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入稿前の求人広告についてみんなの意見を聞くと採用が失敗する法則。

こんにちは、採用コピーライターのオヤマダです。
今回は、入稿前の求人広告についてみんなの意見を聞くと採用が失敗するという、企業側の方は「なに言ってんだ?」と首をかしげるのですが、制作者側は「あるある!」と首を縦にブンブン振ってくれそうな話をします。

求人広告をつくる時によくある話

求人広告制作は、主に、企業側の採用担当者と作り手側のコピーライターとの打ち合わせで内容が決められます。

どんな募集なのか。どんな人が欲しいのか。どういう仕事なのか。何が求められているのか。働く環境はどうなのか。教育制度はどうなっているのか。これらヒアリングした情報から、ターゲット(求人広告で呼びかける相手)を決め、ベネフィット(提示する入社後に得られる恩恵)を決め、広告の訴求内容を読み手が信頼してもらえるように、ヒアリングしたさまざまな情報の配置や順番を考えて組み立てていきます。

ビジュアルが出来て、キャッチコピーが入って、ボディコピーが書かれていく。そんな求人広告が完成し、それは作り手側のコピーライターから企業側の採用担当者の手に渡り、広告の確認作業となります。

で、このタイミングで、企業側の採用担当者が同じオフィスにいる同僚たちに「今度求人広告を出すんだけど、どう思う?」というように意見を聞くことがあります。または、上司に「これが今度掲載する求人広告です。確認お願いします」みたいに見てもらうことも。すると、「あの情報も入れたほうがいいんじゃない?」「あの情報も入れておいてくれたまえ!」という“意見”や“アイデア”が出てきて、コピーライターに修正指示が入ります。「社内で確認してもらった結果、これらの情報を追加してほしい」と。

これ(↑)が、採用を失敗させる悪手なんです。

話の前提を知らない人の意見はマト外れ

何がいけないのか。

それは、企業側の採用担当者と作り手側のコピーライターとの打ち合わせ内容やその話し合いによって作られた広告設計を知らない第三者の意見は、マト外れであることが多いからです。

分かりやすく例え話をすると。

営業職の募集だったとします。会社としては本当は即戦力となる営業経験者が欲しい。でもその望みは絶対ではない。即戦力になりそうな営業経験者を採用するにはその企業が出せる給与額は少ない。ゆえに営業経験者をメインターゲットで狙うと負ける確率が高くなる。企業側の採用担当者と作り手側のコピーライターの話し合いによって、「今回は営業未経験者を採用して育てていく」という方針になった。そのうえで広告設計が組まれ、求人広告が出来上がる。その求人広告は営業未経験者が応募しやすいように、営業未経験者を歓迎するように書かれていた。ところが、採用担当者のり上司に入稿前の求人広告を見せたところ、「営業経験者からの応募も歓迎している旨を付け加えなさい」という話がくる。しかし、それを求人広告に書いてしまうと、メインターゲットである未経験者には「歓迎すると書いてあったけど、本心は営業経験者が欲しいんじゃん」と思われてしまう求人広告になり、「応募しないでおくか」という結果になる。

……というように、

いただいた“意見”や“アイデア”は、企業側としては事実として間違っていない情報なのですが、事前に話し合われた内容で作られた広告のコミュニケーションとしては「それを付け加えるとどっちつかずになる」「その情報が入ると分かりにくくなる」という足を引っ張る追加情報になるのです。

つまり、求人広告を作る前の打ち合わせで話し合われた内容を知らない人間の“意見”や“アイデア”は、多くの場合、求人広告の訴求力(パワー)を落とすこと、効果の足を引っ張ること、せっかくの企画を台無しにすることになります。

そのため、コピーライターは言葉を選びながら、なるべく修正を原稿に反映させたくない旨を伝えます。そのようなコピーライターの反抗的な態度に採用担当者の方々はイラッとさせられたことがあるかもしれませんが、それはコピーライターは自分が書いたものを推したいのではなく、手がけた広告の訴求力が落ちるのを防ぎたい気持ちによるものなのです。

なぜなら、そのマト外れな修正を受け入れて効果が悪くなった求人広告の結果は、コピーライターの責任になってしまうからなんですね。

コピーライターの思考

実は、このような悲劇はいつもいろいろなところで起きています。特に、採用に慣れていない(採用機会が少ない)中小ベンチャー企業では悲劇の発生率が高い印象があります。

なぜ、悲劇はくり返されるのか。

それは、企業側と作り手側のコピーライターとでは、広告に対する考え方が正反対であることが理由だと思います。

例えば、MAX3000字書ける広告枠があったします。

企業側の発想は「3000字書けるなら3000字書いてよ」です。なぜなら、安くないお金を払うわけですから、できるかぎり自分たちの伝えたいことを書きたい。そのほうが多くのことを伝えられると考えるからです。

コピーライターの発想は「500字しか使わない」です。なぜなら、コピーライターは3000字書ける広告枠であったとしても人間は自分に関係がないものを3000字も読まないことを知っているからです。そして、読み手に興味を引かせる工夫をして、読み手に印象付ける・記憶させるには余計なノイズは可能な限り取り払って500字ならいける、という考え方をします。

両者の考えかたは、「読み手は書けば読んでもらえる」と思い込んでいることと、「読み手は書いても読んでもらえないものだから、読まれるように工夫が必要」というくらい異なるのです。

このコピーライターの思考法を知っておくと、コピーライターと仕事をするときに気持ちよく仕事ができるかもしれません。

さいごに

誤解のないようにお伝えしておくと。

「僕はコピーライターの言うとおりにしろ」とか「コピーライターの仕事を尊重しろ」といったことを言いたいわけではありません。

今回挙げたよくある事例だって、採用担当者が他の人の意見を聞くことも、聞かれた方が意見を言うのも、コピーライターが修正を拒むのも、すべて「その採用が上手くいくため」という善意によるものです。でも、「知らないこと」によってすれ違いが起きて、せっかく善意が不協和音を起こしていい結果に結びつかないって、もったいないじゃないですか。

コピーライターは修正をもらうのが嫌いなわけじゃありません。クライアントと協力して仕事を進めていくべきだと考えています。でも、求人広告で成果を出すには、採用企業側の方たちにも、広告におけるコミュニケーションについて知っていただく歩み寄りは必要なのです。例えば、求人広告について他の人の意見を聞きたいのなら、その人を最初の打ち合わせに参加してもらうとか、意見を聞くときに打ち合わせで決まったことといっしょに伝えてみるとか、ですね。

今回は、求人広告制作を行なう上でよく起こるトラブルの中身を明らかにしてみました。この記事の内容が、多くの中小ベンチャー企業の採用が上手くいく気づきになればうれしいです。


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