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● 画家の家計簿 _ 「創造性」×「お金」×「集中できる時間」= “ 成果 ”

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ネーデルラント旅日記
アルブレヒト・デューラー 前川 誠郎 訳

好きな本の1つ。画家の家計簿(笑)。

ちょうど、500年前の 1520年 夏 。
50歳の画家デューラーは、途切れた年金の支給を請願しに
妻と侍女と一緒に現在のベルギー地方へ 約1年間の旅に出る。

延々「いくら払った」「○を○個買った」と続くけど
途中、船で事故にあったり
移動の合間にみたメキシコからの「黄金の太陽」に驚嘆したり。

アントワープ大聖堂の塔に登って
「全市が隅々まで見渡され、大そう愉快であった」と 楽しむ
画家の様子も目に浮かぶ。

デューラーは若い頃から高名で、どこでも歓待されているが
現代と比べると、通関や両替、チップも頻繁で、移動だけで大変だっとことが窺える。

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● 妻と侍女がご飯をご馳走になった時は、食費が浮いた、と記述(笑)

● マルガレータ女公にいろいろ贈ったけど、何ももらえなかった 
 とちゃんと記述していたり(笑)。

● 版画作品をたくさん作っていれば、もっと裕福な生活が
 できたかもしれない、とコボしていたり(笑)。

● 宗教改革の中心人物マルティン・ルターが逮捕された際
 「おお、神よ、ルッターもし逝きしならば、誰か聖なる福音を
 かくまで明快に我々に宣べ伝えることをなさんや!」
 という哀悼文をしたためた後、すぐに
 「支払いのためにまた1グルテンくずす」と記述したり(笑)

* * * * * *

まさか、500年後の日本で読まれるなんて考えていなかっただろうな。

文中には、エラスムスが登場するから
『ユートピア』のトマス・モアも同時代人。
近代を準備した中世・ルネサンス期の空気感を存分に感じられます。

「創造性」と「お金」そして集中できる「時間」は “ 成果 ”に直結
していて

デューラーのケチぶりは、創造性と直結するお金の大切さ
知っていたからだと思う。

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たとえば、映画監督のスタンリー・キューブリックは、
イギリスに移動し、ハリウッドからは距離を置きつつ
メジャースタジオから潤沢な予算の支援を得て、
自分の芸術的なフィルム作りに集中できたのだそう。

お金(もしくは応援してくれる人)と、芸術の
密接な関係を感じられる

“ 出納 ” ロードムーヴィーのような面白い本です。

( * 以上に記載した画像は、すべてデューラーの作品 )

* * * * * *

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富永 大士(タイシ)
京都を拠点に、絵を描いたり、アクセサリーを作って 生活しています

https://www.instagram.com/taishi_tominaga/ (日々のアレコレ)
https://www.creema.jp/c/aura_loco/item/onsale (アクセサリー)

この note では、画家 である私自身の体験を通して
「 観たこと / 感じたこと / 考えたこと 」を投稿していけたら、
と思っています。
どうぞよろしくお願いします。

タイシ 於 京都  6/24 , 2020


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