超ハイタッチなエンタープライズ向けカスタマーサクセスの手引き書を公開します(テンプレートダウンロード可能→公開終了)
フルカイテン株式会社にてCOOを務めます宇津木と申します。
以前に書いたnoteで、
というような投げかけをしました。
・エンタープライズの特性
・プロダクトの特性
これらが相まって難易度が上がっているところを、どのように進めているかの『概念』的な内容を書きましたが、今回は具体的にサクセスチームが使っている資料を公開してしまおうと思います。
他社のカスタマーサクセスの方などに本資料を見ていただく機会がたまにあるのですが、大抵の場合、かなり驚かれます。
『ここまでやってるんですか!?』
『もうこれコンサルじゃないですか・・・』
カスタマーサクセスは、お客様のLTV最大化が至上命題であるSaaSビジネスにおいて、
プロダクトと対を成す重要なファンクションですが、通常は一人当たりが持てる社数を多くできるようできるだけ平準化していき、
いわゆるコンサルティングになってくるような部分は受けないか、
プロフェッショナルサービスとして別途費用をいただくケースが多いかと思います。
フルカイテン社もゆくゆくは部分的にプロフェッショナルサービスと切り分けていく予定はありますが、今のところあくまでカスタマーサクセスの領域でかなり入り込んで支援しています。
その観点では、
『ここまでやってるんですか!?』
『もうこれコンサルじゃないですか・・・』
という反応は(『やりすぎじゃないですか・・・』)という意味が含まれていると思っています。
ただ、これはあえて『やりすぎている』というのが弊社の考えでして、
これがさらに『同時に平準化にもつながっている』という状態になってます。
よく分からないかもしれないので実際に見ていただき説明させていただくのが早いと思います。
ぜひ
『エンタープライズ向け高単価SaaSをハイタッチなカスタマーサクセスで支援している』
という同志にとって、本資料やその考え方が参考になればと思います。
フルカイテン・サクセスチームが使っている『成果支援計画書』
フルカイテンのカスタマーサクセスチームがお客様のサクセスを支援する上で、一番の土台となるのが『成果支援計画書』です。
成果支援計画書とはその名の通り、フルカイテン利用開始から半年間の成果の支援内容をガイドラインとしてまとめたものです。
主には以下をまとめたものになります。
プロジェクト体制
ご利用開始後の流れ
導入目的と課題
改善ロードマップ
利用シーンの他社事例
マイルストーン
会議体と各種テンプレート
この中から、特に重要なトピックにフォーカスしそれぞれどんなものをどんな意図があってどうまとめているか、実際にこれを1から作って改善を続けているサクセスメンバーの生々しい声も含めて解説します。
テンプレートもダウンロードできますので実物もご覧ください。
(※記事冒頭にあります通り公開終了しました)
1、プロジェクト体制
双方のプロジェクトの体制、それぞれの役割を明確化します。
導入企業には以下の役割のアサインを依頼します。
プロジェクト評価者
利用についての評価
導入結果についての評価
契約更新のご判断
プロジェクト推進者
プロジェクトを成功に導くリーダー
利用部門の意見集約
弊社と活用方法の議論
社内への利用推進
定期mtgでのアクション振り返り
今後アクション検討
実利用者
実際に利用いただく各部門の方
主に上記の3つのポジションのアサインを依頼しますが、それぞれが非常に重要な役割になっています。
FULL KAITENのような高額で経営課題にアプローチするようなツールの場合、決済や更新の判断は社長や役員レイヤーの方がすることが多いです。
このような上層レイヤーの方にとってのITツールに対する重要な意思決定基準は費用対効果です。
ここで、カスタマーサクセスメンバーが実利用者とばかりコミュニケーションを取っている場合、『実利用者は利用に満足している』という情報は得られていたとしても、『経営メンバーから見ると費用対効果が合ってない』と判断され、突如解約の申し出がくることがあります。
こちらからすると寝耳に水状態です。(実際に弊社でもありました)
本当に費用対効果が合ってない場合は力不足でやむなしとまだ納得できますが(実際は悔しくてしょうがないですが)、中には本当は効果が出ているのに実利用者がその効果を上層部にうまく説明ができず、割りに合っていないと判断され解約の意思決定をされるケースもあり、これは双方にとって不利益です。
他にも、導入してすぐに効果が出ることは滅多にないですが、上層部との期待値コントロールができておらず、『すぐの結果が出てないから』ということで解約の意思決定をされるケースもあります。
ですので、プロジェクトに決裁レイヤーの評価者をアサインいただき、カスタマーサクセスチームが評価者に対し説明責任を果たしていくことが重要です。
規模が大きなクライアントの場合には、評価者にも階層を分け最終評価者という形で役員層を巻き込んでいきます。
また、プロジェクト推進者には、カスタマーサクセスの支援が終了した後に、カスタマーサクセスが行っていたことと同じことができるように導いていきます。
(例えば会議のファシリテートや決裁レイヤーへ導入効果を説明できるようになっていただく)
実利用者は特に初期のスモールスタートフェーズでは、社内でも優秀なメンバーのアサインを依頼します。
見たことも聞いたこともないツールをいきなり使わされるわけですが、社内で結果を出している方は新しいことへの挑戦意欲が高かったり、アンラーニングする力が高いことが往々にしてあります。
最初に使っていただき結果が出てくると、他のメンバーも追随しやすい環境が出来上がってくるため、フットワークの軽い優秀なメンバーのアサインが重要になるわけです。
この構図は、FULL KAITENに限らず企業をDX推進していく上で大事な点です。
DXというのは、ITツールを導入することではなく、業務をDX化していくことでより生産性を上げ成果を上げていくことですが、トップが現場に丸投げして任せっきりでは決してうまくいきません。
とはいえ、優秀な若手にある程度権限を与えて動いてもらうことは重要で、同時にトップもしっかり定点観測していき一緒に軌道修正をしていく、必要であれば社内をダイナミックに動かす(または動かす権限を与える)、そうすることで初めて本当の意味のDX化に向かっていきます。
弊社のクライアントでは、FULL KAITENの利用具合を人事考課に入れようとしている企業や、定期的な理解度テストを実施している企業もありますが、DX化に向かう過程では思い切ったルール変更や一定の強制力も必要になります。
場合によってはカルチャーすら変えていく必要性も求められますが、これをやるにはトップが関わって動かしていくしかありません。
だいぶ話が逸れましたが、体制の目的は以上です。
▼実際のカスタマーサクセスメンバーの声
2、ご利用開始後の流れ
ここではよくある失敗例をお伝えします。
最初に釘を刺す形になりますが、これもとても重要です。
オンボーディングでこけるとその後のリカバリーはとてもパワーを要します。
フルカイテン社も御多分に洩れず何度も失敗してきましたが、失敗要因はある程度パターン化されていることに気づきました。
お客さんだって高いお金払って導入しているのだから成功したいですし、
失敗例が先にわかっているならそれを避けようと動けますよね?
なので最初にそれをはっきり伝えてしまうのです。
3、導入目的と課題
ここもとても重要です。
ここを間違うと日が経つに連れてずれが大きくなり取り返せなくなります。
前回のnote記事にて、『ビジネスイシュー、プロブレム、ソリューション、ベネフィット』の重要性について記載しましたが、ここがまさに該当する部分です。(※ 詳しくは前回のnote記事をご覧ください)
また、実際のキックオフの現場では、この部分は特に推進者の方がプロジェクトメンバーに向けて話してもらうようにします。
自分事化してもらうためですね。
この導入目的と課題はシンプルに1ページにまとめられているのですが、ここを導き出すためにセールス段階から相当ボリュームの業務ヒアリングを行っています。
セールスの段階からサクセスの支援は始まっているのです。
▼実際のカスタマーサクセスメンバーの声
4、改善ロードマップ
これまでの箇所はいわばツール導入のための前段の認識合わせ・土台作りでして、
ここからのタームが実際の支援内容になっていきます。
まず初めに、
どの業務を
どんな目的で
どのように
どれぐらい
変化させていくかを定義します。
改善すべき業務ポイントはヒアリング過程でたくさん出てくるのですが、
同時多発的に改善に乗り出すと収拾がつかなくなり失敗します。
よって優先順位づけをするのですが、その優先度の意思決定において
『改善した時のインパクトの大きさ』
『実行の難易度』
の2軸を元にプロットし決めます。
一番初めにやるのは改善のインパクトが大きいものが理想ですが、小売業の場合時期によってフォーカスする業務が異なったり、確かにインパクト大きいが実行するのに難易度が高いものがあったりするので、それを加味して優先順位をつけるのです。
ここなどはサクセスメンバーの腕の見せ所でもあります。
さらに、このタームにおいて一番重要で一番難しいのが『各業務のKGI/KPI/評価方法』の策定です。
これもよく起こることなのですが、『使い始めたはいいが何がどう良くなっているのか定量化できない』ということが発生します。
特にFULL KAITENのように業績改善を目的とした高額ツールの場合、やはり定量的な変化によるROIの立証が必要になるのですが、実際の現場というのは複雑系の世界なので、結果というのは様々な要因が絡み合って出てきます。
よって、何となく効果が出ている気がするけど良く分からないな、という状態では継続に不安が残りますし、使っている側も使い続けるべきなのか判断ができなくなります。(そういった場合は解約につながるケースがやはり多いです。)
そのため、最初の段階で改善ロードマップで実行する各業務において、
KGI/目的を何にするか
KPIを何にするか
その水準をどう設定しどう評価するか
KPIの計測に必要なデータは何でどう集計するか
というところまで落とし込んでFixします。
データが揃っていたり、ある程度普段からKPIを見て業務をしている企業ならまだ何とかなりますが、そうではない企業もかなり多く、ここで初めてKPIを追い出す、ということも少なくありません。要は業務設計に入り込む形です。
私は実際には、カスタマーサクセスのメンバーが苦労してこれを作り上げているのを客観的に見ているに過ぎないのですが、自分がクライアント側の立場だったとすると大変ありがたい支援だなと感じます。
ビジネスにおいて重要で難しい点として『課題の設定』があります。
何を課題として設定するかで、その後向かう方向が決まりますが、これが目標達成のための課題として間違っていたら目標には到達しませんし、そもそも何が課題かわかっていなかったら前にも進みませんよね。
この成果支援計画書は、お客様自身が課題を導き出しそこに向かうための道が見えるようになる、というのが大きな価値でもあります。
実際に成果支援計画書の作成を通じて『認識できていなかった本当の課題が見えた』とおっしゃっていただくこともあります。
▼カスタマーサクセスメンバーの声
5、会議体と各種テンプレート
プロジェクトの進捗確認やPDCAを回すための振り返り、評価者への状況説明など、これらの会議体をあらかじめ作って合意していただきます。
基本的に実利用者とは週1で定例会を開催し、評価者への報告は月次や隔週で行います。
ここで重要なポイントは、報告のフォーマットをこちらで用意してそれを元に報告してもらう点です。
ここが属人化してしまうと「良いのか悪いのか良く分からない」につながってしまいますし、忙しい現場の方々もゼロから作ると負荷が大きくなります。
さらに、これに則って報告してもらうことで、利用者自身が自分がやってきたことが定量的にも定性的にも分かるようになり、上司へも報告しやすくなります。
実際に、これまでは自分の言葉で感覚で話していたことで評価されなかったが、このフォーマットに則って報告したところ評価されるようになった、という事例が出ています。
最後にサクセスチームマネージャーを務める島田に、全体を通して成果支援計画書について聞いてみました。
以上が、フルカイテン・カスタマーサクセスチームが使っている成果支援計画書の抜粋の説明になります。
テンプレートもダウンロードできますので実物もご覧ください。
(※記事冒頭にあります通り公開終了しました)
いかがでしたか?
同じようなことをしている、参考になった、自分達はもっとこういうやり方をやっている、などありましたらぜひMeety情報交換しませんか?
今回、フルカイテン社のカスタマーサクセスの取り組みを記事にすることで、実行内容やその目的を自分自身で整理できましたが、あらためてサクセスチームがやっていることは顧客への価値に向き合っているものだなと手前味噌ながら思いました。
また、これを作って改善していくのをリードしているのが、入社半年に満たない&カスタマーサクセス未経験のメンバーたちで、中には小売のドメイン知識もなかったメンバーもいます。実践を通じて見違えるほど成長しています。
冒頭で、
と言いましたが、どういうことかというと、確かに成果支援計画書を1社1社作るのは大変(やりすぎている)なのですが、これがあることで、まずメンバー1人ひとりのレベルアップにつながります。
同時に、誰がやっても一定の支援ルートに乗っていただけるようになったし、改善点が出てきた時に成果支援のどのフェーズでどんなボトルネックがあるのかの共通認識が取りやすくなりました。(平準化にもつながっている)
逆にこのようなフォーマットがなかったときは、属人化の幅が大きく、起きている問題が個別特有の問題なのかそうでないのか切り分けづらかったので、チーム全体の成長スピードも遅かったように思います。
また、ビジネス観点ではここが最も重要なのですが、深く入り込むことで、業界の新たな課題が見えてきます。そこにビジネスチャンスが眠っています。
私たちのようなバーティカルSaaSは、ホリゾンタルSaaSと比較してマーケットの小ささがあげられますが、1顧客あたりから得られるLTVはマーケットの小ささを補える超重要ポイントです。
1顧客あたりから得られるLTVを最大化するには、やはりペインの解消は不可欠で、そのペインは深く入り込めば入り込むほど見えてきます。すると小さく見えるTAMも実は大きなポテンシャルがあることが分かってきます。
記事は以上です。
次はそろそろマーケに関するものなど書いていきたい所存です。
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