高林典史

SF風のものを中心に小説を書いています。 まだ作品は少ないですが、少しずつ増やしていき…

高林典史

SF風のものを中心に小説を書いています。 まだ作品は少ないですが、少しずつ増やしていきますのでよろしくお願いします。

マガジン

  • 長編小説:少女は瓦礫の道をゆく

    少女はいつからか瓦礫の荒野を歩き続けていた。その向こうに花が咲く場所があるという噂だけを頼りに――。 長編SFファンタジー(になる予定)。 以前別サイトに掲載し中断していたものを再開させました。タイトルを若干変更し加筆修正しています。時間がかかるかもしれませんが、ゆっくり書き続けていこうと思います。 (Photo by Mariana Proenca on Unsplash)

  • 短編集

    しるべなき者たちの奇妙な「逸脱」を描く短編シリーズ。 (Photo by Juli Kosolapova on Unsplash)

記事一覧

少女は瓦礫の道をゆく  4.奇妙な求人

 年明けのコーヒーショップには、まだ松の内であるにもかかわらず景気のわるい男たちの顔が並んでいた。 「“一年の計は金杯にあり”…か。どうやら今年もパッとしない一…

高林典史
2年前

辿り着く場所はなくとも

 それは突然やってきた。  代わり映えのしない、しかしそれゆえに、安らかな温もりに包まれた日々が終わりを告げた。  ぼくと共にあった、愛するものたちが去り、ちっぽ…

高林典史
2年前
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少女は瓦礫の道をゆく 3.同行者

 少女は茫々とした荒れ野に立っていた。  ここに自分が住んでいた家や町があったのだと何度も思おうとしたけれど、うまくいかなかった。  ここへ戻ってくるまでの間に、…

高林典史
3年前

少女は瓦礫の道をゆく 2.競馬場

 年末の競馬場前は、冷たい風が吹いているにもかかわらず大勢の人でごった返していた。  見るからに風采の上がらない二人の男が、寒さに足踏みしながら入場待ちの列に並…

高林典史
4年前
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少女は瓦礫の道をゆく 1.瓦礫の丘

 冬の夜明けだ。  少女は丘を登っている。  ぐいぐい、ぐいぐい、登っている。  チェックのダウンベスト。首にはマフラーをぐるぐる巻きにし、デニムのホットパンツか…

高林典史
4年前
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プロフィール

はじめまして、高林典史です。 SFやファンタジー風の小説を書いています。 ■好きな小説 ポール・ギャリコ『ジェニイ』 小松左京『日本アパッチ族』 開高健『日本三文オ…

高林典史
4年前
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少女は瓦礫の道をゆく  4.奇妙な求人

少女は瓦礫の道をゆく  4.奇妙な求人

 年明けのコーヒーショップには、まだ松の内であるにもかかわらず景気のわるい男たちの顔が並んでいた。
「“一年の計は金杯にあり”…か。どうやら今年もパッとしない一年になりそうだな」
 キャップをかぶった男――小柴はいちばん安いブレンドコーヒーを音をさせてすすった。
「結局、ツキがないってことだろ。これまでもこの先も…」
 黒ジャンパーの男――坂巻は浮かない顔をして言った。口には火の点いていない煙草を

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辿り着く場所はなくとも

辿り着く場所はなくとも

 それは突然やってきた。
 代わり映えのしない、しかしそれゆえに、安らかな温もりに包まれた日々が終わりを告げた。
 ぼくと共にあった、愛するものたちが去り、ちっぽけだが確かなものと感じてきた希望が嘘のように消えてなくなった。後に残ったのは、虚無、としかいいようのないからっぽの時間と空間だった。
 
 気がつくと、ぼくは海岸線に沿って伸びる街道の道端に蹲っていた。灰色のコートを羽織り、素足に女性もの

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少女は瓦礫の道をゆく 3.同行者

少女は瓦礫の道をゆく 3.同行者

 少女は茫々とした荒れ野に立っていた。
 ここに自分が住んでいた家や町があったのだと何度も思おうとしたけれど、うまくいかなかった。
 ここへ戻ってくるまでの間に、少女は自分なりに心の準備をしてきたつもりだった。慣れ親しんだ町がどんな姿になっていようとしっかり目にとどめよう、そうすれば自分が“あのとき”何を失ったのか確かめることができるに違いない。そう決心して旅に出た。たとえこなごなに壊され、荒れは

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少女は瓦礫の道をゆく 2.競馬場

少女は瓦礫の道をゆく 2.競馬場

 年末の競馬場前は、冷たい風が吹いているにもかかわらず大勢の人でごった返していた。
 見るからに風采の上がらない二人の男が、寒さに足踏みしながら入場待ちの列に並んでいる。
「相変わらずすごい人だな」黒っぽいジャンパーを着た男が言った。
「“アリマ良ければすべてよし”って言うだろ。みんなこの日に賭けてるわけよ」両手をパーカーのポケットに突っ込み、キャップをかぶった男が応じた。「まあ、ここでスっちまっ

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少女は瓦礫の道をゆく 1.瓦礫の丘

少女は瓦礫の道をゆく 1.瓦礫の丘

 冬の夜明けだ。
 少女は丘を登っている。
 ぐいぐい、ぐいぐい、登っている。
 チェックのダウンベスト。首にはマフラーをぐるぐる巻きにし、デニムのホットパンツから伸びた脚を交互に前に繰り出して、ひたすら丘を登っている。
 あたりは一面の瓦礫の山だ。崩れた家屋、折れ曲がった電柱、ひしゃげた自動車、変形したドラム缶。赤錆びて亀裂の入ったトタン板、泥がこびりついた水色のポリタンク、色あせたビニールシー

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プロフィール

プロフィール

はじめまして、高林典史です。
SFやファンタジー風の小説を書いています。

■好きな小説
ポール・ギャリコ『ジェニイ』
小松左京『日本アパッチ族』
開高健『日本三文オペラ』
日野啓三『抱擁』
中上健次『千年の愉楽』
ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』

■好きなマンガ
水木しげる『鬼太郎夜話』
大友克洋『AKIRA』
大島弓子『ロングロングケーキ』『サマタイム』
倉多江美『イージー・ゴーイン

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