。

また、腹腔神経節が横隔膜の付着部付近にあり、自律神経への影響もあると考えられます。

このように、横隔膜を大きく動かして呼吸を深くすることは筋、血管、内臓、神経系と非常に多くの恩恵があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

普段あまり意識してアプローチすることが少ないかもしれない横隔膜ですが、実は全身にとても重要な役割を果たしています。

ただ息を吸うだけの筋肉ではない横隔膜。

今回の記事を読んでぜひ臨床で活かしてみてくださいね!

ではまた!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

各種SNSでも情報発信しています。
ご興味あれば覗いてみてくださいね!

Twitter
instagram
Facebook

トレーナー仲間で日々の気付きをブログにしています。
ご興味あれば覗いてみてください。
《心のストレッチ》ブログ

心と身体のつながりを日々検証し、共有するオンラインサロン、
《心のストレッチ》心身相関Labもぜひご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?