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紫のにほへる妹
絶世の美女だ、いや違う
貴人ふたりと三角関係にあったか、否か
世を去って千三百年あとの今も
そんなやりとりがつづいている
万葉の女流歌人、額田王(ぬかたのおおきみ)
「あかねさす紫野行き標野行き野守はみずや君が袖ふる」
ー大海人皇子よ
慕わしいあなたが紫草が咲き誇っている御料地を
あちこち歩きながら
私にお袖をしきりとお振りになるのを
ほれ番人が見ていますよー
![](https://assets.st-note.com/img/1712650687582-ciOWVf6Ppl.jpg?width=800)
18歳の額田王は
のちに天武天皇となる大海人皇子に
言い寄られて十市皇女を生んだ
そのあと大海人皇子の兄で
天智天皇となった中大兄皇子の
愛をうけいれている
いつだって強引な兄は
5歳年下の弟から額田王を奪ったのだ
「紫のにほへる妹を憎くあらば人妻故にわれ恋ひめやも」
ー額田王よ
紫のごとく艶やかなそなたを憎ければ
人の妻となっているそなたに恋はしませんよー
大海人皇子は、先の歌に応えて
かっての恋人・額田王にむかって
いきいきと
心情を吐露している
このふたりのやりとりに
天智天皇は一瞬苦く思ったが
額田王の魅力をいかんなく現わしている
![](https://assets.st-note.com/img/1712557592863-zA1LkU6Pp3.jpg?width=800)
額田王の足跡は、日本書紀に一行あるだけ
また、万葉集に12首の秀歌をのこすのみだ
もちろん生前の肖像画もなく
謎のベールにつつまれている
ふたりの天子の愛をうけても
嫉妬うずまく後宮に入らず
ひとり館に住み
誰でもが仰ぎ見る才をもつ
優雅な宮廷歌人
しかも、情熱的だが孤高を守りとおした
誇り高き才女であった
![](https://assets.st-note.com/img/1713130090883-Us2tEdtM4V.jpg?width=800)
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