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運命のつくりかた

人生を変えた出会いというと、運命や宿命とか壮大なことを考えるかもしれない。

あの日、あの時、あの場所で…なんておなじみのヒット曲の歌詞のようなドラマの世界をイメージすると思う。


でも、よくよく考えてみればそれは結果論であって、それを人生を変えた出会いに変えたのは間違いなく自分の選択の結果ではないかと私は考える。


だから、”人生を変えた出会い”はそこら中に転がっているものだ。


自分がその勇気さえ示せば。



私の運命の出会いは具体的に話すと22歳の時だ。

その時、私はインディーズレーベルに所属するミュージシャンだった。

唯一の身寄りである病気持ちの父親を地元兵庫県の介護施設に預け、人生を全てを音楽に捧げる覚悟で上京した。

大手企業に楽曲提供してるプロデューサーを師にもち、ミュージシャンの繋がりもそこそこあり、充実した音楽ライフを歩んでいたと思う。


けれどある日のこと、自分の音楽にちょっとした違和感があった。

歌っている時、プレイしている時に”感情を感じなくなった”のだ。



音に込めるべきエモーショナルな部分もさることながら、うまくプレイできない自分に悔しさも、怒りも、喜びも、悲しみも、”何も感じない”のである。


自分の心のことだ、すぐに治ると考えた。


けれどその状態が3日続き…1週間続き…1ヶ月続き…

3ヶ月続いた時にはもう限界だった。


私は、それまで音楽の繋がりのあった関係を全て断つことにした。

師匠とは喧嘩別れのような形になった。


人間関係も、自己投資も、仕事も、全てを音楽に捧げていた私はアイデンティティを失い。

何をすれば良いのか、生きている意味すら分からず、死ぬことが頭に浮かんだ。



そんなボロボロの私が唯一相談した相手はとある音楽バーのマスターだ。

その時、なにも言わずにマスターに渡されたのは一冊の本だった。


あからさまに自費出版で発行されたと分かるその表紙はパッと見、興味をそそられるような印象ではなかった。

普段の自分なら読まずに棚の奥にしまって、そのまま一生触れないようなものだ。

けれど音楽をやめて何もすることのなかった私は、自宅に持ち帰ってその本を読んでみることにした。


それはとあるジャーナリストがとあるセラピストに出逢い、そのセラピストの臨床の現場に密着した時のエピソードが記されている本だった。

どうせ胡散臭い人生論を語ったものだろう、と斜に構えて読み始めた本だっただが私はその本にすぐに衝撃を受けた。


当時は熱心な読書家で多くの書籍を読んできたが、その本は私のそれまでの常識を遥かに超えたものだった。

その書籍の凄さを言葉で表すことはとても難しいが、著者の人物の語る世界観や哲学は私にとって全く知らない世界だったのだ。


私はその本で、絶望のなかに光明を見出したような気分になった。


その本に記されているセラピストの先生に会ってみたいと思ったが、残念ながらその本にはその先生の名前もどのようなセラピーをやっているのかも載っていなかった。

それに、本の内容から察するにその先生は世界中を旅している人らしかったからまず会うことは不可能だと思った。


この本だけでも充分な出逢いだったのだが、驚いたのは”その後だ”


本の影響を受けて私は久々にセラピーを受けたくなった。

音楽を失った自分の心を癒し、どんな形であれ、あらたな一歩を踏み出さなければならないと思ったからだ。

東京でセラピーを受けようと思ったのは初めてだったので、私はネットでセラピーを受けられるサロンを探してみた。


そこで少し気になったサロンに予約し、セラピーを受けた。

そのサロンで受けたセラピーはこれまで受けてきたものと明らかに次元が違うと感じた。

もしかしたら、ここは富裕層向けの隠れ家サロンでセラピー料金の桁を私が見間違え、あとで払えないほどの金額を請求をされるのではないかと思ったほどだ。


セラピーのセッション終了後、

私を担当してくれたセラピストと話をしてるとその人が一冊の本を私にくれてた。


もちろん、その本は”あの本”である。


私は当然驚き、なぜこの本を持っているのかと尋ねると早い話

この時お世話になったセラピストが”その本の先生のお弟子さん”だったのである。


都内に星の数ほどあるサロンの中から、私は今最も会いたい人と繋がっている人がいるところを偶然、選んだのだ。



私はその場でセラピストになることを決心した。



そして、その半年後、書籍に書いてあった先生に会うこともでき、直接指導を受けることも出来た。



今はセラピストの肩書きは名乗っていないが、今でもあの本は私の自宅にあり、定期的に読み返している。




人生を変える出会いも

あの日、あの時、あの場所での選択の結果である。

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