見出し画像

あなた(たち)の影を見送る僕は、


寒い冬は過ぎて、ヒートテックと少し厚手の服があれば一日を過ごせるようになって、

これを読んでいるあなたはいかがお過ごしだろうか。



「春とは出逢いと別れの季節」なんてよく聞くけれど、インターネットが人の環の結び目を作り、ご縁を自らデザインできるようになった今時期、

先の時代の人たちが経験していた「出逢いと別れ」と、今僕らが経験する「出逢いと別れ(もしかするとそれは”出会いと分かれ”?)」って必ずしも同じものではないのかもしれない、

ストーリーに流れる同級生たちの、スーツや袴で着飾った姿を見てボーっとそんなことを考えていた。


そんなことをまた考えてしまったから、もちろんご時世もあって、あとあと私のお財布はまだ冷え込んでいることもあり、同級生との「社会人になる前に一度くらい飲んでおこうの会」的なものにはあまり参加できなかった。

唯一大学のゼミの集まりには参加して、なんだかんだ卒業旅行にも行き、卒業式の後の記念品お渡し会、男子勢(3人)で宅飲みもした。

正直、卒業しない自分が参加することに引け目というか、そもそも3年で休みがちになってしまったことへの負い目もあって、あとバイトもあって、あまり乗り気ではなかったのだが、

しっかり楽しくて、しっかり寂しくなれたから、行ってよかった。



結局私は、この「分かれ」に寂しさを感じてしまった。

多分それは、遠くに行ってしまうとか、忙しくて会えないとか、そんな分かりやすい変化に対する心の動きではなくて、

責任を背負わずにただただ楽しさと不安を享受できる、"学生"という上着を羽織ったみんなと対等でいられる、そんな時間の終わりを感じたから。


ゼミの同期たちとはそこに向き合う時間を自分の中で作れたから、多分きっと悔いはあまりない、ほとんどね。

でも、高校から仲が良いあのこやあの人やあいつら、

よく一緒に講義を受けてたあのこやあの人やあいつら、

明け方の浜辺で昇る太陽を一緒に見たあのこやあの人やあいつら、


そんなに友達が多い方ではないのだけれど、

いやだからこそ、君が大人になってしまう前に、もう一度会いたいと思えるあなたに、会っておけばよかったなあ、なんて、

よーいドンが聞こえる4/1になって後悔してしまうのは、何事もギリギリになってしまう私らしいとも思う。




これから先、

「久しぶりーいつ以来だっけ?」

なんてお決まりのあいさつを僕らは交わして、

「なんか雰囲気変わって大人な感じするわ」とかバカの一つ覚えみたいに言ってしまう僕に、

「そんなことないよ」ってあなたは返してくれるんだろうけど、


それはお世辞でも煽りでもなんでもなくて、

後ろを歩く僕の目にぼんやり映るその影は、

きっと少し背が高くなっているから、


最後は、

「また近いうちに会おうよ、次の日休みならいつでもいいよ」

なんてお決まりのジョークを分かれのあいさつにしてほしい。


僕はもう一歩うしろから、ちゃんと上着を脱げるようにもがいてみるから。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?