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(9) 最低限の国家機密を、共有する。


 クリスマスと言っても、ベネズエラは乾季真っ只中の観光シーズンなので、みんなで別荘に行こうとカラカス港へ向かう。「あれ?飛行機で行くんじゃないの?」道が違う事にあゆみが気付いた。

「うん。今回は船で行く。新設計の海洋船でね・・」

「あなた、航空免許だけでなくて、船舶免許も持ってるの?」

「いいや、持ってないよ。大統領特権でベネズエラ領海内だけ。もっとも、AIが殆ど運転するけどね・・」子供たちは船だと知って、はしゃいでいる。

港の駐車場にミニバスを止めると、埠頭までゾロゾロと歩いてゆく。その埠頭に中型船が一隻止まっているのを見て、5人の子供達が走ってゆく。慌てて姉達が追っかけていった。

日本で離島と繋ぐ船よりは幾らか大きいかもしれない。100人乗りの双胴船で2フロア構成になっている。下のフロアの一部分には分厚いアクリルが使われていて、海底が見える。
この船の最大の特徴は後部キャビンに巻き網機が付いていて、観光漁が出来る。子供たちは喜んでくれるだろう。

船にはPB Marinの社員さんが待って居て、キーを預かって別れた。子供達はもう海底を見ている。船のタラップ板を格納して、扉を閉める。一声掛けて艦橋に上がった。車と同じスターターボタンを押すと、エンジンが始動する。AIが動き始めて会話をする。外洋に出るまでAIに操舵してもらう。やがてアンカーが自動的に上がる音が聞こえてくる。「それでは、出港します」
艦内放送が自動的に掛かった。下のフロアでは注意事項をモニターで説明しているはずだ。搭載しているエンジンはツインディーゼルハイブリッドエンジンで、スクリューは2つ付いている。極めて静かな滑り出しだった。

湾を出ると出力が上がった。2つのスクリューで駆動しているので推進力が強い。高速船は船酔いし易いと言われるが、波揺れ自体をAIが補正しており、滑るように推進していく。
実際、艦内モニターの家族を見ても、気分の悪そうなのは一人も居ない。これなら観光船として十分に使えるだろう。
完全に外洋へ出ると、オートパイロットを解除して船の操舵感を楽しんだ。

島のハーバーに到着すると、ヘリで先行してやってきたベネズエラ人の女性自衛官に迎えられ、別荘までミニバスで移動する。

「いつの間に、女性の採用をしたのよ・・」一々 、蛍が絡んでくる。

「AIバギーと街の警備をしませんかって募集をしたら、全国から1000名を越える応募があったんだ。お陰でアジアから来た自衛官には余裕が生まれて、訓練に没頭出来るようになった。彼女達は警備に当たりながら、AIバギーから語学を習っているんだ」

スペイン語で「君たちは何の外国語を習っているの?」と聞くと、
「皆さん、こんにちは。私はサンディと言います。彼女はロージィです。どうぞ宜しく」

わあっと拍手が起きる。きれいな発音だったので驚いた。

別荘が見えてくると、また蛍が絡んでくる。

「まさか、あれもあなたのものなの?」

「うん・・」と頷くと、また呆れたような顔をしている。前任者が建てたんものなんですけどね・・

バスが別荘に到着するとAIバギー達が出迎えてくれる。私邸にいるAIバギーの人物データとマッチングしているだけなのだが、子供達はバギーをベタベタ撫でている。すっかり気に入ったらしい。

ロビーに入って母親たちがため息をついている。自衛官にリビングまで案内され、ウエルカムドリンクやらフルーツを出されて、彼女達は離れの警備棟へ向かった。子供達は、フルーツに手を伸ばして貪りだした。母親達は、まだため息をついている。
これからここに4泊する。自家製造の冷蔵庫から、RedStarBeerを取り出して飲み始める。まず、一缶だ・・

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夜はホテルのスタッフが料理してくれるが、朝食と昼食はこちらで賄うようにしていた。初日の昼食は彩乃の担当で、アルゼンチンの魚をクーラーバックで持って来た。娘達は既に何を食べるのか察していて、お吸い物やら何やら作り始めた。バスの運転手でもあるAIロボットが魚を捌いて寿司を握りだすと、母子一同が啞然とした顔でそれを見ている。この南国でお寿司?という顔をしている。オープンキッチンなので寿司屋のように見えなくもない。既に何缶目なのか分からなくなったビールを開けて、小皿に醤油を垂らして準備を整えた。

「さ、どんどん作るからたくさん食べてね」彩乃が言うと、皆、恐る恐る口に運んでいる。しかし、一度口にすれば歓喜が訪れる。南国のゲテモノ寿司というイメージが、徹底的に破壊される瞬間を目の当たりにする。

「うめー」と言って子供達ががっつき出した。母親たちは目をつぶったまま、咀嚼し始めた。放っておいて食べる事にした。

ーーーー

隣のマルガリータ島のスーパーマーケットからドローンが飛んできて、ネット購入した食料品を降ろしていった。サチと樹里が手際よく冷蔵庫に格納していてゆく。大半を飲み物が占め、後は明日の朝ご飯の食材だ。

マルガリータ島名産の地鶏も届いた。サチが取り敢えず冷蔵庫に入れておきますと言うので、頷く。これから夕方まで目の前のビーチで過ごす。モリは本を読む準備を整えるために、別荘からクライニングシートを抱えて運んでゆく。次に自家製の炭と、壺と鉄網を運んでいった。
これで、4泊5日の読書コーナーが完成した。

水着姿で走っていく子供達とすれ違い、胸を揺らして追いかける姉達とすれ違う。50代に突入した4人と、1人だけ40代前半の母親達と恥らいながらすれ違う。いやいや5人ともビキニとは驚いた。随分と冒険したなと思いながら水着に着替えて、ビールと鶏肉をクーラーバッグに入れて家を出る。

読書コーナーへやって来ると、壺を3分の1ほど砂の中に埋め込んで固定し、壺の中に炭を入れて火を付ける。暫く放置しながら、読書を始める。
大抵、睡魔がやってくるのが1時間後だ。サラサラの砂で手を揉むように擦るとクーラーバックから鶏の骨付もも肉と手羽にアンデスの岩塩を塗って暫く放置する。
この岩塩がそれほどしょっぱくないのが気に入っている。壺の中の炭を並べ替えて鉄網を被せ、熱くなった鉄網の上に鶏肉を載せてゆく。直ぐにいい匂いが漂いだす。

クーラーバックからビールを取り出して飲み始めると、サチがサインを送ってくるので、後20分と指で返信する。ビールを飲みながら鶏肉を焼いていると、次第にお客さん達が集まってくる。紙の皿に鶏肉を乗せてアルミホイルで骨を包んで、各自に渡してゆく。

冷ましてから食えと言うのに、みんながっついてゆく。モリは手羽をしゃぶりながらビールを飲む。そして子供達の分のおかわりで、骨付きもも肉を焼き出すと「あたしも」「私も」と言われて人数分を追加してゆく。
「この鶏、凄く美味しいのね・・」半分以上食べてから、蛍が言う。

「うん、隣の島では地鶏を育てていてね、それを送って貰ったんだ」

地鶏でしたかと、そこで納得したようだ。大人たちにもビールを奪われたので空になってしまった。クーラーバッグを抱えて、焼いている鶏肉を託し、子どもたちのジュース補給ついでにビールの補充に別荘に戻っていった。

夜はホテルのシェフ2人がロブスター、マングローブ蟹、カジキマグロ、マルガリータ島の鶏肉等の食材で、腕を振るってくれる。日本から初めて来た人は誰もがこの島をパラダイスだと思うだろう。既に、美味いものづくしで顔が崩れてしまっている。海で泳ぎまくったからか、子供達も、もの凄い食欲だった。

「確かに、日本では有り得ない光景なのかもしれませんね・・」翔子が満天の星空の中に南十字星を見つけて、子供達に星座の説明をしていた。

ーーーー

翌朝は暗い内からみんなを起こして回る。ブーブーいっている連中をミニバスに押し込むと、ハーバーへ向かい、双胴船に乗り込んだ。これから漁場へ向かう。AIセンサーを稼働させながら魚群を探す。

水平線が紫から藍色に代わり、一気にオレンジ色に染まっていくと、全員が甲板上に出て日の出を待ち構えていた。
魚群探知機が魚の群れを発見し、海域まで急行する。AIに操舵を任せて、後部デッキへ移動する。ヘッドマイクでAIと会話しながら、網を投入するタイミングを待つ。巻き網機の駆動音が聞こえると、家族がゾロゾロと後部デッキへ集まって来た。「すっかり、海の男みたいよ・・」蛍が絡んでくるのはお約束。周りの母親たちが苦笑する。これが我が家の定番なんだよな・・と懐かしくなる。

AIが急にカウントダウンを始めた。慌てて網の投下ボタンに指を置いて、ゼロのコールに合わせて押した。網が海中に投入されると、綺麗に横に拡がりながらスッと後退していった。「みんな、海底を見ていてご覧」と船室の方を指差すと全員がキャビン内に入っていった。

「スッゲー、魚ばっかし!」という子供たちの声と大人たちの歓声が聞こえてきた。

「そろそろ、網がいっぱいになります。引き上げ開始してください」
AIがヘッドホン越しに言うのでボタンを押して、巻き取りを始める。別のボタンを押すと、後部デッキの床が開いて水槽が現れた。結構な大きさの水槽なので感心しながらも疑問に思った。こんな大きな水槽が必要なのか?と。

巻き上げている網が見えた。家族たちに声を掛ける「網が上がるぞ!」と。
海中から魚で膨れた網が上がると、モリが一番驚いた。こんなに一度で捕れるものなのかと。そのまま水槽の上に網ごと移動すると、ゆっくりと水槽におろして網を解除した。バチバチバチバチと魚が跳ねる様を、みんなで呆然と見ていた。「こんなに食べれないよ!」零士が言うので、皆で笑った。

これだけでこの巨大な水槽がいっぱいとなったので、マルガリータ島の漁港へ向かい、魚を降ろす事にする。今日のセリで値が決まる。
「大統領の船が、大量だ!」と後部キャビンに乗り込んだ仲買人が叫ぶと、ゾロゾロと人が集まってきて、搬出を手伝ってくれた。
最初のセリが始まった様子だけ見届けて、鯵の売却益は漁港に寄付するというと、皆、喜んでくれた。「明日、鶏肉を持ってくるので、また漁の後で寄って下さい」と仲買人達に言われる。

発泡スチロール一杯の鯵と、鯵を追っかけて網に入った鰹を3本貰って、島へ帰る。これだけでも十分だった。

この船が観光漁業に、向いているのは今回立証された。
マルガリータ島へ観光に来た客を早朝この観光船に乗せて、アジやイワシを捕まえる。それを漁港に納めて、観光客には採れたての魚で朝食を食べて貰って、解散とすればいい。パナマの諸島部、キューバ、ハイチにも提案しようと思った。

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朝食の準備をしていると、アジフライが食べたいと子供達が言う
「いいけど、変な形になっても必ず食べるのよ」翔子が諭す。そう、アジは鮮度が良すぎると、揚げた途端に身がクルッと丸まってしまう。つまり、まっ平らなアジフライ程、いつ捕れたアジなんだろう?と悩むことになる。 鮮度がいいものは、なめろうやタタキ、アジ刺でいただくのが一番なのだが、さすがに子供は好まない。実際、美味しそうに食べてはいるが、食べ辛そうだった。

朝食後、そのまま各自は部屋へ寝に戻る。
その間にAIロボットに鰹と鯵を捌いてもらう。見事な手際だった。
内臓と鰹の頭と骨を外へ運び出し、ヤシの木の間に事前に掘っておいた穴に捨てると、椰子の葉や刈り取った雑草を被せて、その上に砂を掛ける。度々にしか出ない生ゴミなので、自然分解に期待するしかない。土や枯れ葉があれば尚良いのだろうが、無いものねだりをしても仕方が無い。

家に戻るとAIロボットはその先の工程へ進んでいた。工程はプロに任せて、モリは運搬係に徹する。アジの開きは吊るし編みの容器に入れて、コテージの物干し竿に吊るした。
モロミに漬けられたあじとカツオの半身は、大型冷蔵庫へ締まう。今日の昼はカツオの刺身と、アジの押し寿司となる。紫蘇と茗荷と生姜は私邸の畑で取れたもの、山葵はせせらぎで栽培しているものを持ってきた。これで小田原名物、鯵の押し寿司の再現となりますとロボットが言う。大したものだ。

キッチンをきれいにして、AIロボットと握手して自室へ戻る。部屋で待ち構えていた、あゆみと彩乃に襲われる・・・

「昼食だ!」と子供たちが扉を叩く音で、慌てて3人で飛び起きる。全然眠った気がしない。寝不足状態でも昼食は絶品だった。彩乃は鯵の押し寿司もスーパーで売ろう。自衛隊にも納めよう。そして「Izakaya」に、このカツオの採れたて刺し身を出そう、と半ば断定したように言う。確かに、日本でもこの傷みやすいカツオを美味しく食べれる県は限られる。
確かに、いいかもしれない。静岡・伊東の生ソーダガツオのひつまぶしが頭を過る。ソーダガツオは、カリブ海にはいないのだろうか? 後で調べようと思った。

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夕飯を食べ終え、子供達が寝た後で大人達で飲んでいて驚いた。翔子と里子と志乃の3人が議員辞職してきたという。このまま子供たちとベネズエラに残るつもりだと笑う。このタイミングまで黙っていた理由が、よく分からなかった。
3人の選挙区は年明け中旬に総選挙となるが、それぞれ県会議員から、後継者を既に指名してきたという。そこまでするかと思ったが、これも首相の意向だと蛍が言う。

「あなたは突っ走るタイプだって誰もが知っている。自衛隊を今の形に変えたのも、日本がビルマ、タイ、北朝鮮と連合国家的な色彩になったのも、あなたの判断が全部発端になっている。結果的に日本にとっていい判断だったと誰もが思っているけれど、議論が伴わずに、いきなり形となって現れた事に少々懸念があるのも事実。
あなたはこのベネズエラに凄く固執しているように私たちには見える。間違いなく、ビルマの再現になるだろうって確信してる。いいえ、今度は大統領だから、もっともっと深く関わっていくでしょう」

「ちょっと待ってほしい。自衛隊拡大も、ビルマとタイへの支援拡大も、北朝鮮も全て国会で議論されて、了承を受けて決まっている。僕が決めたわけではない。北京もベネズエラも、共に要請されたから来ただけの話で、僕が誘導した訳ではないよ」

「それはそうなんだけど、あなたは預かる前から「この国は成功する」「成功させてやろう」と考える事が出来るから請け負うのよ。そして、思った通りに成功させちゃうの。
殆どの日本人はそこで初めて気づくのよ。モリには先見性の明があるってね。これは日本のビジネスチャンスに繋がる話じゃないかって。ベネズエラだけではなく、南米諸国連合で可能性をいきなり示して、キューバ、ハイチとも繋がった。続いてコロンビアとパナマも・・いずれ、中南米経済圏を作る気なんだって、みんな、あなたに期待しちゃうのよ」

 さっきから、何を怒っているんだ・・「えっと、少し落ち着こう。不可抗力な力が働いて、今の自分があるのは事実であり、それが全てだ。それを楽しんで居る自分自身も理解している。次はどんな難題がやってくるんだろうってね。でも、僕だって全てが出来る訳ではない。様々な弊害を生み出している。日本で言えば、与党2党による政治体制で、野党が全く機能していない。旧北朝鮮と、韓国政府との関係は何も改善されていない。韓国の人達との人的な交流は増えているけどね・・中国は・・まだ言えない事も結構あるんだけど、共産党の体質は何も変わっていない。中南米経済圏は確かに理想だけど、実現は難しいと思う。組む相手は限られてくるからね・・
そうなんだ。全てが丸く収まるのは極めて難しい。これは僕の思想に問題があるのかもしれない。嫌な相手や苦手な相手には絶対に手を出さない・・だから、こうなってしまうんだ・・」

そこで不意に寒気に襲われて、ブルッと震えてウィスキーを煽った。

別荘滞在中はそんな風に日々過ごしていた。子供達は観光漁船が気に入り、毎朝のように海へ出た。この時期だからなのかもしれないが、アジばかり獲っていた。
それでも子供達には楽しい年末となったようだ。数日とは言え、いい家族サービスになって良かったと思った。

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大統領府の別荘でビーチリゾートで楽しんだ後、年が明けると、翔子・里子・志乃の母子を残して、PB-oneは日本へ帰っていった。

翔子の産んだ零と零士は年子で11と10歳。里子が産んだ桃李が11。志乃の子が一志で10。子供達の内、陸だけが母親の蛍と、サチと彩乃の母の幸乃の3人で日本に戻った。
「選挙終わったら、私達も来るからね」と捨て台詞を残して、日焼けした蛍がニヤッと笑った白い歯が、強く印象に残った。

木質パネルで建てた執務室に、机が7つ並んだ。日本の中小企業みたいだと笑い合う。それでも、仕事が楽しいものになった。食事はローテーション制となり、給食当番のような持ち回りになる。都合が悪い時は食材だけ用意して、AIロボットにお任せとなる。
翔子と里子がやって来てからは、徹底的に体調管理されるようになり、体も徐々にベストの体重に戻りつつあった。

大統領府が急に賑やかになったが、役割がかなり分担されて楽になった。
翔子を官房長官、里子を外務大臣、志乃を総務大臣にしてみた。それぞれの秘書として、娘の玲子と杏を、志乃には姪っ子の彩乃を付ける。
取りあえず3月一杯、子供たちは姉達やAIロボットに学び、4月から日系人学校に通う。

翔子への引き継ぎだけで正味2日、里子、志乃への引き継ぎでそれぞれ1日費やした。これだけの事をしてたのかと、自分でも呆れる分量だった。
「痩せて当然ですよ・・」里子にウエストを両手で掴まれる。確かにそうだと納得する。それでも説明しながらも7人で机を合わせているので、時折驚きの声が一斉に上がる。玲子にも杏にも彩乃にも今まで内緒にしていた。

・AIが製造している工場は無人生産なので、人件費が加わっていない。しかし、5万人の工場雇用者が存在している事になっている、帳簿上は3倍の15万人にしている。8時間x3の労働時間体勢になっているからだ。この 15万人分の人件費が、利益を生み出さない公務員、教職員4万人、それから各市、各学校、各大学、各教会の予算に反映されている。公では文科省予算としているが、費用の実態は工場人件費がベースとなっている。

・国内の税は給与取得者の所得税と市民税の2本立てから成る。事業税は、3人以上の雇用が存在していると生じる。2035年までの期限立法だが、2人未満は事業税は掛からず、市税だけが発生する。但し、海外資本や海外の人が経営するものは割増の事業税が発生する。外国人がベネズエラ国内で起業するのは、極めて稀だ。プルシアンブルー社と娘達は大統領関係企業、関係者という括りでベネズエラ企業扱いとなっている。
彩乃の寿司・天ぷら屋さん、樹里とスーザンのイタリアン・スパニッシュ、玲子の揚げ物店は事業税は掛からない。大統領権限で、AIロボットは人と判断しない。そういうと、玲子が差別だ、不平等だ、工場ではAIも人件費扱いにしてるじゃないですかと言うが、町中でも姿を表さないものまでカウントしていたら、ややこしい事になってしまう。

交通機関、役所、国営ホテル、工場などの国営企業や国の行政機関は事業税は掛からない。事業税は国庫に入る。全ての市が何かを購入する場合も含めて全て大統領決裁が必要となる。

・電気、ガス、水道は基本無料。但し3つの内、何かが一定以上の量を利用すると、事業をしているとみなして、第2事業税を課して金額を徴収する。

・国営企業の利益は全て大統領兼財務大臣が一括管理。国営銀行の金利は最初は15%だったが、今は11%。この国営銀行の金利高の定期預金にどんどん預け入れていく。国営銀行の金利が9%を切ったら、定期預金の預け入れをRed Star Bankへ変える。ケイマン諸島、バハマ、キュラソーの各口座に貯蓄していく。3カ国が金利10%でやってくれると豪語しているからだ。尚、国営銀行には時価総額30兆円ほどの埋蔵金が延べ棒としてある。今は産出を中止しているが、金山やダイヤモンド鉱山が幾つかある。AIバギーでエリアのガードをして人は近づけないようにしている。この「金」や「ダイヤモンド」は虎の子なので、極力使わない。尚、ほぼ見分けがつかない人工ダイヤの製造を年明けから始めて、輸出してゆく。

・自衛隊経費は国連負担。ベネズエラにいる自衛隊経費は全額負担させている。アルゼンチン、ボリビア、キューバ、ハイチ、パナマ、コロンビアは、ベネズエラの自衛隊だが、それも含めて日本側の費用負担は無し。ハイチは後で追加されてたので、ハイチ分は内緒だけど、2重取りとなる。
しかし、自衛隊員の給料は日本、タイ、ビルマが支払っている。1300人分で6億5千万円。これが2重取りになっているので、国連費用から毎月6億5千万を大統領府予算=国家予算としている。毎月なので溜まる一方だが、7人の母親達の給与はここから支給する。
各企業からの事業税は国家予算に充当する。

・石油の埋蔵量は世界一。ベネズエラ単独でも出荷可能だが今は生産をしていない。生産コストはほぼ掛からず、ガソリン、軽油、航空燃料、灯油などの製油精製コストが別途掛かる。OPECは既に脱退しており、好きな値段で販売できるのはご存知の通り。
価格高騰前はボリビアから供給を受け、今は全てコロンビアの石油に依存している。基本的に売らずに持ち続ける。但し、再び石油価格が高騰した場合には生産して、同盟国に安価に供給する。

以上、全てが秘中の秘。7人だけで暫く共有・・サチと樹里とあゆみにはどう伝えるか後で考えるとして、まだ秘密にしておく。日本政府にも、首相にも、蛍、幸乃にもまだ内緒にしておこうと言うと・・・啞然とした顔をしている。

「だから直ぐには帰らないって言ってたのね・・」
あんぐりと各自が口を開けていたが、杏の口がようやく動いた。笑い返すしかなかった。

(つづく)

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