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「副腎疲労」という病気はない

副腎は疲れない!

 いつもグッタリ疲れている、胃腸の具合が悪くお腹が痛くなりやすい、朝起きられない、よく眠れないなどといった症状があるけれど、検査をしても「とくに異常がない」と言われることがあります。その場合、心の病が疑われたり、「副腎疲労」と診断されたりすることがあります。
 しかし多くの場合、心の病でも副腎疲労でもありません。そもそも「副腎疲労」という病気はありません。
 「アジソン病」は副腎がホルモンを分泌できなくなる病気で、全身倦怠感や脱力感、筋力低下や体重減少、低血圧や立ちくらみ、食欲不振や吐き気や下痢、無気力やうつ症状、皮膚の色素沈着などといった症状が現れます。
 「褐色細胞腫」は副腎の腫瘍で、アドレナリンやノルアドレナリンが過剰に分泌されるため交感神経が強く緊張して、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安、便秘や腸閉塞などといった症状が現れます。
 「クッシング症候群」はステロイドの大量/長期投与によって生じる副作用で、顔が満月様に膨張したり、皮膚が薄くなったり、多毛になったりします。
 こういった副腎の病気はありますが、「副腎疲労」という病気はありません。副腎自体は疲れないのです。
 では、疲労感や倦怠感や胃腸の不調などが続いているのは、一体何が原因なのでしょうか? いくつか代表的な例を挙げてみましょう。

ストレスによる「アドレナリン症状」

 まず考えられるのは、ストレスによる「アドレナリン症状」です。
 ストレスを受けると、自律神経の中枢である脳下垂体からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が分泌されます。それによって、副腎皮質からコルチゾールが分泌されます。
 さらに、副腎の髄質からアドレナリンが分泌されます。
 ストレスに対抗するために分泌されたコルチゾールとアドレナリンによって、心身が興奮し、心臓のポンプ力が強くなって血圧が高くなり、血糖も増加します。自律神経は、交感神経が強く緊張した状態になります。
 その結果、心身が疲労困憊した状態になってしまいます。すると、動悸や不整脈、頭痛や不眠、ホットフラッシュ(頭部の火照りと発汗)、疲労感や倦怠感、腹痛や消化不良、便秘や下痢などといった症状が出るようになります。
 これらは「アドレナリンによる症状」です。つまり副腎が疲れているのではなく、副腎が分泌したホルモンによって心身が疲労困憊しているのです。

 さらに疲労がたまって強いストレスを受けると、「パニック発作」がおきます。
 パニック発作になると呼吸が速くなるため、血液中の二酸化炭素が減少します。するとまず、肌がムズムズしたり痒くなったりします。次に、手や指がしびれてきて、やがて全身が針でチクチク刺されているような感じがするようになります。
 また、心拍数も上がるため心臓がバクバクして、恐怖感や不安感が強くなります
 身体が震えるような感じがして、頭がクラクラして、失神することもあります。
 手足の筋肉が激しくひきつって、テタニー(痙攣)をおこすこともあります。
 これらは、「二酸化炭素の不足による症状」です。
 しばらくすると血液中のカリウムが減少して、低カリウム状態になります。
 すると血圧が低下して、手足の筋力や胃腸のぜん動が弱くなります。筋力の低下から、首や肩のコリや痛みが強くなったり、腰痛や神経痛がおきたりします。また胃腸のぜん動が弱くなることで、吐き気や嘔吐、便秘や腹部膨満などといった症状がおきます。さらに重度になると、手足がマヒして動かなくなったり、呼吸筋がマヒして呼吸困難になったり、不整脈や腸閉塞になったりします。
 これらは、「カリウム不足による症状」です。
 そしてカリウム不足が続くと、いずれ腎臓の再吸収の働きが低下して多尿になります。すると「脱水」になり、乾燥肌やドライアイなどといった乾燥症状が現れます。
 このようにパニック発作になると、体内では<アドレナリン過剰→二酸化炭素不足→カリウム不足→脱水>となって様々な症状に襲われるのです。

 このような状態を改善するには、まず「アドレナリンの分泌を抑える」ことが大事です。
 それには、「ブドウ糖を摂る」ことです。
 低血糖になると、筋肉を分解してタンパク質からブドウ糖を作り出して脳に送ります。つまり、筋肉を犠牲にして脳にエネルギー源を送るわけです。まず筋肉を分解するために、アドレナリンが分泌されます。そして肝臓でタンパク質をブドウ糖に作り変えるために、すい臓から血糖値を上げるホルモン(グルカゴン)が分泌されます。(これが後に糖尿病の原因になります)
 つまり、低血糖になるとアドレナリンが分泌されるのです。
 ですから低血糖を防ぐには、ブドウ糖を十分に摂ることが必要で、それにはご飯をしっかり食べればよいのです。お菓子や甘いジュースやスポーツドリンクなどで糖分(砂糖や人工甘味料)を摂るのではなく、ご飯(ブドウ糖)をしっかり食べることが大事です。

 またパニック発作がおきたら、水とブドウ糖と二酸化炭素とカリウムとナトリウムを一緒に補給することが必要です。具体的には、以下の補水液を飲めばよいのです。

<松原式補水液>
炭酸水:500ml
やさしお:2g
ブドウ糖:10g
クエン酸:少々

リーキーガットやSIBOによる「倦怠感」

 リーキーガットやSIBOによる胃腸の不良が、慢性的な疲労や倦怠感や頭痛などを引きおこすこともあります。
 リーキーガットとは、『腸の栄養を吸収する細胞同士の結合がゆるんだ状態』です。リーキーガットになると、未消化なタンパク質や腸内細菌が、腸から血液に吸収されてしまいます。すると腸の免疫細胞が「異物が侵入した」と判断して、それらを排除しようとします。そのため軽度な炎症(慢性炎症)がおきて、血液中に「炎症性サイトカイン」が増加します。サイトカインは免疫細胞のメッセージ物質で、炎症性サイトカインのメッセージは「炎症をおこせ!」です。
 つまり、リーキーガットになると血液中に炎症性サイトカインが増えるため、身体のあちこちに炎症がおきやすくなるのです。そしてどこかに炎症がおきれば、身体がだるくなるのです。自律神経は副交感神経が緊張しますから、低血圧になり、朝起きられないとか、倦怠感や疲労感を感じることになります。

 SIBOは、「小腸内細菌増殖症」のことです。腸内フローラといわれるのは大腸の世界で、小腸には細菌が少ないのが正常です。ところが小腸に細菌が過剰に増殖してしまうと、たとえ善玉菌であっても、胃腸の具合が悪くなるのです。腸内細菌が多いほど、ガスが多く発生するからです。
 例えば、食物繊維は消化できないため、腸内細菌が分解します。すると、発酵してガスを発生します。そのため腸がガスで膨満して、お腹が痛くなるのです。
 小腸のガスが胃に流入すると、ガスが抜けるときに胃酸が逆流して「逆流性食道炎」になります。すると十分に食べられなくなったり、胸焼けがしたり、空咳が出たりするようになります。
 その結果、食事量が減って栄養が不足すると、筋肉が減ったり貧血になったりして、疲れやすくなります。筋肉が減って足腰が弱くなると、腰痛や膝痛になります。また、少し動いただけで息切れするようになります。
 このように小腸に細菌が過剰に増えると、腸内ガスによって胃腸の具合が悪くなるだけでなく、栄養失調による弊害も色々と出てくるのです。

 とりわけ深刻なのは、小腸にカンジダ菌が増殖してしまった場合です。
 カンジダ菌が分泌する毒素によって免疫力が低下したり、脳がダメージを受けたりします。
 また、ご飯などの糖質がカンジダ菌によって発酵してアルコールに変わってしまうこともあります。これを「酩酊症(めいていしょう)」といいます。すると、お酒を飲んでいないのに血中アルコール濃度が上がって、強い眠気やだるさ、頭痛などの症状が出ます。

 このように、リーキーガットやSIBOによっても、強い倦怠感や疲労感、胃腸の不良、頭痛や不眠などといった症状がおきることがあるのです。
 しかし、多くの病院ではリーキーガットもSIBOも検査すらされないのが現状なので、原因が分からないまま体調不良が続くことになってしまうのです。
 そして胃腸を良くしようとして、玄米や雑穀、豆類や野菜やキノコなどを中心とした食生活によって、さらに胃腸を虚弱にしてしまうのです。

甲状腺機能低下による「倦怠感」

 体温が低い(35℃台)の場合は、甲状腺機能の低下かもしれません。甲状腺は、喉にあるホルモンを分泌する器官です。
 甲状腺ホルモンは、簡単にいえば「カロリーを熱に変えるホルモン」です。ですから、甲状腺ホルモンが不足すると体温が低下して、冷え性になります。
 また甲状腺ホルモンが不足すると、すべての内臓の機能が低下します。胃腸の働きも低下して消化や吸収が悪くなり、便秘になります。女性は生理が不順になり、やがて排卵が停止します。
 筋力も弱くなりますから、少し動くだけで疲れてしまいます。やがて身体を動かすのが辛くなって、いつもグッタリした状態になります。
 脳も、集中力や記憶力や判断力や意欲が低下して、何もする気がしなくなります。
 このような症状があったら、血液検査で甲状腺(TSH、T3、T4)を調べることです。TSH(甲状腺刺激ホルモン)が高ければ、甲状腺ホルモンが不足しているのです。
 その場合は、チラージン(甲状腺ホルモン剤)を飲む必要があります。

 しばらくチラージンで甲状腺ホルモンを補いながら、「甲状腺を悪くする原因」を除去していけば、いずれ甲状腺ホルモンが分泌されるようになる可能性はあります。
 甲状腺を悪くする成分の一つは「ゴイトリン」で、とくに大豆に多く含まれています。ですから、豆腐や豆乳、厚揚げやがんもどき、枝豆や煮豆、おからやキナコ、大豆プロティンなどといった大豆製品をできるだけ控えることが大事です。(発酵している味噌や納豆、醤油は大丈夫です)
 甲状腺を悪くするもう一つの成分は「ヨード」で、昆布に多く含まれています。ですから、毎日昆布を食べたり、毎食昆布からダシを取った煮物を食べたりするのは止めたほうがよいでしょう。また、「イソジン」のようなヨードを含む殺菌剤でうがいをするのもNGです。

偏頭痛による「吐き気・倦怠感」

 偏頭痛によって体調が悪くなる人もいます。片頭痛がおきてしばらくたつと、吐き気がおきます。吐き気を催してから薬を飲んでも手遅れで、薬を吐いてしまいます。
 吐き気によって十分に食事が摂れなくなることで、栄養不足になりがちです。
 この場合、「胃腸が悪い」と考えて胃腸薬を飲んだり、「貧血」と考えて鉄剤を飲んだりしがちですが、どちらもナンセンスです。偏頭痛によって吐き気を催しても、胃はまったく悪くないので、胃薬や整腸剤を飲んだりする必要はありません。また貧血でなければ鉄剤を飲む必要もなく、鉄剤によって胃が重くなってしまうだけです。
 偏頭痛持ちの人は、通常身体に良いといわれていることの多くが逆効果になります。
 例えば、赤ワインやカカオやオリーヴオイルなどに含まれているポリフェノール、ゴマのリグニン(セサミン)、大豆のイソフラボン、朝鮮人参のジンセノシドなどといった成分は脳の血管拡張を促すので、偏頭痛がおきやすくなってしまいます。入浴や運動、首や肩のマッサージも、脳の血管が拡張するため体調が悪くなりやすいのです。つまり、血流を良くすることはすべて逆効果になるのです。
 また、ニオイや音や光にも過敏なので、どんなに良い香りでもアロマエッセンスは絶対NGです。
 このように偏頭痛による体調不良は、一般的に健康に良いと言われていることの大半が逆効果になってしまうのです。そのため色々な健康法を次々と試して、かえって体調を悪化させてしまいがちです。

原因を見極めることが治す秘訣

 以上みてきたように、疲労感や倦怠感、脱力感、胃腸の不調、活力や精神力が低下するなどといった症状が同じでも、原因によって治療法はまったく異なるのです。
 ですから、治すにはまず「何が原因か?」を正しく見極めることが大事です。そして原因を改善することによって、症状が改善していくのです。

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▶リーキーガットとSIBOを改善するディフェンシブ・フードの解説書①
自律神経を整える食事」(鳥影社)はこちら

▶リーキーガットとSIBOを改善するディフェンシブ・フードの解説書②
大豆毒が病気をつくる」(知道出版)はこちら

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