太宰治の遺書
これが小学生の書いた作文なのか
文字、内容とも子供がつづったと思えない
これこそ、持って生まれた文才なのだろう
太宰治が幼いころ鉛筆で書いた生原稿
青森でたまたま目にして驚きで声もでなかった
太宰は原稿を好んで毛筆で書いたといわれる
弘前出身で太宰の自伝を書いた
長部日出雄『辻音楽師の唄-もう一つの太宰治伝』によると
太宰の原稿を手にした古谷綱武は
和紙にすこしかすれるような墨づかいで書かれた
きれいな筆の字におどろき
さらにその内容に興奮
無名の大型新人現わると直感したという
芥川龍之介にあこがれて作家をこころざした太宰は
第一回芥川賞の受賞をつよく願った
佐藤春夫は太宰『逆行』を芥川賞に推薦したが
川端康成が「作者目下の生活に厭なくもありて」と選評して
太宰を逆上させ
「小鳥を飼い、舞踏をみるのがそんなに立派な生活なのか」
と抗議文を文芸誌に掲載した
女とくすりにおぼれ自殺未遂をくりかえした
無頼な生活のさなかでも
きちんと机に正座し筆をもって原稿用紙にむかっていた
名作『津軽』、『人間失格』など名作を生んだが
「小説を書くのがいやになったから死ぬ」
と遺書を書きのこし世をさった