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「多拠点生活×パラレルワーク」の報酬はお金?つながり?やりがい?・・・「6つの資本」にどう結びつけるが鍵

リモートワークの普及をきっかけに、「地方で働く」ことと「副業」の組み合わせに関心を持つ人が増えてきました。2020年11月20日の日経新聞でも、普段は首都圏に在住しながら、リモートワークや二拠点生活で地方の仕事をするスタイルに関する記事が出ていました。

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、石川県内でIT(情報技術)に精通した首都圏の人材が活躍の場を広げている。首都圏にいながら副業としてリモートワークで働くほか、一定期間移住して働く人も出てきた。ネットを活用したいが、地方の人材不足に悩む企業の救世主となるか注目が集まる。
「新型コロナで大きい会社でも安泰ではないと感じた」。外資系の一般消費財メーカーに勤める松岡留美さんは金沢市出身で神奈川県に住んでいる。「自分の名前で実績を積んでおきたい」と、11月から副業としてリモートで働き始めた。

この記事を書いている私自身、この数ヶ月間、リモートで地方の産業に関するプロジェクトに携わったり(コロナの影響もあり、現地訪問はせずに基本はWeb会議で全てが進行)、今でも日常のうち20〜30%は東京を離れた場所で仕事をするなど、将来的な移住や多拠点生活を見据えて活動しています。

現在の仕事のお客様は首都圏の企業が中心ですが、リモートで社内外のコミュニケーションも取れますし、何より、自然や空気がきれいな場所で働くのは気持ちがよいものです。これから、東京を離れて過ごす時間の割合をさらに増やし、仕事やプロジェクトの幅も拡げていく予定です。

さて、「多拠点生活×パラレルワーク」をしようとする人が気になることとして、現実的にはお金の面などあるかと思います。移動や住居確保にかかるお金は無視できないものですし、仕事の活動拠点を増やしたときに、どうやって収入を上げていくかという点も考えなければなりません。

しかし、昔から、「仕事の報酬は仕事」という言葉もあります。仕事を通して得られるものは、金銭的な報酬だけではありません。新しい人とのつながりができたり、人に貢献することからのやりがい、といった面もあります。このあたりを言語化したいと思い、今回の記事を書いています。

全ての活動は「資本」につながっている

例えば、仕事をして金銭的報酬を頂くというのは、自分の時間という「資本」を事業活動や業務に投入し、「アウトプット」としてお金という対価を頂くことになります。

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しかし、「資本」には、自分の時間(労働力)だけでなく、いろいろな種類があるはずです。作家の橘玲氏が著書『幸福の「資本」論』で書いているのは、「金融資産(資本)」「人的資本」「社会資本」という3つの資本です。以下、amazonの引用を転載します。

橘氏は、「幸福」は、しっかりした土台の上に設計するべしとし、その人生の「インフラストラクチャー」を前述の3つに対応させて、以下に求めます。
「金融資産(資本)」「人的資本」「社会資本」。
この3つの資本の組み合わせによって生まれる「人生の8パターン」によって、すべてのひとびとの「幸福」のカタチが説明できるとしています。

言葉の定義として、ここでいう「金融資産(資本)」とは、自由に利用できる財産(現金、貯金、不動産など)を指しています。「人的資本」は労働者が有する生産に有用な能力(労働、知識、技能など)です。「社会資本」は人と人の信頼関係(友人、知人、人脈など)になります。

詳細の解説は『幸福の「資本」論』に譲るとして、3つの資本を元手にどう活動するかによって幸福度が決まってくる、というのは面白い視点です。

しかし、私は、この3つだけでは説明できない現象が増えてきていると思います。

現代社会における6つの「資本」

橘玲氏が提唱している3つの「資本」に対して、私はさらに3つを加えたいと思います。

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まず、「時間資本」についてです。特にコロナ禍の影響で、「時間」に関する人々の概念が大きく変わりました。いきなり時間が増えた人、急激に忙しくなった人がいます。会社の要職に就いている経営幹部からは、「毎日、朝から晩まで、休みなくWeb会議が続いている。食事やトイレの時間もないぐらいだ。以前はタクシー移動している間に色々できたのに、身動きが取れなくなった感がある」と言った声も聞きます。

そして、いま、書店では「ストレスフリー」「疲れない」というのが一大トレンドです。ストレスのかかる状況下で、心身の「健康資本」を損なうことに悩まされる人が増えています。本だけでなく、リモートワーク用に、価格帯が高めのオフィスチェアがかなり売れているのも、「身体が疲れないように投資をする」という方が増えているということでしょう。

また、「セルフブランディング」という言葉は以前からありましたが、最近になって、成果をあげているビジネスパーソンがYoutubeやnote、twitterなどに取り組み始めるケースが増えています。例えばtwitterでフォロワーを増やす方法をWebで検索すると、「プロフィールをどう書くかが重要」という主張が大半です。インフルエンサーの田端氏は、著書『これからのお金の教科書』で「名前の出ない仕事はするな」という主張をしています。キャリア形成をする上では、実績を表に出せることが重要、ということでしょう。これがすなわち「実績資本」の話です。

私は、アフターコロナの生き方・働き方を考えるうえで、「金融資産(資本)」「人的資本」「社会資本」だけでなく、「時間資本」「健康資本」「実績資本」を考える必要性が高まってきたと感じます。

6つの「資本」を増やす、様々なワークスタイル

冒頭に掲げた「普段は首都圏に在住しながら、リモートワークや二拠点生活で地方の仕事をする」というスタイルは、6つの資本に照らし合わせると、こんなふうに説明できます。

地方の案件においては、報酬面で首都圏の仕事と比べると単価(金融資産)は小さいかもしれませんが、そこで生まれた「人のつながり」(社会資本)は貴重な財産になります。また、特に40〜50代あたりのビジネスパーソンにとっては、これまでの仕事で培われたスキル(人的資本)を活かしてどんな貢献ができるかを知ることができ、結果として、自分自身のブラッシュアップにつながります。さらに、二拠点生活を実現する過程において、ある程度の自由(時間資本)が効くためのやりくりをすることで、活動時間を増やす感覚が養われます。実際に移住が実現できれば、空気のきれいな場所で生活することによって心身の状態(健康資本)が良くなりますね。移住までいかなくとも、自分のスキルや経験が誰かの役に立つという経験は、精神的な充実感(健康資本)を与えてくれます。そして、「普段は首都圏に在住しながら、リモートワークや二拠点生活で地方の仕事をする」ことにおいて一定の成功体験があれば、社外で話せる経験談(実績資本)につながることもあるでしょう。

「多拠点生活×パラレルワーク」の事例以外にも、いろいろなケースが「6つの資本」で語れます。

例えば、時間ができたから副業をするというのも、単純な副業収入(金融資産)の額だけで考えるのではなく、あえて新しい領域へ挑戦することによって、本業では伸ばせないスキル(人的資本)を強化することも可能です。また、大企業に勤務している人がスタートアップの仕事を手伝うことによって、ふだんとは異なる人のつながり(社会資本)が広がります。ただし、気をつけるべきは、働きすぎです。自分の可処分時間(時間資本)や心身の状態(健康資本)が損なわれないよう、バランスを取ったセルフマネジメントが必要です。一方、スタートアップに対して大きな貢献ができれば、(在職中は表に出せなくとも)将来的に「この仕事をやり遂げた」という実績資本が充実していき、キャリアの選択肢が拡がることも期待できます。

ただし、私はいたずらに副業や独立、転職などを勧めたいわけではありません。短期的な追加収入(金融資産)に目を奪われるのではなく、本業の勤務先において、なるべくチャレンジングな仕事や機会に対して自ら手を挙げ(実績資本)、社内ばかりではなく社外の人たちとも積極的に接点(社会資本)を作り、これまでの殻を破る(人的資本)ようなチャレンジをすることは十分に可能です。ただし、その際には、自分の限界を超えないよう心身の状態(健康資本)に注意しながら、大事なことの優先順位を間違えないよう時間管理の能力(時間資本)を一段引き上げることが求められます。

このあたり、今度、12/8 (火) 19:00-20:30@zoomで、「6つの資本を増やしていくためのワークスタイルをどう実現するか?」をテーマにお話します。

ワークスタイルについては、「プロフェッショナルサラリーマン」「売れっ子副業」「仕事を選ぶフリーランス」「雇わない経営者」という4つのタイプについて、別の記事でも書きました。

今は、時代の節目にあり、生き方・働き方を見直す人が増えていると思いますが、「6つの資本」を意識することで、大事な意思決定や将来のプランニングがしやすくなるはずです。

この記事が、皆さんのお役に立てましたら幸いです。

#日経COMEMO #NIKKEI

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