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大企業で新規事業を推進するために、プロジェクトリーダーに必要なマインドセット

新規事業をリリースできるかどうかは、「プロジェクトリーダー」に全てがかかっているといっても過言ではない。
特に大企業では、頻繁に「社内からの反対」や「横槍」が入るため、プロジェクトリーダーがこれに耐えられないと先ず成功しない

自分の場合は、東京海上日動や三井住友海上、損保ジャパンといった大手損保が戦後何十年も牛耳ってきた「自動車保険」の業界に風穴を開けるべく、数年がかりで開発した新しい自動車保険「リペア保険」を、2021年8月に市場へ投入することができた

リリース後に「週刊ダイヤモンド」や自動業界メディア「Response(レスポンス)」でも取り上げて頂き、密かに話題になったのはとても光栄なことだ。

今回は、自分の経験から得られた「大企業で新規事業を推進する上でプロジェクトリーダーに求められる3つのマインドセット」を紹介させて頂きたい。

「社内からの反対」に戦う覚悟を持つ

経験がある人は容易に想像がつくだろうが、何か新しいことを始める時は必ず反対勢力が湧いてくる

自分の場合特に困ったことは、異動により赴任してきた直属の上司が反対勢力筆頭だったことだ。この上司は本来、自分と一緒に先頭に立ってプロジェクトを引っ張る立場のはずが、社内の上層部へプロジェクトを打ち切ることを説得して回っていたのだ。

プロジェクトリーダーである自分にとっては何とも悲しい話だが、その上司には上司なりの考えがあるため、最初のうちは何度もコミュニケーションをして仲間に引き込むトライをした。

だが、話をするにつれ、上司の反対している理由が「自動車保険のことがよく分からなくて面倒に感じているから」であることが分かってきた。自分にとっては、このマインドは許せない。
結果、この上司とは何十回と喧嘩を繰り返し、見かねた部長がこの上司をプロジェクトから外す始末となった。

一方、自分が上司へ立ち向かったことは、一部のプロジェクトメンバーからの信頼アップに繋がり、結果、チームに一体感をもたらすことになった

また、自分の場合は他にもこのようなことを言われた。

  • 「よくこんなプロジェクトに力注げるね。本当に成功すると思ってるの?笑」

  • 「これ(=プロジェクト)まだやってたの?笑 最近聞いてなかったからまた途中で終わったのかと思ってた!」

  • 「どう考えても儲からないでしょ。。」

  • 「○○本部長が、この前このプロジェクトのこと『これは失敗する』って言ってたよ。笑」

  • 「こんなプロジェクトがうちの会社(=社内)で通るわけないじゃん。

悲しくなるような言葉を受けてきたわけだが、その反対勢力をいちいち相手にしていたら何も前に進まない大半は受け流しつつ、時には相手が年上だろうと平然と言い返して戦うマインドが必要である。


「コントロールできること」に集中する

新規事業のプロジェクトでは、必ずと言っていいほど定期的にトラブルが発生する。しかし、プロジェクトリーダーがトラブルを全て真に受けていたら、他のメンバーにも不安を与え、モチベーションの低下にも繋がりかねない。

自分のプロジェクトの場合は、株主(4社)のうち1社が急に「金融庁と幾つか話すことがあるから、刺激を与えないように一旦プロジェクトを止めてほしい」と言われ、半年ほど足止めを食らったことがあった。

当時はまともな説明もなく、正直全く理解ができなかったが、大企業だとこのようなことが平然と起こってしまう

金融庁

自分も最初は頭を抱えたが、途中であることに気が付いた。このような類のトラブルは「自分ではコントロールできない」ということだ。

「新型コロナウイルスが広がったらどうしよう」と不安に思ったところでウイルスの拡散は止まらないことと同じだ。
自分たちにできることは、手洗いうがいやマスクの装着、ワクチン接種といった「コントロールできることだけ」であり、コントロールできないことにストレスを感じるのは無駄なのである。

実際に、自分たちで「コントロールできること」と「コントロールできないこと」を明確に区別できた時から、無駄なストレスがなくなってプロジェクトはスムーズに進んだ。

様々なトラブルが発生する新規事業においては、「コントロールできることにリソースを集中させること」は極めて重要である。


「自分で意思決定する」ことを怖がらない

プロジェクトリーダーは、物事の大小はあるが、頻繁に意思決定を行う場面が訪れる。勿論、全てを自分で決められるわけではなく、「システム開発」のような大規模なキャッシュアウトが発生する事案等は、上層部からの承認を要する。

とは言えやはり、基本的にはプロジェクトリーダーが示した方向にプロジェクトは動いていくものである。

しかし、大企業のプロジェクトリーダーでよくあるのが、意思決定の場面が訪れる都度「社内で確認してから回答します」と言って持ち帰るケース。
あまりにも決めない上司に対して、「いや、あんたがリーダーやろ!!」って突っ込みたくなる場面を経験したことがある人もいるだろう。

例えば、協業パートナーからA、B、Cの3つの提案を受けた場合、あなたがリーダーであればどのような対応をするであろうか。

自分が見てきた限り、大企業のリーダーの多くは自身が「Aが良い」と思った時でも、責任を持ちたくないために「持ち帰って確認します」と言ってその場で決めることができない。
しかし、提案したパートナーの立場からすると、その場で「Aでいきましょう!」と決めてくれた方がプロジェクトにスピード感も出て「この人であれば大丈夫だ」と信頼感の醸成に繋がるはずだ。

仮にその場で自身に決裁権限がなかったとしても、パートナーには「Aでいきましょう!」と言って、社内に戻ってからAに持っていけるよう全力で説明と根回しを行うのがプロジェクトリーダーの仕事ではないだろうか。

自分がプロジェクトリーダーになったからには「自分で意思決定する」ことから逃げてはいけない責任を取りたくないのであれば、最初からプロジェクトリーダーになんてなるべきではないのだ。


新規事業はプロジェクトリーダーの「マインド」と「能力」によって成功確率がグンと変わってくる。特にマインドは誰でも意識できることだ。

自分も今後、さらなる新規事業を行うことがあれば、これらのマインドセットは忘れずに取り組んでいきたい。

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