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愚鈍の世界

庭先であんまりくから
首輪の鍵を解いてやった
案の定噛み付いてきた

野良の暮らしが長かったし
出自も知れない憐れな犬なのだから
やむを得まい、それにしても五月蠅うるさ

生まれてこの方野良なのだから
己の親を怨むという概念すらない
愚鈍で阿呆で飯を喰らうばかりの
出自も知れない憐れな犬なのだから
私の掌から外へ出る術も知らない

愚鈍の世界で生きている者は
愛玩の対象にすらならない
そんな憐れな犬を眺めて
侘しさに包まれながら
夜を過ごしている

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