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あぁ、そうだったのか!思わず我が子に話したくなる風習のこと。

毎日通勤電車の中で、中学入試問題頻出作家さんの作品を読んでいます。

いくつかの作品の中に「あっ、これ最近やってないな」と思う風習がありました。

皆さんは自分の乳歯が抜けたとき、その乳歯をどうしていましたか。そしてお子様の乳歯が抜けたときは?

宮下奈都さんの「ふたつのしるし」にこんなセリフがあります。

「上の歯なら縁の下に投げるのよ。下の歯だったら屋根の上。知ってるでしょう。」

僕自身は、子どもの頃親に言われて実践していました。ただ、「上の歯はトイレに、下の歯は屋根の上に」というきまりでしたが。(これは我が家だけのルールかな)幼少期住んでいたオンボロ長屋は、当時まだ汲み取り式のトイレだったので、思いっきり投げ込んでましたよ。

少し古くなりますが2014年の丹平製薬さんの1~5歳のお子さんを持つ家庭を対象としたアンケートによると、親自身は約8割が実践したことがあるものの、「子どもに対し実践している・しようと思っている」という回答は51%だったそうです。

うちも息子の歯は、なんか専用のケースに保存中です。(現在小5ですが、まだ全部抜け替わっていません)ということで息子もこの風習を知らないはずです。

でもけっこう作品中に出てくるので紹介しますね。

「下の歯が抜けたら屋根の上に、上の歯が抜けたら縁の下に放ると、次に丈夫な歯が生えてくるんだよ」

出典「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」万城目学(角川文庫)

下の歯は屋根に、上の葉は軒下に、そうしないと二度と歯は生えてこないと母がいつも言っていた。

出典「岸和田少年愚連隊 望郷篇」中場利一(講談社文庫)

「出かけるとき、縁の下に放っとこうね。ネズミの歯と替えてくれ、って言って」

出典「半パン・デイズ」重松清(講談社文庫)

地域によって違いはあるものの、全国的に伝わる風習だと思います。上の歯は下に向かって、下の歯は上に向かって投げるのは全国共通ではないでしょうか。その方向に新たな歯が生えてきますようにと願いが込められているのでしょう。また「鬼の歯とかわれ」や「ネズミの歯とかわれ」と唱えながら投げるのも、丈夫な歯がはえてくることを願ってのことだとすると心温まる風習だなと。

子どもの頃は何も考えずに実践していた風習ですが、そこには親が子の成長を願う気持ちが込められていたんですね。

授業中に抜けた歯を、親に見せようと、そして屋根に投げてやろうと嬉々としながら走って帰宅したことをしみじみと思い出した次第です。


息子にも教えてみよう。

いやしかしマンションの上に向かって投げるのは難しいか……。


ということでその他、中学入試問題頻出作家さんの作品から見つけた「子どもに関することば」【小学生が「何それ?」って思うことば】を紹介させてください。

七つまでは神の子

民俗学者の柳田国男が1914年自身の論文で唱えた。「七歳になるまでは子どもは神様だと言っている地方がある」とのこと。七歳までは神様から預かった子どもであるという意味で、七歳まで無事に生きてきた子どもの成長を祝い、お参りするのが「七五三」だといわれている。

今は、いたずらをした子どもに対して「七歳までは神の子なんだから大目にみてやろうよ」みたいに用いるようです。


橋の下で拾ってきた

このことばは中島京子さんの「樽とタタン」に出てきました。

僕も子どもの頃、父から「お前は橋の下で拾ってきたんや」と言われたことがあります。昔の親はよく言ってましたね。我が家では父のセリフに続けてお隣さんまでもが「そうや、あんときはお前めっちゃ小さかったぞ」なんて言うのでリアル度倍増で不安も倍増でした。

これは昔行われていた「捨子・取子」の風習のイメージが影響しているのではないかという考えがあるそうです。

「捨子・取子」に関しては民俗学の領域になり、説明は省略しますが、今の小学生に「橋の下で拾ってきた」というご家庭は少ないのでは。


子どもは風の子

「子どもは風の子、大人は火の子」ということわざの一部。子どもは寒さに負けず外で遊ぶものだという意味。

家でゴロゴロしているとよく言われました。狭い家だったので、外に行かせたかった部分もあるはず(笑)


コブ付き

コブとは体にできる瘤(コブ)のことで、厄介者、特に子どもを意味する。女性が再婚の際、前夫の子どもを連れていることを言う場合が多いが、男性が前妻の子どもを連れている場合にも用いる。


身重(みおも)

妊娠していること。

妊娠より懐妊や身重という表現の方が上品な気がします。「身重のお体が冷えないように…」なんてさらっと言ってみたいです。


恥かきっ子

両親が年をとってから授かった子どものこと。「いい歳をして、まだ性交渉があることが世間に露呈してしまう」ということで「恥かきっ子」という。

2021年の人口動態統計によると、平均初婚年齢は妻29.5歳・夫31.0歳。第1子出産時の平均年齢は母30.9歳・父32.9歳で昔と比較すると高齢化しています。「四十の恥かきっ子」とは言わない世の中になりましたね。



今回、乳歯が抜けた際の風習を取り上げましたが、他にも子どもの頃に親に言われていたことを思い出しました。

夜に口笛を吹いたら蛇がくるよ。

おへそを出してたら雷様にとられるよ。

言われたことがある方も多いのではないでしょうか。

父はよく「飯粒残したら目がつぶれるぞ!」と怒鳴っていました。父方の実家は農家でしたから、お米を大切にしなければならないという気持ちもあったのだと思います。もちろんちゃんとご飯を食べて大きくなってほしいという思いもあったのでしょう。

当時、親の言うことには素直に聞いていました。決して「それってあなたの感想ですよね」とか「エビデンスは?」なんて言いません(笑)

子どもの頃わかっていませんでしたが、今思えば親の愛情が含まれているものなんだなぁと。そう考えると、なんの科学的根拠もわからない風習や迷信でも、生活の中に残していきたいなと思います。





最後まで読んでいただきありがとうございました。

子どもたちの読書量が豊かになり、家族の会話が増えますように。

次回は「仕事に関することば」を書こうと思います。「内職」「ヤクザな仕事」などなど…。

よろしければ前回の記事です。遊びに関することばをどうぞ!


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